第三話:接敵
連続予約投稿ができなくなっている、だと?
なんか連続で予約できなくなったのでもう投稿します。
P.M.1:37
ベリオンを撃退してから移動を開始。
あれだけ暴れたらもうここに隠れてる意味がない。
アクティブに動き回ることも考えたが、一日目からそれはちょっときつい。
敵の撃破を考えるのは明日からでいい。
今日は地形の把握及び敵を誘導、撃破するのに便利な場所を探そう。
というわけで、やってきたのは北部『アスレチックエリア』と西部『ウォーターエリア』の境界線、関西方面に伸びる私鉄の鉄橋。
そこの橋桁なら隠れられると思ったのだ、が。
ッバァン!
空気を切り裂く音!
「うわッ!?」
足元に着弾。
銃で撃たれた。
警告射撃だろうか。
これ以上近づくな、と。
音の方向はちょうど俺が行こうとしていた鉄橋から。
先客がいたのか。
よし。
「メーフィ」
『はいはいー! メーフィだよ!』
「力を貸してくれ」
『おっけおっけ。何すればいい?』
「よし、そこにプレイヤーがいると思うから、バレないように近づいて脅かしてきてくれ」
『おお! 了解!』
メーフィの姿が掻き消える。
そして、しばらく待って。
「きゃぁぁあああああああ!!!???」
声からすると、おそらく女。それもかなり若い。
ドスン!
橋桁から落下したそのプレイヤーに接近。
手に持つ銃を蹴り飛ばす。
「なあ、おい。降参する気はないか?」
一応、聞いてみる。
降参した敵は味方になるので、割と本気で聞いてみた。
「ん? ボク? ………はいこれ」
何かを握った手を出してきたので、反射的に受け取る。
「……スタングレネード」
そのプレイヤーには逃げられた。
……くそう、ビリビリする。
HPも100減っている。
まんまとしてやられた。
☆☆☆
P.M.2:12
鉄橋の橋桁に登り、とりあえずはここに落ち着くことにした。
下から見えないところを探して座っているからバレる心配はない。
全方位攻撃とかされたら攻撃のダメージを喰らうだろうが、まあ、大丈夫じゃない?
主様の 地震 も範囲限定されてるみたいだし。
☆☆☆
さて同時刻。聖夜はというと、東部『フォレストエリア』にいた。
森の中、というか木の上を飛んでいる。
オーバーテクノロジーここに極まれり、である。
しかしこうしておけば歩いてやってくる敵にはまず見つからないし、木が邪魔をして他のエリアからも聖夜を視認することはできない。
と、聖夜は考えていたのだが、不意に声をかけられた。
「そこの貴方」
一瞬で警戒モードに移行、声のした方である木のてっぺんにいつでも攻撃できるよう、射程距離のある槍を向ける。
「あぁ、そう身構えないでください。私はまだ今日のうちは誰とも戦うつもりはありませんので」
しかし、聖夜は警戒を緩めない。当たり前である。
声が常に違う方向から聞こえるのだから。
常に移動しているにしても、全く木が揺れる気配がない。
「せめて、姿を現してからそういうことを言ってみたらどうだ?」
「ああ、これは失敬」
聖夜が槍を向けていた方と反対側から白のタキシードに同じくシルクハット、左目には片眼鏡を付けた男性プレイヤーが立ち上がった。
木の上に。
木の先端に立っている。
「申し遅れました。私はデンゲンと申します。以後お見知りおきを」
器用にも不安定な木のてっぺんでお辞儀。
クロウあたりがやったら気障ったらしい、または格好つけなどと揶揄されそうなそのお辞儀は不思議とデンゲンと名乗った男には似合っていた。
ナチュラルに紳士という、珍しすぎる人材だ。
しかし。
「ああ、自分は聖夜だ」
「それで、今日のうちは不戦条約を結びたいのですが、どうでしょう」
「いいだろう」
「では、お近づきの印に――――――」
懐から、人間の頭ほどもありそうな“何か”を取り出すと、言う。
「―――蜂の子でも、食べますか?」
「遠慮しておこう」
「そうですか。では、さっき見つけたコガネムシの幼虫など、いかがでしょう?」
「全力で遠慮しておこう」
「それは残念です」
言うと、デンゲンは何のためらいもなく蜂の子を口に放り込んだ。
デンゲン。
彼は『Only yours Online』のユーザーである。
この『Only yours Online』は、ゲーム内に出てくるアバターはもちろん、アイテム、装備道具、モンスター、職業、ありとあらゆるものが一つしかないVRRPGゲームである。
そして一つしかないということは、もしゲーム内でゲームオーバーになればアバター喪失、モンスターを倒せばそのモンスターは二度と出現しない、アイテムはすべて消耗品で消耗しきればなくなり、二度とお目にかかれない。
まあ、回復アイテムなどの複数必要なものは名や効果が微妙に変化したものが大量に流通しているのだが。
もちろん、武器や防具も使っていれば消耗していき最後には消滅する。二度と同じ武器を使うことはできないのだ。
職業も誰かが先に就いていた場合同じ職業になることはできない(しかし前にその職業についていた人がその職業じゃなくなった場合就くことは可能)。
難易度過去最高、しかしコアなプレイヤーにはかなりの人気があり、そこでトッププレイヤーであるということはかなりの廃人プレイヤーであると同時にすべてのVRゲームを総合しても一、二を争う実力者であるとも言える。
そして。
彼、デンゲンの職業は『サバイバー』。
服装、態度、口調、全てが完璧な紳士であるのにも関わらず、彼はナチュラルにサバイバーでもあった。
ナイフだけを持って雪山に入り一冬越したことは世界中の登山者誰に聞いても知っていることであるが、ここでは割愛する。
そんな彼、デンゲンについた二つ名は『生還紳士』。
得意とする戦法は森林及び水中、水辺での尋常ならざる身体能力をフルに発揮した肉弾戦。
まあ、基本は、であるが。
聖夜でもこの森林エリアで戦っていたら勝ち目はなかっただろう。
それくらい、デンゲンは実力者であることを聖夜はまだ知らない。
☆☆☆
P.M.2:49
橋桁の上で隠れていると、一人のプレイヤーが通りかかった。
豪奢な金髪をサイドアップポニーにし、瞳は黒と緋のオッドアイ、身を包むのはゴスロリファッション。
見るからに中二病みたいなやつが通りかかった。
名前の色はさっき追い払ったベリオンと同じ、白。
そういえば、さっき俺にスタングレネードかましてくれやがったやつの名前を見るのを忘れていたな、とか思いつつ、真下に来た女性プレイヤー『星砕✝鏡』に、炎龍の咆哮を放った。
大質量の炎の柱は凄い勢いでその金髪のつむじに迫り――――――
現在四話50%です。




