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死体が無いなら作ればいいじゃない♪  作者: たしぎ はく
1stシナリオ~プロローグ~
20/63

火山頂上にて炎龍と。痛い熱痛痛痛痛痛Σξψ∮!!

 長く空きました。


 燐光を放つ、マグマ色の鱗。


 大木でもやすやすと引き千切れそうな爪。


 そして、爬虫類特有の、瞳孔が縦長の金色の瞳。


 俺は、火山の頂上の、一番強い敵(ボス)と対峙する。


 ……ドラゴンって爬虫類なの?

 

―――我は炎龍。炎龍ブリューナク。貴様も、我の守護する卵が欲しいのか?―――


 頭に直接響く声。

 すげえ、ドラゴンスゲェ!


「ああ、そうだ、炎龍(サラマンダー)の卵が欲しい」


 戦闘態勢を取る俺に、ドラゴンは言う(※テレパシー)


―――卵なら、好きに持っていくが良い。アレはもういらん。孵化せん卵なのよ。炎龍はもう滅びる運命にあるのだ。我もその最後の一匹よ―――


 拍子抜けした。


 ……え~~? いいの? ドラゴンそれでいいの?


―――ただ、我も悠久の時を過ごす種族。暇なのよな。どうだ、お主、我と一戦交えてみぬか? 勝てば卵をやろう―――


 戦いますか。Y/N


「よし、やってやるよ、炎龍(サラマンダー)!」


炎龍ブリューナク HP12072 MP30000 At6800 De4800 Sp980

スキル      炎龍の咆哮《圧倒的質量の炎を相手にぶつける》

         炎龍の威光《相手は半分の確立で物理攻撃を失敗する》

         耐火《炎属性、火属性被ダメージ十分の一》

         マグマウォーク《マグマの上を歩く事ができる》

         龍の血《攻撃に龍属性付加》

         龍の怒り《HP残り一割で攻撃力二倍》




―――おお、威勢はいいな、貴様。我がまだ若かった時ならば、主について世界を回るのも一興であったかも知れぬな。だが我も老いた。残念な事よ。では、貴様に先手は譲ってやろう―――


「よし、行くぜ、新必殺!」


 武器を、魔道書から「世界樹のメイス《世界中の枝で作られたメイス。At+30 特殊スキルMP吸収》NO.68」に持ち替える。


 それに。


「使役系能力(アビリティ)『武器憑き』発動!」


 さっきゾンビにしたばっかりの、不死鳥(フェニックス)を憑依させる。


 メイスの先端が嘴が開いた状態の不死鳥の頭部のような形に変形する。


 これだけで一つの芸術品のようだがそれはさて置き。


 不死鳥のスキル『不死鳥の咆哮』を発動。


 ゴオゥッ!


 すさまじい風斬り音と共に、ドラゴンの皮膚を焼き焦がし、左腕を吹き飛ばす。


 ……威力強すぎやしないだろうか。オーバーキルみたいになるじゃんか。まともに当てたら即死ですよ奥さん。


―――おお、今のは効いたぞ人間よ! しかし、腕一本で丁度良いハンデになるだろう。では行くぞ! 我のターンだ!―――


 龍の口腔に赤い光が収束される。


 ブレスか!?


 ここで拡散系の攻撃を放たれたら避けられない。


 ……どうしよう。割と真剣にどうしよう。


 コォアァァァッ!!!!!


 叫びと共に、口腔から赤の破壊をもたらす光線が放たれる。


 火の大きいものを人間は炎と表現するが、炎の大きいものをなんと表現するべきか。


 たとえるなら柱。


 迫り来るは炎の壁。


 避けられないと判断する。


 手に構えるメイスから不死鳥の咆哮を放つ。相殺はできないまでも、俺のところまで炎は来ないはずだ。


 見た感じドラゴンの咆哮は同じくらいの破壊力。


 大きさは不死鳥の咆哮の大体二十倍。



 表現が出来ない轟音が轟き、ドラゴンのブレスは拡散され、火山の頂上が吹き飛んだ。

 

―――なかなかやるじゃないか人間。我も、そろそろ体が温まってきたぞ。貴様も、よもやこれが限界ではあるまい。今からは、お互い本気で行こうぞ!―――


 

 それから、凄絶な光線の打ち合いが続いた。


 当たれば死ぬ、お互いに一撃必殺の攻防。


 そして、不死鳥の咆哮を放つためのMPがつき(不死鳥の咆哮にはMPが3600必要)、ドラゴンのブレス『炎龍の咆哮』を避けられなくなり―――


――――灼熱が俺の身を溶かした。


 ぐああああアァァァァァァァアアアッ!


 痛ぇ!


 死ぬ!


 痛い、痛い、痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い痛痛痛痛、いいいいいいいたたたたたた!

 皮膚が! 骨が! 筋肉が! 全てが灼熱に溶かされ焼ける。


 痛йЯ£Ё痛い熱い怖い痛いΘΠΨπ痛い………。







 ……………。





















 そして、急激に痛みは治まった。

 

 あー、ついに死にましたか。


 はあ、せっかく89も伝説級宝を手に入れたのに……。


 脳は何故か冷めている。


 目を開くと、そこはまだ戦場だった。


 視界の端に明滅する 不死鳥の加護 発動 の文字。


 ……そういや、半不死だったか、俺。


 戦闘中一回だけHPかMPが0になった時全回復するスキル、持ってたっけ。ナイス。


 MPハイポーションをdrink(日本語で「飲む」)。

 

 炎龍を睨みつけ、再度不死鳥のメイスを構える。


 今更、火山であるための熱さなど感じはしない。お前も同じ目に遭わせてやるよ、とさっきと一転沸騰した脳でうっすらとそんな事を思った気がしたので首を振り、雑念よさらば。


 戦場において熱くなるな、常に冷静であれ。


 この言葉を思い出したのだ。


 見た感じ炎龍は左腕と右腕が焼け爛れており、わりとすぐ倒せそうに見えるが、まだ攻撃を放つ所を見るに余裕があるのだろう。


 こっちには余裕が無い。


 HP、MPこそ満タンであるが、攻撃を喰らえば一撃死である以上、HP回復アイテムは意味が無い。


 そして、このゲーム内に蘇生アイテムは一つ伝説級宝NO.1のみ。


 あと不死鳥の咆哮約十発で、炎龍を倒せなければならないのか…。


「使役系能力『自分憑き』!」


 プレイヤーゾンビ×4を俺に。


 パラメータは五倍。


 大きく地面を蹴り飛ばし、横に飛んで炎龍の咆哮を回避。


 そして、咆哮後の一瞬のスキに、炎龍に近づく。


 不死鳥の咆哮を発動するものの、炎龍の咆哮で相殺される。


 そして、咆哮同士がぶつかってうまれた爆発に飛び込むように前に出た。


 至近距離で咆哮を発動すれば、相殺はできないだろう。

 

 そして凄絶なる死闘のすえ、俺は炎龍を倒した。


 近づくと爪で攻撃される。アレをかいくぐっての至近距離での不死鳥の咆哮。


 後一撃貰っていたら、死ぬ所だった。


 俺の残りHPは47。


 俺の、勝利。


          ☆☆☆


 炎龍の巣は、マグマ溜まりを越えた向こうにあるようで、俺は早速炎龍を自分に憑依させる。


 右腕は紅く染まり、そして、鋭さを追求した洗練されたデザインの篭手が出現。


 背中の右側にも深紅の翼が生える。


 右目の下、頬からあごにかけて炎龍のウロコと同色のものが浮かぶ。


 そして、右目が金色の、炎龍と同じ金色の同行が縦長の瞳に。


 ………ナニコレかっこいい。


 表示枠を出して、自分を見て思った。


 炎龍を憑依した俺は、右半身が完全に異形の人間になっていた。


 ………龍人だ! 


 RPGや漫画で見るたびに憧れていた龍人に、ついに自分はなりました。


 それはさて置いておくとして。


 炎龍固有スキル、マグマウォークはパッシブスキル(ずっと発現し続ける能力)なので、マグマの上を恐る恐る歩いてみる。


 おお、熱くない。ついでに、炎龍を憑依させてから気温も暑く感じなくなった。


 そして、炎龍の巣に到着。


 二つあるうちの一つの卵を拾い上げる。少し大きな岩くらいの大きさがあり、何個も持ち上げることが出来なかったのだ。


炎龍の卵《炎龍の卵。これを孵すには、一万年の時が必要》伝説級宝NO.12


 ゲット。


 すぐさまアイテムボックスにしまう。


 重たかったんだよ。勘で15kg。すっと持ち上げてなんかられるか。


 ピキ


 何の音?

 

 ピキピキピシピシピシ


 音の聞こえる下を見ると、もう一つの卵が割れていくところだった。


 ぴーーー!


 卵が完全に割れ、炎龍の雛が鳴き声と共に孵る。


 大きさはゾウぐらい。


 卵から孵ってすぐに成長したのだ。


 ……ドラゴンスゲェ!


 ドラゴンの雛はなおも成長を続け、炎龍と同じ大きさまで成長すると、止まった。


 そして、こちらを見る。


―――またか―――


 なにがだろうか?


―――また、転生してしまった。やはり無性生殖(親が一匹しかいない)だと転生してしまうのか。ふむ、これでは種を残したとは言えん。困ったものだ―――


 だから、炎龍は滅びの運命にあると、そう言ったのか?


―――そうだ。………しかし、よもや人間に我が負かされるとは思わなかった。その卵は貴様にやろう。持って行け―――


 ドラゴンはいうなり眼を瞑ってしまったので、仕方なく、マグマ溜まりの奥へと歩いていくと、道があったので、進んでいく。すると、さっき俺と炎龍が戦闘した場所に出た。


 ………もしかして、マグマウォークって、必要無いスキル…?


          ☆☆☆


 下山して、(翼は片方しか生えない為飛べないので歩きで)もと来た道をたどる。


 左手に小川、右手には森があり、道は砂利が敷き詰められて、散歩コースにはもってこいな道を歩いていると、女性プレイヤーに出会った。


「そこのあなた! ここに持っている伝説級宝レジェンダリィ・トレジャー全部置いていけば、命はとりませんの!」

「あ、いりません。サヨナラ」


 そして、俺は、その女性プレイヤーに背を向けて、歩き―――


「ちょっと、待ちなさい! 話は終わってませんの!」


 面倒くさいので、走って逃げることにしました。


「待ちなさいって言ってるんですのよー!?」


 うおわっ!?


 目の前に、三十人くらいの男性プレイヤーが出現する。


 それに、道を塞がれた。


 すぐに女性プレイヤー(脳内変換:お嬢様)が追いついてくる。


「何で逃げるんですの!? せっかくこの私が命だけは助けてあげるって言ってるんですのに! もう知りませんわ! 力づくで、あなたから伝説級宝を奪うんですのよ」


 どうしよう、凄く面倒くさいのに捕まった。 


 逃げよう。


 しかし、逃げられない。


 男性プレイヤーに道を塞がれた。


「あなたが悪いんですのよ!? 皆、やってしまいなさい、ですの!」


 皆がみんな手に手に武器を構えて突っ込んできたので、ためしに炎龍の咆哮を放ってみた所―――




  ―――一人残らずPKしてしまいました。


「覚えてなさい、ですのー!」


 俺は悪くないと思う。


 その日は、最寄の街まで戻った後にログアウトしてすぐに寝たから、今日の一件なんてすぐに忘れてしまっていた。



 ああ、どんどん主人公が異形になってゆく……。

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