第十九話:三つ巴
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A.M.10:02 東部『フォレストエリア』 北部寄りの広場にて
開始からしばらく。
ぼくは相棒である飛竜のクロウと一緒に、東部のやや北側にある広場に来ていた。
特に意味はない。
クロウに乗って空を飛んでいたらいい感じの広場があったから降りただけだ。
公園はクロウが降りられるスペースがあるところが少なくていけない。
「ねぇクロウ、もしかしてここに彼女がいることがわかってたのかい?」
キュァァァオオ
クロウに問いかけると、嬉しそうに鳴いた。
これは肯定の合図だ。
「そうかい。ならば、戦おうか。ぼくらの敵は目の前にいる」
目の前には、『Natural online』代表の『星砕✝鏡』が日傘を指してたっている。
さすがに季節感を無視した真っ黒のゴスロリは暑いのか、それとも真っ白なフリルがついた黒い傘も衣装の一つなのかもしれない。
まあ、ぼくには関係のないことだ。
「……ワイバーンか。ククク。……なれば貴様は竜騎士、『飛竜の踊り手』ウイロウだな……?」
「そうだよ。ぼくの名前はそこまで有名なのかな」
「我を呼べるようにこの世界の言葉で付けた名が『星砕✝鏡』。しかし人々は我を『星砕き』と呼ぶ……。ククク」
「あ、そう。初めまして。それじゃあつまらない御託はここまでにして、本気の勝負といこうか」
「ククク……望むところ……!」
鏡はぼくに向かってフリルのついた傘を向けると、傘を閉じて虚空に消した。
やっぱり衣装だったのかもしれない。
チラ、とクロウに視線を送る。
キュアォォォオオオオオオオオ!
ひときわ大きく鳴くと、クロウは飛翔した。
ぼくは何の策もなく鏡に向かって足を出す。
「我が直接手を下すと思うてか……!」
鏡が人差し指と中指を突き出した右拳を地面に向ける。
「我は世界を壊すもの、魔王『星砕き』。汝ら、我のもとに集いて、そして我の為に死に、星を砕くための贄となれ……!」
指差された地面に複雑な形の魔法陣が出現。そこから無数の黒い光があふれる。
それらは段々と形を取っていき、人にも獣にも、有機物にも無機物にも見える形になった。
「我の呼びかけに応え、ここに顕現してくれたことを感謝する……! さあ行け、奈落の異形どもよ……!」
せっかく強そうなのを出したのに悪いね。
「クロウ!」
キュアォォォォオオオオ!
クロウの放つ白銀の光線が異形を焼いて吹き飛ばす。
「ククク……。その程度で勝ったつもりになるなよ小娘……!」
前に出していた右手を、後ろに振り抜く。
ぼくはこのタイミングでスキル絶対回避を発動。
システムに体を開け渡す。
ぼくの体は右に倒れこみ、そしてその勢いで側転する。
一瞬前までぼくがいたところを真っ黒の光が通りすぎる。
「まだまだであるぞ……!」
黒い光は鏡の手元に集まると、一瞬凝縮されたあと、その密度を保ちながら膨張し、クロウと同じくらいの大きさになった。
「クロウ! あれを打ち消せ!」
キュアォォォォォォオオオ!
「滅びるが良い……! 『奈落への片道切符』発動、今より貴様は無への道を進む……!」
クロウの白銀の咆哮と、鏡の放つ黒い無は、衝突した。
☆☆☆
モモを倒して後。
もちろんゾンビ状態で喚び出す。
「ねー、これ、どういうことかな? 敗者復活?」
説明が面倒くさいのはベリオンの時に分かっているので、メールを見るように促す。
「つまりボクはキミを手伝えばいいんだね?」
「そういうことだ」
「だが断る」
「うわっとすごいテンプレ」
「だってさー、どうしてボクが敵のために働かないといけないのさー? メリットが無いよ」
「確かに、メリットはない。でもまだ暴れられるぞ」
「暴れるんなら最初っから暴れてるよー。ボクは暴れに来たんじゃなくて優勝しに来たんだから」
「それじゃあ俺を手伝って優勝したらお前は優勝の立役者だぜ?」
「うん、いや。じゃね、あでおす」
そういってモモは手榴弾を足元に叩きつけ――――――っておい!
俺も死ぬ!
急速回避。
ダメだ。
モモは仲間にすることができない。まあ、当たり前か。
「でもまさか自爆すると――――」
俺の独り言は、遠く、おそらく東部から聞こえる爆音によってかき消された。
「なんだ!?」
俺を除く残りのプレイヤー、ウイロウと鏡が交戦しているのだ。
逃げるか倒すかどちらかに加勢するか。
もしくは。
☆☆☆
クロウの咆哮と鏡の黒い光が衝突しその勢いが園内すべてを震撼させた直後。
丁度ぼくと鏡の間に何かが突っ込んできた。
「もしくは、混ざるか!」
それはいきなり叫んだかと思うと空に爆炎を吐き出した。
馬鹿か、馬鹿なのか? 何をしに来たんだ、コイツは。
☆☆☆
どうせなら、最後だし乱入しようかと思ったのだ。
最後まで残ったのに不意打ちだなんてなんかあれだろ、地味だろ。
ほかにも、モモの毒で俺が生きていられる時間が一時間程度しかないということもある。
チャンスを待つためにじっくり潜伏、ということはできないのだ。
もちろん炎龍、機械竜、主様、幻影龍は憑依してある。
まあそれはさて置き。
鏡に炎龍の咆哮を放つ。
そして空を飛ぶ飛竜を
大嵐《竜巻を起こし敵を吹き飛ばす》
で撃ち落とす。
さらにウイロウの背後から全力の『雷神殺し』を放った。
「は?」
「え?」
両者とも何が起きたかわからない、って顔で吹き飛ばされた。
今日中に決着まで行きます。




