第二話:ゲーム開始
しばらくあきました。
そして柔禅氏は一通り俺たちを見回すと、聞いた。
「それでは、何か質問がある者はいないか?」
女性プレイヤーが手を上げる。
『Only Fameil Online』代表、アバターネームはシュガー。
白っぽいワンピースに麦わら帽子、綺麗な栗色の髪をした女性プレイヤーだ。
「TVカメラが入るっていってたけど、どうなったのかしら?」
そういえば、TVの中継が入るって言ってたな。
どうなったのか。
「ああ、カメラは至る所に設置されている。そこの木に見えるのもカメラだし、あそこの蝉もカメラだ。園内視覚はない。それに、カメラマンを入れると危ないからな」
危ない?
何が?
「いや、こちらの話だ」
あれか? 園内の機密とかが研究されるとかそんなんか?
「では、最後にだが、預かっている君たちの武器を返そう」
柔禅氏がなにかタブレットのようなものを取り出し、操作する。
と、俺のゾンビたちも帰ってきた。
どうやら、ゾンビたちも武器扱いだったようで。
「それでは、あと五分でゲームを開始する。各自好きに散らばると良い」
言葉を聞いて、全員が散った。
俺も西部『ウォーターエリア』に向かって走る。
……聖夜? 一人でよろしくやってるんじゃない?
☆☆☆
ナイロック湖の主、憑依。
水中に飛び込む。
『R-convert gear』は完全防水。
水の中に入っても壊れない。
というか、なんで水中で呼吸できるのかがわからない。
説明役に聖夜を連れてくればよかったな、と今更ながらに思う。
空とか飛んでるやつはどういう仕組みなんだ?
俺が思考の海に沈んでいると、突然右肩に激痛が。
「ギャヤァキギャキガァア!?」
見れば、右肩がえぐれている。
なんだ?
なにが起きた?
HPも1000減っている。
敵か?
周囲に注意を向ける。
すると、今度は左手側からなにかが突っ込んできた。
エネミー:海龍
敵の頭上にそう表示されている。
「モンスターもいるのか!?」
しかし、『Treasure online』では見たことがない敵だ。
ちょうど恐竜のイクチオサウルスによく似ている。
ネッシーみたいなやつだ。
さっきは油断したけど……
「…………カッ!」
久しぶり、主様固有スキルである 地震 を発動。
エネミー:海龍を倒した。
お? なにかアイテムを落としている。
海龍の宝珠《一瞬だけ攻撃を受け付けない無敵状態になれる》
やったね! 便利アイテムゲット!
☆☆☆
彼は、『Natural online』のユーザーである。
アバターネームは『ベリオン』。
この『Natural online』は、自分の想像力を具現化させて敵を倒す超能力アクションVRゲームである。
つまり、想像力の豊かさと、このゲームでの強さは比例するのである。
彼――――ベリオンはゲーム開始直後、同じく代表である『星砕✝鏡』を放置して西部『ウォーターエリア』に来ていた。
そして、水面を凍らせて氷の城を作った。
彼の得意能力はあらゆるモノを凍らせること。なぜか、それが一番想像しやすいのだ。
ほかの能力も使えないわけではないが、氷だけが極端に突き出ている。
その能力――――『Natural online』内の区別の仕方で言うと『得意能力:凍結』――――と、彼の言行から、ついた二つ名は『冷凍悪魔』。誰が付けたのか、趣味の悪い二つ名である。
そして、氷の玉座を作り腰を下ろそうとして―――――
氷の玉座を、炎の柱が貫いた。
☆☆☆
「炎龍の咆哮!」
水中で襲い来るエネミーを次々と屠っていたら、いきなり水が凍りついた。
全く、オーバーテクノロジーもいいとこだぜ。
なに? 物理干渉可能なの?
とか思いつつ、身動きが取れなかったので、炎龍を自分に憑依させて炎龍の咆哮を放った。
真上に向けて。誰かを巻き込んだ気もしないでもないが、こっちだってHPが250減ったんだ。
おあいこだろ。
自分のあけた穴から上へ飛び出る。
凍りついた水面から飛び出すと、真っ黒の髪をオールバックにした男性プレイヤーがいた。
プレイヤーネームは『ベリオン』。色は白だ。
「アァ? お前か? 俺の氷を溶かしてついでに俺まで黒焦げにしてくれた馬鹿はよォ?」
不良だ!
不良がいる!
「というか、あたってねーだろ、咆哮。避けてたろ?」
「ああ、そうだけど、とにかく死んどけや! 記念すべき一人目だぜ?」
いうなり、氷の槍が飛んでくる。
氷系の――――魔道士?
いや、『Natural online』だと、超能力者か。
氷の槍は全て霊魂状態のゾンビの材質を変化、炎にしてガード。
スキル名:炎の壁。(考案俺)
「んだァ? 炎ばっか使いやがってよォ!」
その炎の壁が凍りついた!
は?
何が起きたのか俺には理解できない。
「ふう、炎も凍るじゃねェか!」
オラオラオラオラ!
と叫びながら次々と氷の槍を放ってくるベリオン。
そっちが質量攻撃してくるならこっちだって!
「炎龍の咆哮ッ!!!」
ヒュ……ドバアァァァァアアア!
俺の放った炎の暴力は凍りついた水ごとベリオンを吹き飛ばした。
ベリオンの残りHPは7800。結構減ったな。
そして追撃しようと吹き飛んだベリオンを目で追うも、もうどこにもいなかった。
不利を悟って逃げたか。
今日から多分三話ほど連続で毎日八時に予約投稿しときます。




