第九話:土竜(もぐら)
早速九話投稿です。
聖夜が死んだ。
まだ、他のプレイヤー倒してないのに。
その事実は意外と重く俺にのしかかり――――
――――そして。
「聖夜死ね!」
聖夜のプレイヤーゾンビ。
そいつをゾンビ状態で顕現。
園内を徘徊するエネミーにぶつけようと思ったのだ。
腹いせだよ、悪いか。
というか、もとから聖夜ゾンビはこのためだけに作ったといっても過言ではない。
ついでに、エネミー:土竜も倒してくれ。
送信 GCN
件名 ミッション『もしかしてHP回復したい?』
本文 クリア条件その壱:園内にいるエネミー:土竜×12の連続撃破
その弐:自分が手を下してはならない
その参:スキルだけで敵を倒す
その四:自分はエネミーの攻撃が当たってはいけない
クリア報酬:HP回復アイテム『HPハイポーション』《回復量3000》
自分はエネミーの攻撃が当たってはいけない。
防御しても不可。
攻撃が当たるだけでミッションが失敗してしまうのだ。
何体倒していようと、最初からやり直しになってしまう。
普通の敵モンスターなら簡単なことだ。
しかしエネミー:土竜の厄介なことは、地震を起こして攻撃してくること。
かといって中に逃げれば『土砂欠泉』《土砂を間欠泉のように吹き上げて攻撃する》の格好の餌食だ。
そのほかの、条件その弐その参はさしたる問題じゃない。
俺は大量スキル保持者だ。
というわけで。
死霊術師になってから可能になったプレイヤーゾンビの顕現をやってみたわけだが。
「……なにやってんの、お前」
「いや、自分もよくわからない。気づいたら意識がここに」
自分が喚び出したのは聖夜ゾンビだ。断じて聖夜ではない。
「なんでお前ここにいんの? 嫌がらせ?」
「自分がいたら嫌がらせなのか?」
「それ以外の何者でもないだろ」
「一つ推測してみよう――――お? 説明のメールが来たみたいだ」
「ちょうどいい、ちょっと読んでみて」
『今、あなたは混乱しているかもしれない―――中略―――君は現在、精神だけでそこにログインしている状態だ。倒されてしまったプレイヤーは、同チームの残りプレイヤーが喚び出すことができる。しかし、君の相棒のクロウさまのような、喚び出すためのスキルを持っていない人間は、専用アイテムが必要になるわけだが』
つまりあれか。
「俺みたいなのの救済措置のために、相方を復活させることができるというわけか」
「まだ続きがあるみたいだ」
『――しかし、君は別に復活したわけではないから、赤チームは依然五位、残り人数一名のままだ。そして君は精神だけが動いているといったが、安心してくれたまえ。肉体は当方が当てがった自室に安置してある。君がその状態でHP1000相当のダメージを負えば目を覚ますことが可能だ。まあ、頑張ってくれ』
「つまりあれか。お前は俺の奴隷ってことか」
「あまり調子に乗ってたらお前も巻き込んで自爆するぞ」
「すいませんでした」
☆☆☆
という事が有り、現在は聖夜と二人でエネミー:土竜狩りの最中だ。
今の状態だと、聖夜はスキル扱いになるみたいで、なかなかに役に立つ。
俺の持つどのゾンビよりも強いことは折り紙つきだからな。
「おい、これで十一体目だぞ」
「うむ、ご苦労」
「『自ば「すいませんでした」
どうしよう、なんか聖夜に手綱を握られてる。
後ろから炎龍の咆哮ブチ込んだろか……!
「あれ土竜じゃないか?」
どうやら、俺が暗い殺意に身を委ねようとしている時に聖夜が十二体目となる土竜を発見したようだ。
「危なかった。もう少しで暗黒面に落ちる所だった……!」
「すまない。相手にはしないことにする」
気づいたら聖夜の俺を見る目が冷たい。
本当に炎龍(省略)
あっと言う間に聖夜は土竜を倒して帰ってきた。
やっぱ強いな……。声に出したら調子に乗るから言わんけど。
ともあれ。
「『HPハイポーション』ゲット!」
HP2190/10000→5190/10000に。
うん、ちょっと余裕が出たような。
☆☆☆
―side『Only yours Online』ウイロウ&クロウ(飛龍)―
A.M.11:32
昨日『Treasure online』代表のクロウから飛龍のクロウが受けた傷は治った。
いやー、飛龍てのはすごいね。
勝手に傷が治るんだから。
ぼくにもそんな能力が欲しいよ。
それにしてもまあ。
ちょこまかと。
この二人、うっとおしいなぁ。
『Only Fameil Online』代表、リュウとシュガー。
この二人がさっきから息の合った連携攻撃を繰り出してくる。
リュウは二刀流。
見る感じだと、刀剣が二本あればなんでもいいみたいだ。
片やシュガーはサバイバルナイフ。
ちょこまかと素早い動きでぼくに攻撃を繰り出しては遠くへ離れるヒットアンドアウェイを繰り返している。
それを追おうとしたらリュウの剣が襲いかかってきて、応対していると体制を立て直したシュガーのナイフが死角から襲い掛かってくる。
「……まあ、当たらないけどね!」
スキル絶対回避を発動。
『Magic and Sword online』のユーザーだった時にバグで手に入れたスキル???を、正規のスキルに改造してもらったものだ。
今はぼくしか使えないぼくだけのユニークスキル。
まあ、絶対に攻撃が当たらない代わりに攻撃することができないわけだけど。
キュァァァォォォォォォオオオオオ!
そのために飛龍がいるわけで。
相棒の放つ白銀のブレスが、リュウとシュガーを巻き込んだ。
よろしければ、私が投稿している『逃げろ!』という作品もどうぞ。
『Magic and Sword online』を舞台に、ウイロウが主人公のお話です。
全五話と短いので、少しお暇があるならば是非。
あ、もう完結してます。




