最終決戦。喰らえ…ッ!
ご注意ですが、作中に出てくる五大元素の組み合わせは全部作者の偏見と適当で出来ているつくりものです。
これは変じゃない?
とか思ってもそういうものだということでひとつお願いします。
そこだけ切り取ったかのように黒い、ただひたすらに黒い塔。
その漆黒の塔の頂上にいる、『敵』と対峙。
幻影龍を倒してから三日。
俺は全百一種類の伝説級宝のうちNo.1をのぞき、全ての宝を手に入れた。
今日は、ゆーきはいない。
なんでも、某国との会談が入ってしまったのだという。
すごく、残念だ。
……? アレ? なんでゆーきがいないと寂しく感じるんだろうか。
なんだかんだでゆーきのこと気に入ってたんだろうか。
まあ今はいい。
一般の学校の運動場と同じくらいの大きさの影すら映らない真っ黒な壁に四方を囲まれる頂上『玉座の間』。
床は紫と黒が入り混じった不思議な文様浮かぶ黒曜石の床。
空気が重く感じるのはきっと気のせいではないだろう。
入口がある壁と反対側の壁の近くはほかとは違う段差があり、この部屋で一番高い部分には豪奢な玉座がある。
そこに座っている『敵』を倒せば、伝説級宝NO.1が手に入る。
「よく来たな、クロウ。自分を倒すことができれば、この伝説級宝No.1はお前のものだ」
「言われなくとも、お前を倒す!」
『敵』は大仰な芝居がかった仕草で立ち上がると、獲物を構えた。
この禍々しい空間では異質な機械的なフォルムの、白銀の美しい突撃槍。
その身を包むのは同じく白銀の美しい装飾がなされた全身鎧。
そいつは、槍を腰だめに構えると、消えた。
転瞬。
槍は俺を突き刺した。
☆☆☆
クロウ ♂ 16 死霊術師
HP 16+8900
MP 25+9999
At 1+ 54
De 6+7890
Sp 4+8120
装備スキル メイスLv99 ワンドLv1 魔道書Lv99 魔装Lv99
職業スキル 繰魂Lv99 使役Lv99 闇魔法Lv99 属性操作Lv99
特殊スキル 飛翔《空をある程度自由に飛ぶことができる》
魔力ブースト《一分間魔力∞。しかし、一バトルに一度しか使えない》
深淵の魔法《もともと闇である魔法の魔のみを扱う禁忌の魔法。危険すぎるため封印された 失われし魔法。今この魔法の名を知る人間はいないが、もし誤って使えば世界が滅ぶ》
補助スキル HP+計8900
MP+計5000
At+計24
De+計3890
Sp+計3120
称号 魚人《ナイロック湖の主を自分に憑依させる》水属性+6
龍人《炎竜ブリューナクを自分に憑依させる》火属性+6
機人《渓谷の守護竜を自分に憑依させる》風属性+6
幻人《幻影龍を自分に憑依させる》土属性+6
龍神《四龍をすべて憑依させる》エーテル属性+3
悪魔《メフィストフェレスと契約》エーテル属性付与
魔人《属性操作スキルをカンスト》全属性+1
PK《PKをした》
殺人鬼《十人以上PKした》
死刑囚《百人以上PKした》
死神《二百人以上PKした》
魔神《MP最大》特殊スキル+魔力ブースト
☆☆☆
槍を振り抜く『敵』の背後にまわり、機械化させ左翼の推進翼でブーストした左腕で殴りつける。
『敵』が槍で突き刺したのは、俺が幻影龍固有スキル 幻影 で生み出した幻だったのだ!
『敵』の脇腹を殴るインパクトの瞬間、手首をほんの少しだけひねり、そのままの勢いで左腕を振り抜き、体を回転させる。
左腕を直撃のコースから少しずらすことで、威力は落ちる。せいぜいが怯むくらいか。
しかし、こうすることで格段に威力を上げた攻撃ができる。
左腕を振り抜いた勢いを殺さず、むしろ機械翼の推進翼で加速させて右拳を裏拳の要領で打ちつける!
その攻撃を、『敵』は加速すると右拳が当たる前に消えた。
背後に敵が再度現れる。
そのまま腰だめに構えた槍を―――突き出すよりも早く、右腕を振り切った勢いでもう一度体を回転させて突き出していた左腕から機械竜固有スキル 風刃 で迎え撃つ!
風刃は『敵』を貫いた!
ふっ
風刃が貫いた『敵』は倒れ、かわりに背後からの攻撃。分身か!?
「やるじゃないか!」
『敵』の槍の先端を見切り、主様の水と機械龍の風を合成した氷で阻む!
よし、これで『敵』はもうこの槍を使えない!
さらに氷の体積を増やしていき、槍だけじゃなく『敵』もろとも凍らせて―――
炎龍の咆哮!
エーテルの属性強化を発動して、火属性から炎属性に強化した大質量の炎が氷もろとも『敵』を巻き込み―――
そして、俺と対角線上に氷を挟む塔の壁がすべて吹き飛んだ!
「あいかわらず無茶苦茶だな。塔の壁まで吹き飛ばすとは。さすがに今のは効いたな」
『敵』の鎧は炎龍の咆哮で表面がくすみ、所々が溶けている。
今のでその程度のダメージか……!
『敵』のHPバーは二十分の一くらいしか減っていない。
しかし攻撃は通った……!
☆☆☆
頭部防具 邪神の頭蓋骨
胴部防具 邪神の革鎧
腕部防具 邪神の篭手
脚部防具 邪神グリーブ
アクセサリ 邪神の魂
武器 邪神教書《禍々しいオーラが溢れるネックレス型の魔道書》
特殊スキル+深淵の魔法
一応装備はこうなっているんものの、防具は全て魔力の霧として俺の周りを漂っている。
だから、端から見える俺の装備は、
頭。顔の下半分だけを覆う変則的な形の水色の兜。顔の鼻から上は何もない。主様の防具展開だ。
右腕。炎龍の篭手と、右翼。
左腕。機械竜の篭手と左翼。
足。幻影龍のグリーブ。
アクセサリとして羽を模した冠。
それらは全て、エーテルの制御のもとで、俺の体を包む。
胴体の部分は、胸から首にかけてが主様の防具展開、右半身が炎竜、左半身が機械竜、腹筋と腰から下が幻影龍が覆う。
それらが、ちぐはぐにならないように美しい配色で一個の鎧としてある。
禍々しいオーラを放つ邪神教書もあるが、そのオーラはこれら魔装の放つ神々しいオーラにかき消されている。
☆☆☆
「なかなかやるじゃないか! ……ならばッ!」
『敵』は腰だめに槍を構え、突進してくる。
突撃槍本来の使い方だが―――
「直線的だからよけられる!」
接近する槍の先端をよーく見切り、懐に潜り込むようにかわす。
そして右手から雷(火+風)をまとった拳を―――
ッドンッ!!
左脇腹に鈍い痛み!
『敵』は懐に潜り込んだ俺を、野球の要領で槍をフルスイングしたのだ!
ガシャァァンッ!
槍に弾き飛ばされた俺は、塔の壁を突き破って外へ。
「…ッ!」
声にならない空気が肺から漏れる。
頭を逆さまに塔の外に。
そのまま両翼を広げ、塔の頂上を見下ろせるところまで飛ぶ。
そして両手を塔に向かって突き出して、叫ぶ!
「我紡ぐは言葉、そして自然の理――右手には炎、左手には風――雷として顕現せよ! 『雷神殺し』!!」
下に向けた手から迸る雷が―――
―――塔を吹き飛ばした!
「全く無茶苦茶な破壊力だな」
声は後ろから。
声が聞こえると同時に空中でとんぼ返りをするように回転、『敵』の背後を取る。
そして水属性を強化した海の水弾を放つ!
水弾は『敵』を飲み込んだ。
それに今度こそはと『雷神殺し』!
ジュバァッアァァァン!!
雷は『敵』に直撃!
『敵』は真っ逆さまに落ちていく。
そして落ちていく『敵』の少し右に幻影龍固有スキル、宝石弾《尖った宝石を敵に飛ばして攻撃》!
それは分身を作って雷を回避していた『敵』に突き刺さった。
ドゴォンッ!
轟音と共に、地面にクレーターができる。
クレーターの中心にいるそいつに向かって―――
機械化した機械竜の腕を軽く引きつけ、左翼の推進翼+自由落下+翼の加速を乗せた最大速を乗せて、『敵』を殴りつけた!
☆☆☆
勝負が開始してから5時間半が過ぎた。
塔はもう姿を残しておらず、あたりはクレーターだらけで、月の表面みたいになっている。
俺の回復ポーションは底をつきかけているが、向こうも似たようなものだろう。
お互いの残りHPは大体半分ずつくらい。
若干俺の方が多いようにも見える。
MPの残りは大体八割程度。
「さあ、もうお互いに回復ポーションは尽きた! 今からは回復できない全力勝負だ!」
「望むところだ!」
「『アクセルスピード』三倍速発動!」
「魔力ブースト発動!」
魔力ブースト《一分間魔力∞。しかし、一バトルに一度しか使えない》
発動と同時に、俺の周りの魔力が質を変え、総量が増す。
「邪神教書第四節十二行目より!
――我が名前は古の時代に葬り去られ、世界はその魔法を拒む――
――だが我は許そう! 愚かなる神仏ども! 人間どもを!――
――この寛大なる心をもって世界は一度滅びを迎え、そして新世界の日の出が世界を照らし! われはまた幾億年の眠りにつこう―――
――次に目覚める時こそ、滅びの時なり!――
――さあ答えよ! 愚かで高貴なる我が禁書に手を出したる邪悪よ!――
――我が名を答えよ!――」
呪文の詠唱途中は俺は無防備になる。
それを、総勢一万弱の全ゾンビを顕現させて俺の防御をさせる。
「その手には滅び! その足には暗黒!」
一瞬のうちにゾンビの半分が持っていかれる!
「その体には戒め! その顔には憎しみ! その頭には妬み!」
残りゾンビすべてを結集、合体させて巨龍を形作らせる。
「世界から抹消されしその名は―――」
巨龍が『敵』に倒される。
しかし、呪文も完成した。
「――――魔王リーストガリア――!」
禍々しい赤と黒の中間色みたいな色の魔法陣が展開し、力の結晶である闇属性の魔王が顕現する。
深淵の魔法《もともと闇である魔法の魔のみを扱う禁忌の魔法。危険すぎるため封印された 失われし魔法。今この魔法の名を知る人間はいないが、もし誤って使えば世界が滅ぶ》
「邪神教書最終章最終節より――
――世界は我とともに滅び――
――新たなる目覚めを迎えん――!
――禁式『しかし夜明けを見ることはない』!」
魔王リーストガリアを闇として自分に憑依させる禁呪が、この『しかし夜明けを見ることはない』。
体が一瞬膨張するかのように感じ、体が瘴気に包まれる。
俺の体を包む防具展開の憑依モンスターは漆黒、ただ一色に染め上げられる。
この禁呪は、MPを十万消費する、通常では発動できない技だ。
魔力ブ-ストを発動することでやっと発動ができるのだ。
「喰らえっ!」
言いつつ、右手から漆黒の煌くことないき炎、左手から死を運ぶ暗黒の風を放射。
『敵』を中心に半径30メートル程を吹き飛ばす!
「おいおい、まるで魔王じゃないか!」
「お前こそこれをよけてる時点で何なんだよ!」
魔力ブーストの残り時間はあと十七秒。
こうなったら、もう俺の全力をぶつけてやる!
「――森羅万象己のうちに――
――その右手には世界を滅ぼす炎――
――左手には世界を癒す風――
――頭上には世界をかき混ぜる水があり――
――足元は全てを支える、土――
――それらは我の内にて一つに交じり合い、あるひとつの存在へと昇華する――
――光。すべてを照らす光に昇華したそれは、すべてを照らす――
――『その光の前に皆は等しく無力』!」
俺の頭上で光エネルギーの塊ができる。
それに、魔王の瘴気を混ぜ込んでいく。
「邪神教書第四十四章四節より――
――光は世界を照らし、すべてを明るみに曝け出した――
――しかし光あるところに闇は必ず現れる――
――火は光の前では無力だろう――
――風も! 水も! 土も! 霊気さえも!――
――しかし闇は抗う術を持つ!――
――光に打ち勝つ力を持つ!――
――でも、闇はそれを選ばない!――
――光と共にある道を選ぶ!――
――『|世界の理は光と闇の名のもとに』!」
光と闇、決して交わらない二つを融合させて、一つに。
それを一度手元に収束させる。
高密度すぎて空間に亀裂を走らせるそれにさらに魔力を流し、輝きを増すそれを横目に『敵』を睨みつける!
ちょうど向こうも呪文の詠唱を終えたところのようだ。
まぶしすぎるほどに光を放つ神槍をこちらに構え攻撃の準備は万端に見える。
「これで最後だ! クロウ!」
「望むところだ! 聖夜――――!」
高密度の魔力の塊と、神々しいまでに光を放つ『敵』――聖夜の槍が、衝突した――!
☆☆☆
後日、この戦いは『Treasure online』最大の勝負として、『Treasure online』ユーザーでは知らぬ者のない伝説の戦いとなり得た。
この戦いは運営側より「聖なる魔王の夜」と名付けられ、今でもゲーム内でオプション→チュートリアル→おまけで見ることができる。
☆☆☆
聖夜を倒し。
伝説級宝NO.1
エルフの秘薬《失われた命を再生する魔法の薬だが、今はもう作れる人間はいない。この容量だとあと三回使える》
をひろう。
他の宝や装備も拾うが、これは後で聖夜にやろう。
と、散らばるそれらを拾っていると、
パチパチパチ
拍手が聞こえた。
最初は小さかったそれも、段々と周りを巻き込んで、大きくなっていく。
いつの間にか、ギャラリーがいたようだ。ざっと見で百人くらいか。
「ナイスファイト!」
「いやいや、まるで魔王のような迫力だったよ!」
「すごい! とにかくすごい!」
「どっちか生き残ったほうから宝を強奪しようとしてたんだけどね、やめておくよ。返り討ちに合いそうだ」
俺に浴びせられる賞賛の声。
あんまり注目を浴びることがない生活を送っていた俺には少し、恥ずかしい。
そんなことを考えながら居心地悪く思っていると、ギャラリーの人垣をぬって、一人の男性プレイヤーが出てきた。
「やあ、お久しぶりだね、クロウくん」
「ケインさんですか、お久しぶりです!」
俺に話しかけてきたこの見た目がホステスみたいな男性プレイヤーはケインさん。
この『Treasure online』制作会社であるゲームクリエイト中津(通称GCN)の社員さんで、ゲームマスター。
会うのは武闘会以来になるのかな、多分。
「今の戦いも一部始終を見させてもらったよ! すごかったね!」
「はあ、ありがとうございます」
「それでね、君にお話があるんだ」
「何ですか?」
「今ね、うちの開発してる次世代機があるんだけどね、その試運転も兼ねてさ、イベントに参加してくれないかな。もちろん聖夜くんも」
次世代機と聞いてゲーム好きが反応しないわけがない。
おい、次世代機だってよ…! だのといった声がギャラリーから漏れる。
「一体、何をすればいいんですか?」
「お? やってくれるかい?」
「もちろん!」
「簡単なことだよ。今うちは五つのVRMMOを展開している。『Treasure online』、『Only Fameil Online』、『Only yours Online』、『G-FIRE online』、『Natural online』の五つだ。知っているかい?」
「聞いたことはあります」
そういえば友人の轟木竜聖らが『Only Fameil Online』プレイヤーだった気がする。
「その五つのゲームから二人ずつ、計十人でサバイバルゲームに参加して欲しいんだ、GCN主催のね」
サバゲーといえば、俺が黙ってはいない。断る理由もない。
「やります!」
「じゃあ、詳しいルール、開催日、ゲーム機サンプル――――といってもほぼ完成品なんだけどね―――も一緒に君の家に送ろう」
「わかりました」
なんか、面白そうなことになってきたじゃないか……!
期待で胸が膨らんだ。
えっと、次回はオフ会の話になるんじゃないかなー、と。
それで1stシナリオは終わり、2ndシナリオを二話ほどで、3rdシナリオは作中に出ていたサバイバルゲームからになります。




