第十七話:AK47
大前提として、クロウは銃マニアです。
サバゲー大好きですので。
一夜明けて最終日、16日。
A.M.9:08 西部『ウォーターエリア』
昨日はよく眠れた。
昨日はよく眠れたけども。
今朝は筋肉痛が酷かった。
筋肉痛で朝五時に目が覚めたのだ。
どうも、『R-convert gear』の補助を受けて行動していると身体に過負荷がかかるみたいで、体が悲鳴を上げる、というわけらしかった。
でも、ギアを起動させると痛みが消える。
外したときは大変だろうな……。
まあそれはさて置き。
俺は今、西部『ウォーターエリア』にある滝の内側にいる。
いや、そこに行こうと移動中。
呑気に川沿いなんかを歩けば格好の攻撃の的であることは――――
ぴこーん
間延びした音がメールの受信を告げる。
送信 GCN
件名 脱落者についてお知らせ
本文 当イベントにおいて、脱落者が出たため通知します。
『G―FIAE online』代表、『静かなる狩人』ゲンキさまHP0のため脱落。
ウイロウさま撃破。
1位『G-FIRE online』黒チーム一名
1位『Only yours Online』黄チーム一名
1位『Natural online』白チーム一名
1位『Treasure online』赤チーム一名
脱落『Only Fameil Online』0名
なんだ、昨日の『G-FIRE』のプレイヤーじゃないか。
それならば三日目開始八分で脱落したのもありえることだ。
これで残りのプレイヤーは四人。
そのうちの最下位は俺。
はーい大ピンチー。
とどこか他人事のように思いながらも泳ぐのは忘れない。
そうこうしているうちに滝の裏側にたどり着いた。
裏側には俺みたいに水中からと、滝の裾から回り込んで入る道がある。
ここの滝の裏側は、ちょっとした空洞になっていて、温泉とかによくあるビーチベッドと、他にも色々ある。
いわゆる休憩スペースだな。
そして滝の内部の水面を割って浮上。
そこでアサルトライフルの一種であるAK47を構えている女の子のプレイヤーを発見した。
彼女は、俺のいる方ではなくもう一つ、回り込んでくる道からは完全に死角となるところにいるようだ。
俺は丁度ビーチベッドが邪魔をして向こうからは見えないはずだ。
これどうしよう。
向こう気づいてないし。
とりあえずほかに武器は無いか観察する。
まず手にはAK47。
髪型は前髪が眉のあたりで切りそろえられたおかっぱ、根元からだんだんと黒から灰色、毛先は完全に純白になった不思議な色。
体型は小柄。
パッと見中学一年生くらい?
瞳の色は灰色がかった白。
見た目はかなりの高水準……なのはゲームないアバターであるから普通。
いや、『G-FIRE online』は現実世界での自分の顔とアバターが同じになるんだったか。
ということは現実世界でも彼女はかなりの可愛さを誇るということになる。
まあ、今はそれはいい。
彼女の服装は、トレンチコート。多分見間違いだろうが、それ以外何も来ていないように見えるのは……えっと、気のせいだと思うことにしよう。
多分なんか着てるって。
コホン。
トレンチコートのせいでほかの装備はわからない。
もしかしたらコートの中に他の銃器ないし爆発物を隠し持っている可能性も否めない。というかその可能性の方が高い。
特に迷ってもどうしようもないので、水音を立てないようにゆっくりと上陸する。
憑依してある主様は防具展開に移行。
メーフィも声を出さずに喚び出して、炎龍と機械竜を憑依。
ついでなので幻影龍も憑依させる。
完全装備しておいてから、完全に水面から足を出し、右足を地面についた。
バシュ
間の抜けた音がして、耳元を何かが掠めていった。
「ボクが敵に気づいていないとでも思っていたの? 泳いで来たところから分かっていたさ」
彼女が何か筒を持ちながら立ち上がる。
そうか、AK47(アサルトライフル)の影に隠してたのか。
「うん? これかい? これは吹き矢だよ。ホラ」
そして彼女はおもむろに吹き矢をこっちに向けると――――
って危ない危ない!
慌てて避けたけど、あとちょっと反応が遅れたら今頃は吹き矢が眉間に突き刺さっていたところだった。
「ああ、違うね。まずは自己紹介か。ボクはモモ。『G-FIRE online』代表。二つ名は『夾竹桃』。よろしく」
とりあえずこっちも名乗っておく。
わざわざ隠す必要は無し!
というか夾竹桃か。
昔なんかの図鑑で見たことがあるな。
なんだっけ、花が桃のよう、葉が竹の用で非常に美しい植物だったっけ。
あと他にも何か――――
「うわったっ!」
モモはおもむろにアサルトライフルをこちらに向けると乱射してきた。
引き金を引き続ける限り弾が出続けるタイプのようだ。
乱射してくる銃弾を機械竜の風で吹き飛ばし、防ぐ。
「ねえあのさ、銃しか持ってないボクたちに魔法持ちでの勝負は卑怯だとは思わない?」
「そっちこそこんな高速の飛び道具は卑怯じゃないか!?」
「そうかな?」
モモは引き金を引き続けながらも、首をかしげる。
反動とかはシステムが勝手に相殺しているようだ。
「でもまあ、関係ないよね」
アサルトライフルAK47を、リヴォルヴァーカノンに持ち変える。
リヴォルヴァーカノンは、自立駆動が可能な機関砲だ。
だが。
「どこから出した?」
「え? アイテムストレージ」
なんだ、魔法的補助があるんじゃん。
これは銃器を前にした現実逃避ではないと思いたい。
いや、生身で銃に立ち向かうとか無理だから。
さて、第十八話こうご期待。




