第十一話:北部『アスレチックエリア』
第十一話ですね。
P.M.13:15 二日目
昼ごはんを食べたあと俺たちは 北部『アスレチックエリア』に来ていた。
……カレー? 諦めたよ? おとなしくハンバーガーにしたよ。普通に美味しかったです。
クリア方法はエネミー:海竜の討伐。楽チン楽チン。
ちなみに、聖夜は一旦消えた。
精神しか存在しない状態だから、何かを食べてもゲーム内と同じ、満腹中枢が刺激されるだけで実際の肉体にはなんの栄養も行かないのだ。
そして再度召喚!
「まだ食べ終わってないんだが」
無視しました。
とまあ、こんな流れがあって、一番潜伏と遊撃に都合のいい北部エリアに来たわけだ。
さて。
北部エリアの概要を説明しようか。
ここ北部『アスレチックエリア』は、中津自然公園の北部を占めるエリアだ。
最北部は5mはある柵に囲まれており、登って超えることは不可能。
ちなみに、ここから少しでも外に出たら『R-convert gear』のコンバート状態(ゲームにおけるログイン状態)がとけて、更にエキシビジョンイベント失格になる。
西部と隣接しているのはアスレチックエリア。
大きなジャングルジムが主体となっており、一番高いところで七mくらいある。
もちろん柵を飛び越えて降りることは不可能。
そのジャングルジムには、全部滑り落ちるのに100mはあるような大きな滑り台や、吊り橋、ブランコetc、etc……がたくさんついている。
ここでかくれんぼをしたら多分三時間ぐらい隠れ続けられる程の大型の遊具だ。
さて次、中央と右にまたがる立体迷路。
スタートからゴールまでの最短距離で三キロはあるのだからその大きさが分かってもらえるだろうか。
しかも迷路だから、迷ったら出られない。
開園(私鉄の始発)と同時に入って閉園(私鉄の終電の三十分前)までいても出られなかった人もいるくらいだしそもそも、このゴールをクリアした人が今まで約五万人挑戦して、二百人にも満たない。
それなのに、ここは園内で最高人気のエリアだ。
少し話がずれてしまったが、この立体迷路は、三階層まである。
入り口はさっき話した西部よりのジャングルジムにあって、スタートは二階層から。
そこで左に曲がると崖があり、真っ暗な洞窟を手探りで進む迷路、右に曲がると透明な硬質ガラスだけで床も壁も出来たエリアに進む。
ゴールまでに丸太の橋や登り棒、滑り台に入り込んだらグルグル回る羽目になる回廊、ほかにも忍者のように壁をひっくり返さないと進めない通路や、わずか50cmしか直径が無い通路を通らなければならないエリアがあって、他にも色々色々のトラップ仕掛け謎解きを突破してやっとゴールまでたどり着く。
潜伏にもってこい過ぎて笑える。
というわけで中に。
昨日入ったときはなにげにゴールまで行ってしまった。
ゴールである出口から中に入ることはできないので、うっかり外に出たらまた入口から入らなければならない。
これは体験談なので、もう二度と同じ轍は踏まない。
うん、もうちょっと考えて行動しよ。
「ゴールはこっちだ」
俺が指さすのは右側、グラスエリア。
「そうか、ならこっちに行くのだろう」
聖夜が指さすのは左側、洞窟エリア。
「その通り。よくわかってるじゃないか」
行き止まりの方が挟み撃ちされるリスクが無い分、有利だ。
また、洞窟エリアならば空からの襲撃も無い。
土の中からの襲撃は考えない。
昨日見てみたところ、そういうスキルの持ち主はいなかったようだし、そもそもこの洞窟は本物の土ではない。
材質は多分プラスチック。硬質ゴムかもしれない。当たり前だ。崩れたら大変なことになる。
「それじゃあ、中に入ろう」
洞窟の内部へ。
洞窟の内部は完全に真っ暗。
あるのは入口から入る明かりのみ。
その弱々しい光も、曲がり角を右に曲がると消えてなくなる。
これは目がなれるまで待つ必要が――――
「お前は光を出そうという考えがないのか」
右隣に青白い光が灯る。
聖夜だ。
聖夜が右手に青白く光る炎を持っている。
その光は聖夜を中心に半径五mほどを照らしている。
「これだけあれば十分だ。流石我が従者、主人の言わんとすることを察し先を行くとは」
「つまりあれだろ、認めたくないんだろ」
無視しました。
どうやら俺の耳は、自分に都合のいいこと以外は聞き流すように作られているらしい。
☆☆☆
しばらく洞窟の中を進み、途中洞窟の天井にあった穴から三階層へ登る。
その穴の淵だけぼんやりと黄色に光っている。いや気づかんて。
そこの壁には注意しなければよく見えないほどの凹凸があり、ロッククライミングの要領で登ることができそうだ。
俺はサバゲーでは敵の弾を避けて近くまで接近して倒すタイプだ。
武器はハンドガンだぜ。
従って高いところに登らない。
なので、慣れないアクションに結構四苦八苦しながら壁を登る。
登りきったあと、下にいる聖夜に声をかける。
「おーい聖夜、登ってこいよー!」
「なあ、クロウ、自分たちは空を飛べるということを失念してはいないか?」
無視しました。
いやー、完全に忘れてたね。
とりあえず上に登ったあと、空きっぱなしだった上に開く観音扉を占める。
開けっ放しにしてたら上から落ちるからな。
危な――――――――
「そういえば、なんでここが空いてたんだ?」
上から開けることはできないような作りだ。
誰かが下から開けなければならない。
それならば、ここは一体誰が開けた?
つまり。
ここには誰かがまだ潜伏している可能性が高いということだ。
「誰か先客がいるかもしれないな」
聖夜の声がヤケに洞窟の壁に反響して聞こえた。
ではまた次回会いましょう。




