表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死体が無いなら作ればいいじゃない♪  作者: たしぎ はく
3rdシナリオ~第一章~
45/63

第十三話:『生還紳士(ジェントル・サバイバー)』


 十三話です。


 



 P.M.4:14


 立体迷宮に隠れているのにそうそうに飽きたので、迷宮を三十分ほどで突破、現在は東部『フォレストエリア』を徘徊中。


 森林の木々が発するマイナスイオン的なものが心地いいからだ。


 なんというかこう、空気が澄み渡っていて湿気が少なく、ひんやりしている。


 立体迷宮にいたら暑かったからぶっちゃけ涼みに来たのも理由としてあげてもいいだろう。


 とにかく今日は暑かった。


 午前中はそうでもなかったが、二時を過ぎた頃くらいから急に暑くなった。


 西部『ウォーターエリア』に行こうかとも迷ったが、昨日行ったのでまだ行っていない東部に来ることにした。


 そして。


 聖夜を凌ぐ変人と邂逅かいこうした。


「おや? 貴方も私の敵のようですね。やっぱり戦うんですよね?」


 アバターネーム『デンゲン』。残りHPゲージはMAX、つまり残り10000だ。


 彼が相当な手練なのか逃げ回っていたのかはわからない。


 でも初めて見る名前なのでおそらく後者だ。


 森で隠れてたんだろう。


「お前に降参する気がないならな」

「そうですか。では勝負――――」

「おし、かかってこい」

「――――の前にこれ、ヤマブドウです。食べますか? ちょっと早いんですけどここのは熟してまして。アレですかね、これも地球温暖化とかの影響ですかね」


 あまりに暢気なデンゲンに、踏み出していた右足を踏み外した。


 片手を地面について転倒を回避。


「あの、遠慮しときます」


 なんか勝手に口調が丁寧口調になった。


 なーんか調子が狂うなぁ。


「そうですか。美味しいのに」


 デンゲンはそう言ってヤマブドウを口に放り込んだ。


 食べられるのか、それ。


 俺の視線に気づいたのか、丁寧にも答えてくれる。


「ああ、私は山にあるものは土以外は全部食べてみて、お腹を壊さなかったものは憶えてるんですよ」


 うわ! 鉄の胃袋を持つ人がここに。


 この人が山で死なないかすごく心配だ。


「いや、トリカブトをヨモギと間違えて食べてしまった時は大変でした。死ぬかと思いましたよ」


 いや……あの、普通の人間ならば誤食したら数十秒で死ぬ可能性があるくらい毒性が強いんですけど……。


「いやー、山のふもとまで降りたときはもちょっとで気を失うところでしたね」


 しかも自力で下山!


 無敵すぎるだろなんなのこの人怖い。


 見た目超紳士なのに怖い。


 純白のタキシードに白いシルクハット、右目には片眼鏡モノクルまで装備。左手には白いステッキ。


 完全装備じゃないか。


 日本人……いや、普通どんな人が着てもエセ紳士もしくは、コスプレ程度にしか見えないコスチュームなのに、口調や仕草も相まって、まるで本物の紳士のように見える。


 見えるのだが。


 なんで行動がナチュラルにサバイバーなんですか!


「それではまあ、私から名乗りましょうか」


 慇懃いんぎんに一例。


「私はデンゲンと申します。『Only yours online』代表、二つ名は『生還紳士ジェントル・サバイバー』です。以後、お見知りおきを」

「ああ、ご丁寧にどうも」


 なんか調子が崩される。


 所々しどろもどろになりながら、自己紹介を終える。


 俺この人嫌い。


 苦手。


「それでは戦いの開始と行きましょうか」


 優雅にもステッキを振る。


 その途端、デンゲンの姿が掻き消える。


「はい!?」


 目で負えない速度の高速移動か?


 幻覚で俺には見えないようにしているのか?


 思考がぐるぐると脳内でスパイラルする。


 しかし答えは。


「…………ぐッ!」


 みぞおちあたりに衝撃。


 空が見えた。


 見えない衝撃によって吹き飛ばされた。


 まるでステッキのような細長い棒で殴られたみたいな衝撃だ。


「どうしたのですか? 私は貴方に歩いて近づいて、ステッキで殴り飛ばしたのですよ?」


 声は聞こえるが姿は見えない。


 目の前約三mのところから声は聞こえる。


 なのに、全く姿が見えない。


 どこにいるのか認識できない。


「まあ、どこにいるのかが認識できなくても仕方ありませんよね。それが私のジョブが『サバイバー』である理由ですから」


          ☆☆☆


 『Only yours online』では、例えば『Treasure online』であるというところのジョブが存在しない。


 その人間が、開始すぐに選べる100種類のスキルカテゴリからどのようなスキルカテゴリを選びどのような戦い方をするかによって自動的に決定するのだ。


 スキルカテゴリとは、同名スキルが一種類しか存在できないがゆえに、微妙に名前や効果が違うが基本効果は同じであるスキルのカテゴリーのことである。


 そして決まったジョブによって習得できるスキルが増えたり、装備できる武器が増えたりする。


 さらに。


 このジョブはゲーム中に絶対に一つしか存在しない。


 一人でも騎士という職業の人がいれば、もう騎士という職業には就けないのである。


 そもそも、このゲームのコンセプトは「世界に同じものは二つと無い」であり、ゲーム中にあるものは全て、アバターはもちろん、武器、防具、アイテム、出現するモンスター、職、スキルなど、ありとあらゆるものが一つしかなく、破損したら二度と復活できないのだ。


 ただし、例外も存在する。モンスターでいえば微妙に体の大きさや模様、色が違ったりといった個体差があったり、回復アイテムでいえば回復量やアイテム名が微妙に違ったりという方法でゲームのルール――――世界に二つと同じものはない――――を逃れているものがある。


 あと、皆が使える基本スキルとして、『転移』があるが、これは街に移動するときにしか使えない。


 ちなみに、この転移も、プレイヤーによって名前が違う。


 まさにこのゲームは、“Only yours(あなただけのもの)”なのである。






 次で決着はつけさせます。


 ではなるべく早い目にまた会いましょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ