第十五話:死皇帝(ネクロマンサー)vs冷凍悪魔(フリーズンデビル)
デンゲンの能力について補足をば。
彼のジョブはサバイバーです。
サバイバーは、フィールド森においては無類の強さを発揮します。
あと、海とかでも強いです。
まあ、それはともかく。
サバイバーのその基本能力は「保護色」
つまり相手に認識されなくなるわけです。
普通にクロウの視界には入ってましたが、いることが認識できないわけです。
でも、この能力は自分が認識している敵にしか通用しません。
だからベリオンはデンゲンに攻撃を当てることができた、と。
以上補足説明終わり。
というわけではい、第十五話です。
「それじゃあよォー、今日ォは本気を出させてもらうぜィ」
ベリオンは言う。
顔にはニヘラ、と軽薄そうな笑みを浮かべて。
しかし急にその笑みが消える
「もう様子見は終わりだ」
ベリオンは氷の槍を空気中に精製すると、俺に向かって放ってくる。
体を横に流し避けるが、ダメージを喰らってしまった。
「なんだ……? 完全に避けたはずだぞ」
「おいおい、目に見えるものが全てじゃねえんだぜェ?」
動けば微量だがHPが削られていく。
それに、動くと進行方向に向いている体の部分がチクっとする。
「そうか、見えない氷の針か!」
「その通り、大正解ですよォ。正解者には商品として死が送られまァす」
ベリオンは右手を振り上げると右に振り下ろした。
「出でよ『氷の悪魔兵』。我が名は魔王『冷凍悪魔』なるぞ!」
途端、急激に周囲の気温が下がる。
森の木々は凍りつき、氷霧が辺りに立ち込める。
そして地面を割るようにして青みを帯びた透明の異形が湧き出してくる。
「総員、かかれーッ!」
振り下ろしていた右腕を左肩くらいの高さまで跳ね上げる。
ただ、いくら数を出そうとも、所詮は氷だ。
炎龍を憑依。
「炎龍の咆哮!」
炎で溶ける。
咆哮が通り過ぎた跡に空洞ができる。
氷の兵士たちは咆哮に当たった部分だけでなく、近くを通り過ぎただけで溶けて消滅している。
「総員、怯むな、こちらのほうが数的有利、炎は避ければ何ら問題はない!」
ベリオンは右手を前に突き出す。
氷でできた兵士は散開、全方位から俺を狙ってジリジリと包囲網を形成、狭めてくる。
「総員、斬りつけろ! 敵は目の前だ!」
氷でできた兵隊たちは、手にした獲物を構え、俺に突撃してくる。
避ければ、いや、動けば氷の針によってダメージを喰らう。
しかし避けなければ切りつけられる。
俺はどうすればいい。
「炎龍の咆哮! 不死鳥の咆哮! 火炎放射! 炎弾!」
簡単だ。
隙間がないように全方位に高熱を発する炎を放てばいい。
炎竜の咆哮は上空に向けて。
急遽ゾンビ状態で顕現させた不死鳥はじめ火喰い鳥、低級悪魔、フェネクスに炎系の技を全方位に放ったのだ。
「出でよ『炎の悪魔達』! 我が名は『死皇帝』クロウなり! 我の召喚に応え、目の前の敵を焼き滅ぼせ!」
「パクった!」
無視しました。
「さあ、炎の皇帝と氷の魔王、どっちが強いか、勝負だ!」
持てるだけ全ての火属性、炎属性のゾンビを顕現。
それを氷の兵団にぶつける。
火炎放射と炎弾、不死鳥の咆哮を放つ炎のゾンビ達は氷の悪魔たちを消し飛ばした。
「やァっぱ氷じゃ火には勝てねェかァ!」
そのままベリオンに行進。
「でもよォ、こうすれば火は消えるんじゃねェ?」
氷の塊が炎のゾンビたちの真上に現れる。
それはゾンビたちの発する炎に触れ、一瞬で溶けた。
そして、その氷だったモノは蒸発せず、ゾンビたちの上に降り落ちた。
ゾンビたちは水に溶け、かき消されてしまった。
「でも、不死鳥は簡単には死なねーよ!」
不死スキルがあるゾンビもやられてしまったが、不死鳥だけは無傷。
ほかの炎属性モンスターとは炎の温度が違うのだ。
不死鳥の周囲に降る雨はすべて蒸発した。
「さて? そっちは兵隊がいなくなったみたいだぜ?」
「そっちにも一体しかいねえじゃねェかァ」
ベリオンは氷の兵隊を出すことはしない。
出しても俺が溶かすことはわかりきっているはずだ。
まあ、こっちには炎属性のゾンビは炎龍と不死鳥しか残ってないわけだが。
「あ~ァ、あれをやるしか勝ち目は無ェかなァ。あれやったら疲れるんだけどなァ。まあ、仕方ないわなァ」
誰に対しての言い訳かベリオンが言う。
すると突然、ベリオンの前方に大質量の水が生み出された。
「水!? お前、氷しか出せないはずじゃ……!」
「あのよォ、俺がどうやって何もない空中から氷を生み出してると思ってるんだァ? 水を顕現させてそれを凍らせてんだよ。まァ、これだけ大量に出すのは初めてだけどよォ」
その気になればこんなとこもできるんだぜェ! と、ベリオンが生み出した水の質量が更に増していく。
それが細長くなり、鞭のようにしなると不死鳥をはじき飛ばした。
一瞬で不死鳥は消滅してしまった。
「なぁおい、炎を封じられたらどうするんだァ? こっちには氷もあることを忘れるなよォ?」
そう言うベリオンの顔には披露の色が滲んでいる。
「おい、どうしたよ。かかってこいやァ!」
「……慣れないことはするんじゃねぇな。お前、もう動けないだろ」
無視された。
まあ、気にしないでおこう。
「炎龍の咆哮!」
俺が放った炎はベリオンの維持する水を余さず蒸発させた。
「水が炎に負けただと!?」
「水が炎に強いのはボケモンの世界だけだぜ?」
ほかにも理由あるけども。
炎竜固有スキル
龍の血《攻撃に龍属性付加》
を発動させたのだ。
基本はパッシブスキルだが、今は炎龍が防具展開なので一々MPを消費して発動させた。
防具展開だとパッシブスキルは一々発動しなければならない。
そして龍属性はどの属性よりも強い。
威力が倍加することはないが、属性を持つ攻撃に触れるとそれだけでその属性を無効化してしまうのだ。
もちろん、かき消える属性は敵の属性のみ。
閑話休題。
つまり、炎+龍属性の炎龍の咆哮は、ベリオンの生み出した水に触れた途端に水を消滅させて更にベリオンに突き刺さったことになる。
炎がダメージを減らすことなくベリオンに突き刺さったわけだ。
「さすがに死んだかな?」
「あァ、いや、死んではねェよ? ただ残りHPが42しかねェ」
それはまた、崖っぷちですね。
「おとなしく逃げさせてはくれないよォだしよォ」
当たり前だろ。
爆炎が晴れたとき、ベリオンは間近にいた。
一秒で殴りつけることができる距離にいる。
まあ、五mくらいか。
「というわけで、これ、オレ様の新技を見せてやるよォ! これを見るのはお前が初めてだぜェ!」
そういうと、ベリオンは目を瞑り、集中力を高めだした?
いきなりどうしたの?
「そうか、基本氷しか使わないからほかの能力を使おうとすると集中力がいるのか!?」
「うっせェ、黙ってろ、集中できねェだろォ?」
バカじゃないの、こいつ。
目の前に敵がいるのに目を瞑るとか。
止めを刺すべく右拳を握りこんで地面を強く踏み込んだ。
さて、次話も早いうちに。




