キリバ討伐。いや、美味しい所持って行ったとかいうなや!!
やっと、キリバ編を終える事ができました。
あれ、この謎はどこ行った? と思えるところがもしあれば書き込んでいただきたいです。直します。
何かの間違いかと、とりあえず走り回ってみたり、ジャンプしたり、倒立したり、前転したり、側方開脚屈身宙返り1/4ひねり転をしたりしたが、キリバのカーソルはずっと俺の方を向いたままだった。
ていうか後半、自分でも何やってるかわかんねえ。誰か、教えてくださーい!
突然奇行をはじめた俺を見ていた皆(リラ、シャルロッテ×2、ゴンドー、カミーユ)を代表して聖夜が言う。
「なにがあった、クロウ」
「いや、キリバとプレイヤーカードの交換に成功したんだけどな――――」
「本当か!? それならキリバの居場所が分かるじゃないか! どこだ! どこにキリバはいるんだ!?」
「いや、あのさ、どんだけ移動してもさ、キリバの居場所はさ」
俺のいる場所と同緯度同経度なんだ。
「………………!!」×6
みんな、絶句。
しばし考えた聖夜が口を開く。
それは、嘘じゃないんだな? と、前置きして言いだした。
「おい、クロウ。お前、今プレイヤーゾンビ何体持ってる?」
計算上の数値を答える。二十六体、と。
「じゃあ、今、なぜお前の周りに霊魂は二十七ある?」
は?
言われて、気付く。
聖夜が消えてすぐに確認した時は七体、プレイヤーゾンビがいた。
しかし、七体、その時点でいてはいけないのだ。
なぜなら、俺はその時点で、聖夜を三回、騎士、魔法使い、僧侶の、計6人しかプレイヤーゾンビを作っていなかったから。
と言うことは。
「自分がシャルロッテ――本当のプレイヤーネームは『アサクラ』だが――を連れて逃げていたのはな、キリバとクロウ、お前達が地図の同じ場所に表示されていたからだ」
何故聖夜がプレイヤーカードを交換していないキリバの居場所が分かるのか。その質問は野暮ってモンだぜ…!
「ああ、一つ『追跡の種』を持っていたからだ。…まあ、そんな事はいい。と言うことは、だ。お前のプレイヤーゾンビの中に、キリバがいるんじゃないか? 調べる方法はないのか?」
プレイヤーゾンビは顕現することが出来ない。
主に憑依専門である。霊魂状態で操る事もできるのだが。
なので、調べる術はない。
しかし、どうしても使いたくない方法が一つあるにはある。
これを使えばキリバがどれかを特定できるかもしれない。
が、俺はプレイヤーゾンビ全てを失う事になる。
「でも、チートプレイヤーを排除する為だ。仕方がないだろう。さあ、早くやれ」
他人事だと思ってニヤニヤしやがって………!
むかついたので。
「操魂系能力『魂の鎖』発動!」
MPを大量に喰うが、全プレイヤーゾンビで、動きを封じる――――
――――聖夜の。
「操魂系能力『爆発発動』
振り上げた手を、引き下ろすと同時に握りこむ!
すると、聖夜を拘束するゾンビ全てが、爆発した。
この能力は、ゾンビを故意に爆発させる事で、敵に大ダメージを与えることが出来る。そのかわり、爆発したゾンビは完全に消滅する。
はあ、これで折角集めたプレイヤーゾンビがゼロに…。
「おい、クロウ、何故自分まで巻き込むんだ?」
「巻き込んでねえ、お前を狙った。巻き込まれたのはむしろ俺のゾンビだ」
ちなみに、何に巻き込んだのかと言えば、もちろん私怨に。
ていいますか!
「なんで死んでないの、お前」
「それはさて置き」
「さて置くなアァァァァ!」
「ほら、これがキリバじゃないか?」
そういって聖夜は、一つだけ爆発しなかった霊魂―――キリバ―――に、持っている槍を降り抜いた。
速すぎてもはや風切り音すらしない槍の突きを、霊魂はひょいッとかわす。
そして霊魂は、人型をとった。
「さて、僕のアバターを返してもらおうか?」
そういって、キリバは黄色の髪(金髪にあらず)をした長身の男性プレイヤーのアバターの姿になる。同時に、今までそのアバターを使っていたシャルロッテは巫女の姿に戻り、アサクラは、小学生くらいの見た目の、小さな女の子のプレイヤーに。
そして、キリバが指を、パチリ、と鳴らす。
すると、今まであまり喋らなかったリラと、カミーユがフラフラと、キリバの側についた。
ボーッとしているな、と感じたのは洗脳されていたからか!?
「さて、僕はキリバ。始めまして。この娘達は、さっき一人でいた時に洗脳して、僕が同時に操れるようにさせてもらったよ。今では僕の従順なコマだ」
「どうすればお前の洗脳を解ける!?」
自然、声が荒ぶる。
「それは簡単なことだよ。僕を倒せばいい。ああ、口で言えば簡単なことだが、そもそも僕を倒すことが簡単なことじゃないんだったね。まあ精々頑張ってくれたまえ」
「ふざけるな、人質のつもりか!?」
「まさか。その発想はなかったよ、それも良いかもしれないね。でも、そんなことをしなくても、君達は僕に勝てない。これは言い切ることが出来る必然であり絶対だ。……じゃあ、始めようか。
ゲームスタートだ!」
キリバは、言うなり左手から光弾を打ち出してくる。
それをおのおの回避する。
ちなみに、俺のゾンビは全部霊魂状態で待機させており、主様は憑依させている。
そして、例の魔道書を装備。
「こんな者は小手調べだ! よかったよ、こんなものも避けられないような雑魚じゃなくて!」
リラとカミーユも、攻撃を仕掛けてくる。
しかし、こちらはいくら操られているとはいえ、普通のプレイヤーだ。キリバほどの脅威は感じない。
「チッ! 先にリラとカミーユをやるぞ!」
言いつつ、もう既に聖夜が二人を無効化させていた。
倒してはいない。
エネルギーの膜の様なもので覆ったのだ。
うん、聖夜さん強ぇ~!
そして、聖夜が消えた。
……は?
「ぐっ…………!」
キリバにダメージ?
そして、聖夜が現れる。
「ははは! 流石はトッププレイヤーだ! 一切見えなかったよ!」
なんだ? 今の一瞬で聖夜は攻撃していたのか? キリバを?
……どんだけ強いんだって話だけども。
というか、それをしのいでいる時点で俺達に勝ち目はあるのか?
「これは出すつもりは無かったんだけどねえ!」
キリバの纏うオーラのようなものが変わったのを感じる。…なんだ?
「職業変更『風精霊』!」
残像を残してキリバが消える。
聖夜も消えた。
そして、足元でビンが割れる。
「それは『鷹の秘薬』だ! 説明は面倒だが、要するに動体視力が半端無くなる!」
あー、うん。かなり面倒くさそうだな。聞けば分かるよ。端折りすぎ。
『鷹の秘薬』《視力を何千倍にもする鷹の秘薬。速く動く物体が見えるようになる》
補足説明です。
ビンが割れた途端に、聖夜とキリバが見えるようになった。
秘薬のおかげで一千倍になっている動体視力でもなお、二人を捕らえる事は難しい。
「おお、あいつ、やりおるな! 今度手合わせ願いたいものだ!」
なんかゴンドーが喜んでる。
キリバは緑の風のようなものを纏い、それを槍の様な形状にして聖夜と打ち合っているが、あれが職、『風精霊』の能力だろうか。
このままでは埒が明かないと踏んだのだろうか。聖夜が叫ぶ!
「特殊スキル『アクセルスピード』発動!」
聖夜のスピードが更に上がる。
「ははは、面白い、まだスピードが上がるのか! まさか、僕についてこられるプレイヤーがいるなんて! 職業変更!『光の戦士』!」
アクセルスピード発動中の聖夜のスピードを、上回った。
「『光の戦士』は、その名の通り最高速の職なんだ! ついてこられるはずが無いよ! これが僕の最高速だ!」
もはや秘薬有でも二人の姿が見えない。
意味が分からない。
ただ、辺りを轟かせる、雷がはじけるような音と、帯を引く黄金の光条がかろうじて見える。
そして、一つ分かる事がある。
聖夜が、押されている。
アレだけ無敵に思えた聖夜を越えるプレイヤーがいる。この事実に、俺は絶句していたが、聖夜は押されているだけで、劣勢ではない。
そう、さっき、キリバはこれで最高速だと言った。
聖夜は、まだまだ上がる。
「幼女系能力『倍加』!!」
ああ、技名格好悪い……。
そう、俺達のパーティにはアサクラがいる。
そして、アサクラは10歳だ。
十分、ロリコンのスキルが使えるだろう。
ロリコンのスキル幼女の能力は、パーティに幼女(十四歳以下)がいればパラメータ二倍!
最初のアクセルスピードとあわせて四倍だ!
目に見えて、キリバが押され始める。
が、キリバも弱くは無いのだ。
聖夜が一発貰って力尽きてしまう。
力尽きた?
マジでか?
「なんだ、せっかく強いプレイヤーに出会えたと思ったのに、そんな――――ガッ!」
倒れる聖夜を見下ろしていたキリバが、突然の攻撃を受ける。
「馬鹿め、それは自分が作った分身だ。ちなみに、クロウの持っていたゾンビの、ナイロック湖の時の聖夜ゾンビも分身で作った」
それで、聖夜を倒してもアイテムをドロップしなかったのか。
ていうか今は今はそれどころじゃない。
せっかくキリバの動きが止まったんだ、俺にも出来ることをやらせてもらいますか。
「操魂系能力『魂の呪縛』発動!」
これは、操魂系スキルレベルが上がった事で使えるようになった、『魂の鎖』の上位能力。
効果は、相手の魂そのものを縛り、その場から動けなくする。
MPは大量消費。
ほぼゼロに近い。
なので、封印していたMPポーションを飲む。姉ちゃんに怒られませんように。
「変換系|能力『霊剣山』!」
霊魂を変換させ、霊剣にしたものを、キリバに向けて、檻を作る。
そして、全ての剣が、黒ヒゲ危機一髪よろしく、キリバの体に突き刺さる。
突然だが、このゲームでは痛みのフィードバック率は五割。
痛いだろうなー。嫌だな、俺はダメージ喰らいたくない。
……キリバ? あいつはチートプレイヤーだろ? だからいいんだよ。しかるべき罰だ。
逆ハリネズミ(?)になってしまったキリバが言う。
……逆ハリネズミにしたのは俺なわけだが。
「痛いなァ! 流石に今のは効いたよ! ぐっと来た!」
まだ死んでいないのか!?
今の俺にはこれ以上の大技は出せないぞ!?
「ならば、これでとどめだ。『竜王の双角』!」
聖夜の持つ槍が赤く輝く!
……いいけど、名前そのまんまじゃない? 普通過ぎない?
そして、キリバの体を貫いた。
……うっわー、いたそー…。
「ぐはぁぁあ! ハァ、はぁ、………あははははは! 最高だよ! このスリル! ああ、これだよ! これが僕の求めていたモノだ!」
「な! まだ生きているのか!」
さすがに、聖夜も倒したと思っていたのであろう。俺も思ってたし、ここにいる皆がそう思っていただろう。
「ハハハハハ! 土壇場で職を『ドM』に変えて正解だったよ! この職はね、ダメージを受ければ受けるほどパラメータが上昇していくんだ!」
なんだその職。運営側も、よっぽど生産が大変だったんだろうな。それで迷走したんだろうな…。
「聖夜、お前の分身を三体出せ! パラメータは最弱でいい!」
俺のせんとすることを察したのか、信頼してくれているのか、何も言わずに聖夜は分身を三体出してくれた。
それを、ボコる! 聖夜、死ね!
「あははははははは! どうしたんだ、死霊使い君! 君、本当に面白いよ! 今度は何をするつもりなんだい?」
聖夜(分身)を三体倒す。分身でもゾンビが作れる事はわかっているんだよ!
「憑依系能力『他人憑き』!」
そして、聖夜ゾンビ三体を、聖夜に憑依させる!
アクセルスピード 2倍
幼女 2倍
他人憑き 4倍
合計 16倍!
これで、聖夜のパラメータ(Sp)は16倍だ!
さすがのキリバもこれにはついて来ないだろう。
「よし、聖夜、お前においしい所は譲る! キリバを殺せ!」
☆☆☆
いくら職『ドM』で強化しているとはいえ、スピードが16倍、他パラメータが8倍の聖夜の敵ではなかった。
そして、俺が『封印石』を使い、キリバを追放した。
洗脳されていたリラとカミーユも元に戻り、めでたしめでたし。
あ、あと、アサクラの職は『装備職人』で、この街にも店を持っているらしい。
まだ発売されて二日なのに、この街にも、ってところに聖夜と同じにおいを感じる。……どうしてこうも俺の周りには無茶苦茶なプレイヤーが多く集まるのだろうか…?
類は友を呼ぶってリラに言われたけど、俺には全く意味が分からない。出来れば日本語でおっしゃっていただきたい。
で、ゴンドーとシャルロッテ、カミーユとはパーティを解散。
これで元の三人に。(俺、聖夜、リラ)
彼らとはまた、このゲームをやっていれば会えるのだろう。
☆☆☆
「ああ、つまり君達は、王国に行きたいということだね? でも、門前払いを喰らって困っている、と。そうだね?」
安っぽい酒場で、王国軍騎士隊長ケイン様はいらっしゃった。
目の細い、優男、と言った外見なのだが、強いのだろうか?
……強いんだろうなー。
「それなら、僕は君達に推薦状を書かなければならない。でも、僕は君達の実力が分からない。もうすぐ、王国では武闘会があるからね、ある程度の実力者以外立ち入らせてはいけないんだ」
武闘会?
聞きなれない単語に首を捻る。
「ああ、武闘会って言うのはね、読んで字の如く、プレイヤー同士おっと、ここではトレジャーハンターと言わなければならないんだったか。いや、ごめんね。たまに素が出ちゃうんだ」
どうやら、このケイン様、NPCでは無いようだ。運営側の人だろうか?
「ああ、僕はね、ゲームマスターなんだ。この話は内緒だよ? 夢が壊れるだろう?」
ああ、ゲームマスターの方でしたか。ご苦労様です。
「実力の面では、我々に問題はありません。先のキリバ騒動、静めたのは我々です」
「本当かい? 成也くん。ああ、いや、間違いだ聖夜くん。となると、彼がクロウ君だね? あの、『死皇帝』の」
「ん? 『死皇帝』? なんですか? それ」
俺の口調は、ケインさんが相手のときは敬語。
聖夜の会社の人らしいし、聖夜とも知り合いらしいし。
「ああ、まだ知らないんだね? 『死皇帝』っていうのは、君の二つ名だよ。キリバ事件の時の君の活躍から、こっちで勝手につけさせてもらった。…本当はね、ラスボスと名前が被るからって、あ! これは言っちゃいけないんだった! オフレコで頼むよ」
「クロウさんに二つ名がついたんですね!? いいなあ、私もほしいです!」
リラが、物欲しそうな目で見てくる。二つ名ばっかりはなあ。あげられないしなぁ。『無敵お姉さま』じゃだめ? そうですか、駄目ですか。
「喜べ、クロウ、貴様の二つ名だ。ふぁーっはっはっはっはっは!」
「いやなんでお前は魔王口調?」
「何となくで御座る!」
「いやもう魔王口調ですら無くなっちゃったよ!?」
面倒くさい。
それはさて置き。
あまりゴテゴテした小難しい漢字にカタカナのルビがふってあるような奴じゃなくてよかった。『死皇帝』もそっちの部類だけど、まあ、コレぐらいなら全然大丈夫。ていうか、最高速のロリコンより悪い二つ名なんか無い。『死皇帝』バンザーイ!
……ああ、なんかもう厨二病でいいや。
そういや二つ名でそんなの(カタカナがゴテゴテした奴)は見たことが無いな。武器は大体そんな感じなのに。
「正式な二つ名を考えるのは大体僕の仕事なんだ。…おっと、忘れる所だった。推薦状だよね? はい、コレ。コレを見せれば入れるからね」
俺とリラに、カードのようなものを渡してくる。何だコレは?
プレイヤーカード?
ケイン ♂ 29 ゲームマスター
「それは僕のプレイヤーカードだ。僕も普通のプレイヤーとしてこのゲームをプレイすることは出来るんだけどね? まあ、仕事で一日中いるし、さ」
本当にお疲れ様です。
「聖夜君にはもう昨日渡したから良いよね? ……それに、ここだけの話、本当は結構面倒くさい試練を達成しなければそれは渡しちゃいけないんだけどね、まあ、キリバ倒したならいいよね?」
ちなみに、その試練の内容は?
「ああ、僕同伴でPK10人。まあ、それくらい軽く倒してるでしょ?」
確かに。
「じゃあ、行っておいで。武闘会は、一週間に一度で、丁度明日が第一回だからね。大会開始は午後二時で、エントリー終了は午後一時だ。遅れちゃ駄目だからね?」
そして、ケイン様は、フフフ、と。
含みのある笑い声を上げた。
☆☆☆
その後、一度夕飯を食べる為にログアウトした。
集合場所は、『レイオリア宿場町』の中央広場。
そして、ログアウトした俺を待っていたのは―――――――
―――――怒り心頭の、お姉さま(実姉)でした。
感想、誤字脱字、欠点、変な言い回し等ありましたら、書き込んでください。
よろしくお願いします。




