第十二話:洞窟脱出
はい、現実逃避してトリップしてました。
きっと暑さで脳が蕩けてたに違いありません。
そうじゃなけりゃ、『生ピーマンの詩(うた)』や『カキゴオリ』なんていうお話を投稿したりしません。
でも、書いてて楽しかったです。
また今度なんか書きます。
よろしければ是非に。
「誰か先客がいるかもしれないな」
聖夜の言った言葉が脳内でリフレインする。
ここにもし先客がいるならば、ここはもう魔物の腹の中だ。
うかつに動くのは危険。
幻影龍を憑依。
上がってきた観音扉を背にして正面を向く。というか反対側は壁だ。
幻影龍固有スキル
幻影《敵に幻影を見せ、撹乱する》
現実化《自分が生み出した幻影を実体化させる》
を発動して、砂嵐を作り出す。
それは徐々に奥へと行き、そして行き止まりにブチ当たり砂嵐は掻き消える。
その跡も曲がり角があるたびにこの操作を繰り返し、十回ほど曲がり角を曲がった時だ。
「なあ、やっぱり先客はいないんじゃないか?」
「うーん、どうなんだろう。いないのかもしれないな。まるで気配が無い」
「それなら先へ進む速度をもっと上げないか」
「そうしたいのは山々だけどな、何かがある気がするんだ」
「それは気のせいだろう。では行くぞ」
ちょっと待て、という暇もなく、聖夜は歩いて行ってしまった。
聖夜の持つ青白い光だけがじわじわと遠ざかっていく。
せっかく幻影龍を憑依しているので、
幻影《敵に幻影を見せ、撹乱する》
を発動。
なにか光るものを、と念じる。
現れたのは俺の周囲を渦巻くように舞う複数の光の珠。
時間を忘れて見入ることができそうな美しい光。
「おーい、何をしている。おいていくぞ」
空気を読まない間延びした聖夜の声が腹立たしかったが、今はまあ、放置。
今度後ろから攻撃しよう。あ、ミスった! って言いながら。
少し小走りになりながらかなり開いてしまった聖夜との距離を詰めていく。
と、走り出した俺の耳が。
ドガァ……ン……!
という明らかな爆発音を捉えた。
☆☆☆
途端に、魔力を通じて感じていた聖夜の気配が消える。
……またあいつ、勝手に死にやがった。
もう、なんかいいや。
疲れた……。
あいつ呼び出すのは身代わりにするときだけにしよう。
と、気持ちの整理を付け。
大きく深呼吸。
「……ッ!? 罠か!?」
言ってみたかっただけなので、誰も反応しないで。てか心の中だから恥ずかしくないもんね。
砂嵐を再度生み出して前進。
二回角を曲がると、前方に光が見えた。
出口に進むにつれて地雷など爆発物の頻度がだんだんと増えていき、洞窟の出口の五mほど前で、はたと、爆発物がなくなった。
メーフィを呼び出して機械竜と炎龍を憑依。
一旦幻影龍は憑依を解除する。
別に手札を見せる必要は無し。
両翼を広げ、最大最速で出口を飛び出した。
もちろん罠がないことは確認済みだ。
☆☆☆
洞窟から文字通り飛んで出て、頭を保護しながら外に出る。
案の定、出口から出た俺の軌跡をなぞるように黒い雨が降り注ぐ。
「銃弾か!?」
銃弾ということは、狙撃手は『G-FIAR online』のプレイヤーだろう。
多分ゲンキかモモのどちらか。
弾の方向から考えるに、今まで俺がいた洞窟のさらに上、崖の頂上から撃っているようだ。
機械竜のスキル
風刃《風で敵を切り刻む》
を体の前面に隙間がないように展開する。
これで銃弾は防げる……ハズ。
両翼を広げ地面を強く蹴って飛ぶ。
軽々と崖を超え、上に着地。
ここから先は一般人は入れないエリアだ。
というか、明らかに飛行スキルがなさそうな『G-FIRE online』のプレイヤーはどうやってここに登ったのだろう。
一番上に飛んでいくが、もうそこには狙撃手はいなかった。
……引き際を心得てる。
狙撃手は近くに来られると攻撃手段がなくなるという人が多い。
まあ、近寄られても大丈夫なように近接武器を持ち運ぶような人間もいるし、ライフルで接近戦を切り抜けるような猛者も見たことがある。
まあそんなのは結構少数なわけで。
近くまで寄られたら逃げるのが正解といえる。
そして俺は、その逃げる敵を追いかけて接近戦に持ち込んで撃破するのが得意という、ちょっと困った子なわけでして。
☆☆☆
追撃を開始。
といってもまあ、今は空を飛べるので上から見てるだけだけど。
上から見たら一発でどこにいるのかがわかるね。
流石に上空から探されることまで考慮していなかったみたいで、狙撃手は反って立つ崖の、さっきまで俺が居た方からは完全に見えないところに潜伏していた。
向こうはまだこちらに気づいていない。
頭からダイブして目線を同じ高さに。
両者の距離は五mほど。
向こうも慌ててライフルを構えてくるものの、こっちのほうが早い。
「炎龍の咆哮!」
なんてったって、照準を合わせる必要がないのだから。
咆哮を放った勢いを殺さず、空中にいることも利用して頭から後ろ周り。
あとちょっとで地面に頭頂部から激突するところだった。
そして飛行。
爆炎が消える前に即座に空中へ逃げる。
しかし爆炎を割って鉛の弾が超高速で飛来する。
よけられない。
でも。
機械竜の風で防御膜は張ってある。
風の壁に弾き返された弾丸はそのまま狙撃手に直撃。
もう一度炎龍の咆哮をぶち込んだ!
しばらく警戒を緩めず、爆炎を機械竜の風で吹き飛ばす。
爆炎が晴れたとき、そのプレイヤーはいなくなっていた。
ちらっと見たところによると、プレイヤーネームは『ゲンキ』。二つ名は不明。
そして残りHPは500程度だったように見えた。
取り逃がすとは惜しいことをした。
例によって例のごとく次話投稿は早めに頑張ります。
少しお待ちください。




