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死体が無いなら作ればいいじゃない♪  作者: たしぎ はく
1stシナリオ~プロローグ~
2/63

人魂が俺の周りに浮いている。 あ、いや、頭おかしい人とかじゃないから!!

 

 前回の続きです。


 できれば感想欲しいです。


 欠点とかでもいいんで、ビシバシお願いします。

 


 俺が『Treasure online』にログインしようと、準備をしていた時の事だ。


 今年11歳になる妹が、部屋に突撃してきた。


「お兄ちゃん、何してんの? ゲーム?」


 そうだ、と生返事。作業の手は止めない。


 わが妹の名前は明野沙羅(あけのさら)。


 今年16になる俺とは5つの年の差があるため、喧嘩は全くしない。


 …小五にムキになるとか、有り得ないよな、絶対。親味方につけられたら勝てんし。


 このゲームを買う為に三日前から店に並んでいたので、会うのは三日ぶりとなる。そんな対した期間でもないな。


「何のゲーム? 新しいゲーム? 面白い?」


 一度に聞くな、とは思いつつ、律義にも全部の質問に答えてやる。


 なんだかんだ言っても妹は可愛いのだ。


「沙羅もやりたい!」


 そういわれてもな。


「やる! やるぅ!」


 買えばいいじゃない。


「沙羅もやりたい~! ………あ、そうだ!」


 一体何を思いついたのか、沙羅はトテテテ、と部屋を出て行った。


 詮索は後でいい。今はゲーム、ゲーム、と。


          ☆☆☆


 始まりの間の出口から出て次のフロア、北に位置するこの『初心者の森』は、たいして危険なモンスターもおらず、新米のトレジャーハンターが必ず通る道、らしい。フロア移動時に視界の端に出ていた欄から得た情報だからあってるだろ、確実に。


 初心者の森と言う名前どおり、鬱蒼と茂る木々は、横道にそれる事を許さないかのよう。多分、迷わないように、との配慮だと思う。


 とりあえず自分のパラメータを確認、と。


 クロウ ♂ 16 死霊使い(ネクロマンサー)


HP16       (体力の事)

MP25+3     (魔力のこと。これが足りなければ魔法は使えない)

At1        (攻撃力の事)

De6        (防御力の事) 


装備スキル メイスLV1 ワンドLV1 魔道書LV1

職業スキル 操魂LV1  使役LV1  闇魔法LV1

特殊スキル 無し

補助スキル 無し

称号    無し


 ちなみに、これはプレイヤーカードと呼ばれるアイテムであり、そこに詳細なプレイヤー情報が載っているほか、これを交換する事により交換した人とは、ゲーム内でのメールや電話が可能(ただしログイン中に限る)になる。


 他の用途として、ゲーム内で親しくなったプレイヤーとフレンド登録をする時に、これを交換する、身分証明に使うなどがあげられる。


 つまり、自分以外のプレイヤーカードを持っていればそれはフレンドである事を表す。


 脱線した話を戻そうか。


 さすが死霊使い、いきなりMPが高い。それと、この数字の横の+は多分、装備されて(プラス)されたのを表している。


 で、Atはアタック、攻撃力だな。低すぎないか、いきなり。レベルアップ無いってことは、補助スキルもしくは高い攻撃力の武器を手に入れないと物理攻撃が敵に通じないって事であり、つまり、今のレベルでも使える魔法スキルは無いわけで、ぶっちゃけピンチなのであった。

 

「お兄ちゃ~ん!」


 深呼吸。こんなところで妹の声が聞こえるはずが無いんだ。


 ゲーム機持ってないし。


 深呼吸したら落ち着いた。


 とりあえず落ちてる樹の枝を拾う。


樹の枝 At+1 〈ただの樹の枝。たいして攻撃力は無いが、素手よりはマシ〉


 速攻装備。


「お兄ちゃんだよね?」


 声の主はいきなり抱きついてきたので、やっぱり沙羅なんだろう。


「沙羅か?」

「そうだよ!」


 何が嬉しいのか、にこっ、と満面の笑み。


 それはそうと、他人だったらどうするつもりだったんだろう。


「よく俺だって分かったな」


 アバターネーム(ゲーム内で用いる架空の名前)教えてないはずなのに。


 と、別の人間の声がする。


「自分が説明しよう」

「中津先輩? 珍しいですね、わざわざ製品版をプレイするなんて」


 そう、彼こそがこの『Treasure online』の開発会社の御曹司、中津成也(なかつせいや)である。


 というか、他のVRMMOも全部この中津先輩ん家が開発しているので、生粋のゲーマーである中津先輩は、開発段階からやり倒しているはず。だから、わざわざ製品版をプレイするなんて、と言った訳だ。


「ゲーム内では聖夜(しょうや)と呼んでくれ。今回のアバターネームだ。……で、わざわざ製品版をプレイしているのは、だ。………んー? そう、このゲーム、親がテストプレイさせてくれなかったんだ。これは今までの中で最高傑作、完成するまで楽しみに待て、って」

「なるほど、そんなにこのゲームは凄いんですね。中、…聖夜。で、何故沙羅がここにいるんですか?」

「お兄ちゃん、沙羅じゃないよ、サーラだよ!」

「へぇ、そんなアバターネームなのか。…あ、聖夜、どうぞ、続けてください」

「あぁ、つい二時間ほど前のことだ、沙羅ちゃんから電話がかかってきてね、お兄ちゃんが遊んでくれないの、って。それなら、お兄ちゃんが遊んであげようって事でゲーム機とカセット持って車飛ばして来たんだ」


 どうせリムジンとかだろ、この金持ちが! 金持ち消えろ。


 もちろん内心思っていることは言葉に出さない。


「成也お兄ちゃんがゲーム機くれたの。なんかね~、ひばいひんってののピンク色なんだよ!」

「いいんですか? そんなの貰って」

「おや、君が遠慮するなんて珍しい。それに態度もいつもよりよそよそしいな。君と僕の関係じゃないか」


 そうだな、妹がいるからって遠慮してたが、別にもういいか。


「じゃあ、質問させてくれ。なんで沙羅、あ、いや、サーラがこんな格好してるんだ? お前の趣味か?」

 

遠慮する必要はないとのことで、口調をいつもどおりに戻した。うん、楽でいいや。


「そのメイド服と猫耳は、ジョブ、メイドの初期装備だよ。うん、僕の趣味で、……あ、いや、こんなジョブがあるなんてさすがだな、父上母上」

「おら帰って来~い。自白しかかってんじゃねーか。口笛吹くな、こっち向け、正直に言ってみ、怒らないから」

「本当に? 絶対だからね? ……、僕の趣味だよ。あまりにも沙羅ちゃんが可愛かったんでつい」


 テヘって感じで舌出すな、男がやっても気持ち悪いだけだろ。


 ……もしやとは思ったが、一応聞いてみる事にする。


「ちなみに、ジョブは何だ?」

「うん、ついでだからこれ交換しよう」


 プレイヤーカードを交換し、フレンド登録完了。ついでにサーラともやっておく。


 聖夜 ♂ 17 ロリコン


HP 18

MP 13

At 12

De 12


装備スキル 剣LV1   弓LV1   棍棒LV1

職業スキル 幼女LV1  応援LV1  魅了(チャーム)LV1

特殊スキル 無し

補助スキル 無し

称号    無し


「やっぱりかぁぁあぁぁぁぁぁあぁッ!」


 渾身の一撃、いや、魂芯の一撃! 手に持った樹の棒で聖夜を殴る。


 そう、彼は生粋のゲーマーであると同時に、ロリコンでもあるのだ。つまり、沙羅に甘いのはそういうこと。


 聖夜の図上に-18と出て、聖夜は死んでしまった。悪は滅せよ。アーメン。年上の弟はイラネ。


「ん?」


 視界にチラチラ光るアイコンが出現。何かと思い、開く。


能力(アビリティ)  喚魂


 とりあえず発動してみる。


「我、現世と冥界をつなぐ者、死者の導き手。彼の者(かのもの)の魂をここに繋ぎ、我が忠実なる下僕として蘇りたまえ」


 聖夜の死体に光が収束し、死体がむくりと起き上がる。おぉ、記念すべきゾンビ一号が完成したぞ。


「おいおい、クロウ、それは酷いぞ。……ってうわぁぁぁ! 自分がもう一人いる!」


 復活早いな。そのまま帰ってこなければ良かったのに。


「帰ってくるよ! まだ三十歩くらいしかこのゲーム内で歩いてないよ!」

「あれ? 本音が口から出てましたか?」

「もはや隠そうとすらしないよ! 確信犯だよ! …ってそんなことはどうでもいいんだ。これは何だ?」


 これ、と言うのは聖夜ゾンビのことだ。指差してるから確実に。


「あぁ、さっき聖夜をPKした後、能力を発動させたら、こんな楽しげな事に。でも、ここに聖夜が帰ってきたってことは、ここにいる聖夜ゾンビと聖夜は別物って事だな?」

「なるほど、さすが死霊使い、ってことか。しかし、自分と同じ格好なのが二人もいるのは少し抵抗があるな」


 知りません、聞きません。よし、今度ボスキャラとかに単騎突撃させて遊ぼう。


 とりあえず初めてフルダイブしたのがそんなに嬉しいのか、ピョンピョン跳ね回ってる妹と合流しますかね。


 あ、ちなみに、サーラのプレイヤーカードだが、


 サーラ ♀ 11 メイド


HP 12

MP 18

At 5

De 6


装備スキル 猫耳LV1  メイスLV1 ナイフLV1

職業スキル 調理LV1  魅了(チャーム)LV1  回復LV1

特殊スキル 無し

補助スキル 無し

称号    無し


 こんな感じ。猫耳のレベル上がったらどうなるのかとても気になるので、とりあえず猫耳はずっとつけておいてもらおう。


 シスコンなんかじゃないんだからね! 可愛いのは事実だけど!


 サーラと合流し、俺達三人はとりあえずパーティを組んだ。ちなみに、パーティを組むと組んでいる間はメンバーをPKできないので、……凄く残念だ。


 聖夜ゾンビ? 今は魂状態で俺の近くに浮いてる。夜にプレイする時は怖いだろうな。


 そんなこんなしてると、早速モンスターに遭遇。


 視界に表示されるステータスによると、


ラット HP3 MP0 At2 De2


 雑魚敵の一体ってとこか。


 樹の枝で殴る。-0。殴る、殴る、殴る。-0、-0、-0。


「君のAtとラットのDeが同じ値だ! だから任せろ!」

「任せた! …よし、あの馬鹿を置いて先に行こうか、サーラ」

「うん! 行こっ! お兄ちゃん!」


 速攻で聖夜が敵を倒してきた。


「本当に置いてくわけないだろ、馬鹿だな」

「いや、目が本気だったよ! あれは、殺し屋の目だった! 見たこと有るから分かるよ!」

「人生経験豊富で素敵ですね!」

「そんなことより、ラットはゾンビ化しなくていいのか?」


 さっきからやってるんだけど発動しないんだよ、全く。


「ふむ。なにか発動条件があるのかもしれないな。おいおい探していこうか」


 道を進む。


 右を向けば樹、左向いても樹と、だんだん進んでるか進んでないか分からなくなりそうだと思ったが、そうでもなかった。なんと、一本一本樹の模様や成長具合、葉のつき方などが違うのだ。さすが今世紀最高のVRMMO。口に出して言うと馬鹿が調子に乗るので、もちろん思うだけにとどめた。


 と、さっきまで聞こえていたサーラの声が聞こえなくなった事に気付いた。


 どうせ隠れてんだろ、と曲がり角で曲がり、そこで背中からゴブリンに襲われそうになっている妹を発見した。


 妹は気付いていない。


「うおおぉぉぉぉぉお!」


 無我夢中で樹の枝で殴りまくり、ゴブリンを撃破。


ゴブリン HP4 MP0 At6 De1


 お、能力が発動できる。


 とりあえず発動。長ったらしい呪文を唱え、ゴブリンゾンビが完成する。


 肝心なときに出しゃばって来ない聖夜が、追いついてきて言う。


「君のそのゾンビ作成スキル、もしかしたら自分で倒した敵しかゾンビにならないんじゃないか?」


 その後も敵に出会っては実験を繰り返し、この聖夜の言葉が正しいことが証明された。


 で、その間にできた俺のゾンビ軍団だが、ゴブリン×4、ラット×3、聖夜×1の、合計八体の大所帯になった。


 今は霊魂モード(俗に言う人魂)で俺の周りをふよふよと浮かんでいる。


「そうか、死霊使いの人気がないわけが分かったぞ。ゾンビ作りが難しすぎるんだ」

「死霊使いって人気がないのか?」

「さっき家のサーバで確認してみたら一人だったぞ。つまり、実質死霊使いはクロウ一人だけだ」

「でもね、お兄ちゃん、周りにいっぱい人だまさんが飛んでて格好いいよ!」


 ちなみに、サーラはさっきから人魂をつついたり、捕まえたりして遊んでいる。


 人魂はまんま火なんだが、どうやら触っても熱くないらしい。


 色は緑が7、白が1。これには規則性があるみたいだ。モンスターは緑、プレイヤーは白、だな。もしかしたら、モンスターの人魂は森にいたから緑なのかもしれないが、今はまだ分からない。


 人魂を全色そろえるのも、またこのゲームの醍醐味だな。


 …死霊使い一人だけど! どちらかと言うと醍醐味に感じるのはゲームの、じゃなくてネクロマンサーのだけど!

 

 閑話休題。 


 始めたばっかりはどうやって死体なんか手に入れるんだ? とか思っていたが、解決した。


 つまり、

 死体が無いなら作ればいいじゃない♪

 ってことだ。


 無敵のゾンビ軍団を作るべく、俺は、やっと見え始めた『レイオリア宿場町』の城壁に向かって歩を進める。


 タイトルの由来ですね。


 書き方をちょっと変えたんですが、読みやすくなったと感じてくれていたら嬉しいです。


 ではまた次回。

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