暴動の街。いえーい宝がいっぱいだぜ~!!
まだまだ続きそうです、この話。
『フリネジア』は、プレイヤーがプレイヤーを狩る、阿鼻叫喚の地獄と化していた。
更にその上に、どっかの馬鹿が百体弱のゾンビを、『キリバ』を捜索させる為にモンスター状態で顕現させたものだから、まさに『フリネジア』は地獄と化した。
しかも、そのゾンビを放ったプレイヤーのスキルレベルが結構高かった為に、モンスターを狩ろうと仕掛けたプレイヤーが返り討ちに会い、もはや『キリバ』捜索が暴動の体をなし始めた頃、
ゾンビを街中に放ったどっかの馬鹿――――クロウは、三人の男性プレイヤーと対峙していた。
☆☆☆
魔都と化した『フリネジア』で、いつのまにかリラとはぐれ、『キリバ』そっちのけでリラを捜していた俺は、男性プレイヤーに囲まれていた。
男性プレイヤーに、ゾンビを顕現させたところを見られ、言いがかりをつけられたのだ。
曰く、
「お前が『キリバ』なんじゃないか?」
「いえ、違います。自分、死霊使いなんで、ゾンビぐらい出せるッス」
何故か体育会系の返答になってしまったが、彼らの疑念を払拭することは出来ず、こうして、囲まれていると言うわけだ。
「死霊使いなんて職業、聞いたことがないぞ」
「それは多分職業目録のかなり最後の方にあったからじゃないスかね?」
相変わらず体育会系の返事。
三人が三人とも、アバターが体育会系ッぽいし、さらに、細かいしぐさとかもそんな感じなので、つい釣られてしまうのだ。……嘘だけど。今のこじつけの理由。
三人は、見た目、騎士、魔法使い、僧侶、だろうか。
あくまで装備品の見た感じなので、百パーセントと言うわけではないが、もし違っていてもそれに近い何かだろう。
で、比較的人気が高いそれらの職業は、目録のかなり最初の方に載っている。むしろ、騎士なんかは一番最初だ。
俺や聖夜みたいな変態や、生産職に就きたいような立派なお方以外の一般プレイヤーは、目録を最後まで読むようなことはしないだろう。
「だから、死霊使いを知らないのは当然だと思うんスけど?」
三人は、ヒソヒソと頭をつき合わせて相談中。
……いい加減どっかいってもいーかなー?
リラ捜さにゃーならんのだ。
「では、お前のプレイヤーカードを出してみろ」
三人の中でのリーダー格っぽい騎士(推測)の男が言う。
「は? 嫌スよ」
色々割れるし。
パラメータとか知られると面倒くさい。
スキルも知って欲しくない。
リラ? リラは例外。男と女では待遇が違うのはいつの世も同じ。これじょーしき。
騎士は露骨に顔をしかめると、背中に刺した大剣を少し鞘から抜き、言い放つ。
「おいおい、今この状況で、どっちが有利か分かって言ってるのか?」
脅しのつもりだろうか?
……全く怖くねぇー。
だってさ、こいつ等、三人もいるのにさ。
気付いてないんだぜ?
――――自分達が百体弱のモンスターに囲まれている事を。
こいつらは全部俺が街に放っていたモンスターだ。
ゾンビを出せるのはフィールドだけなのかな? と、実験してみたら、出せたので、全部モンスター状態で顕現させて、街に放ち、『キリバ』を捜索させていたのだ。
それを、騎士たちに絡まれている間に終結させた。
「最終通告だ。プレイヤーカードをだせ。さもなくば、『キリバ』討伐が終了するまでこの街に入れないぜ?」
この町は、今シャルロッテの結界で、出る事も入ることも出来ない。
そして、死んでしまったプレイヤーは皆、始まりの間からのスタートとなる為、この騎士が言いたいのは、PKしておさらばするぞ、と、つまりそういうことなのだ。
くっくっく。
三人が滑稽に思えて、肩を震わせて笑っていると、なにを勘違いしたのか、僧侶(推測)が言い出した。
「なんだ? 泣いているのか…?」
とどめだった。
口から哄笑がもれるのがわかるが、とまらないし、とめる気もない。
顔を上げ、口を大きく開き、笑う。嗤う。
「なんだ? 気でも狂ったか…?」
僧侶が言う。
失敬失敬。
まさか。
お前らが面白かったから笑っただけさ。
久しぶりにこんなに笑った気がする。
想像してみ? 男性三人が自分のことを囲んでてさ、その男たちの周りを自分の味方が囲んでてさ、相手はそれに気付いてないんだぜ?
「ふぁっはっはっはっはっ……あ~あ」
溜息。
モンスター〈亡霊〉を音も無く三人の背後に設置。
トントン、と、肩を叩かせてみる。
びっくりするくらい気分が高揚しているのが分かる。
騎士が後ろを向き、いきなり大剣を抜き放ち、背後の空間を切りつける。
そして、大剣が亡霊をすり抜けたところでやっと悲鳴をあげる。
そのまま全員倒せるかなー? っと思ったけど、流石にこの三人も甘くなかった。
魔法使いが攻撃魔法を詠唱し始めて、僧侶が仲間に補助魔法をかけはじめた。
「うん。とりあえずお前らゾンビの寝起きドッキリの刑な」
周囲に潜ませていたゾンビが全て姿を現す。
そして、三人を囲む。
「どうする? 降参するなら持ち物と所持金全部置いていったら許すけど」
体育会系の口調は捨てた。
こいつらは敬う必要ナシ。
「っざけるな! 誰が降参なんかするか! どうせ今まで山ほど倒した雑魚モンスターばっかじゃないか!」
「そうだ! 俺達を甘く見てもらっちゃあ困る! これでも『最高速のロリコン』の次点プレイヤーなんだ!」
「そうだぞ! 伝説級宝なんて八個も持ってるんだ! 何を恐れる事がある!」
うわ…。
余計にこいつ等をPKしなければなくなった。
最高8個も伝説級宝が手に入る!
絶対こいつ等倒す!
あ、最高8個と言ったのは、その中に釣竿が含まれていた場合は、7個プラスとなるためである。
俺に背を向けて勝手にフォーメーション組み始めた男性プレイヤー三人を、背後から『黒の斜線』が貫く。
バーカ!
でも、流石に一撃で倒すことは出来なさそうだ。
こいつらも雑魚プレイヤーではないのだ。
黒の斜線に魔力を通し、硬化させて、振り向けないように縫い付ける。
「憑依系能力『魔法憑き』!」
キラービーを黒の斜線に憑依させ、逆棘にする。
これで、こいつらは俺から離れる方向に動けばダメージを追う。
そして、魚人を倒して拾った銛(×8)をゾンビに持たせて、プレイヤーに突きつける。
「お前ら全員ゾンビにしてやるよ!」
いい加減、モンスターの大群に出会うたびに言い続けていたので、慣れてしまった。
……かと思っていたが、プレイヤー相手だとやっぱり恥ずかしかった。
シャイな奴め☆
☆☆☆
プレイヤー三人を倒し、伝説級宝を拾う。もちろん金も拾う。
拾った伝説級宝は以下の通り。
金の卵《毎日1000Dが孵化する金色の卵》NO.100
体力増強剤+α《腕のいい調剤士が調合した薬。基礎HP+20》NO.99
魔力の源《とある魔道師の魔力が結晶化したもの。基礎MP+20》NO.98
剣聖の篭手《剣聖と呼ばれた男が使った篭手。所持するだけで剣聖の魔力に守られる。基礎De+20》NO.90
世界樹のメイス《世界中の枝で作られたメイス。At+30 特殊スキルMP吸収》NO.68
白金甲虫《日の光を受けてプラチナに輝く甲虫。神々しい》NO.88
隷属の腕輪《モンスターを一体隷属させる事ができる腕輪。特殊スキル+テイマー》No.87
もう一つは俺も持ってる釣竿で、被るから数えない。
コレで伝説級宝合計8に。
白金甲虫以外は役に立ちそうだ。
……ていうかなんだよ、神々しいって! それだけかよ!
思わず、虫かごに入ったそれを、投げそうになったが、折角の伝説級宝なので、アイテムボックスにしまった。
いや、待てよ?
俺は死霊使いだから、隷属の腕輪も必要ないな。
役立つ:役立たない、5:2なので、まあ、いい物を拾った。
伝説級宝が一気に増えたし。
被った奴は、他のプレイヤーに売りつけよう。不二子ちゃんもびっくりな法外な値段で。
☆☆☆
さて、拾った者を整理しているとだな、またプレイヤーに絡まれた。
またか。
と思っていたのだが、遠くで「『キリバ』を発見したぞー!」と言う声がしたため、あっさり俺の疑念は晴れ解放された。
そして声のしたほうに走っているとリラとも合流できたので、拾った中で被った伝説級宝を譲り、また声のしたほうに走り出す。
そこには、黄色の髪をした男性アバターが複数のプレイヤー相手に立ち回っていた。
背後から忍びより、使役系能力『魂の鎖』を発動し、拘束。
手首だけを自由に動かせるようにして雁字搦めにする。
そして、周りに集まったプレイヤーに問う。
「この中で、誰がこのプレイヤーを『キリバ』と断定したんだ?」
私だ、と挙手して前に出たのはリラとは違う意味でお姉さまな感じのアバターだった。宝塚的な。
「私はカミーユ。そこの『キリバ』とは、リアルで幼馴染の関係にある。だから、私はそいつを知っているんだ。昨日彼が使っていたアバターは間違いなくそれだし、今、私の視界にはそこのプレイヤーの図上に『キリバ』と表示されている。だから、間違いないだろう」
確認のために。
さっきから私は違う! キリバじゃない! と言っている黄髪のプレイヤーに言う。
「おい、本当に自分が違うと言うのなら、プレイヤーカード出してみろ」
その黄髪のプレイヤーがだしたカードには。
――――シャルロッテ、と書かれてあった。
「どういうことだ?」
疑いは晴れた為、拘束は解いた。
自分のプレイヤーカード以外は他のプレイヤーに手渡す事はできない。
俺は黄髪の男――シャルロッテ――からプレイヤーカードを受け取ったので、これは偽者ではないことが分かる。
もし『キリバ』がそのシステムまで不正に改造してあったらその時はその時だ。
「知らん。私がこの街でログアウトして昼食をとってからログインしたらこのアバターになっていたんだ」
「でも、私には君の図上にキリバとプレイヤーネームが見て取れるのだが?」
アバターネームは、アバターについている名前であり、プレイヤーカードに記入されるネームはゲーム機本体に記録されている為、改竄は出来ない。
カミーユがキリバとかいてあるように見えているのはそういうことだろう。
「で、気付いたら指名手配犯になっていたんだ」
となると。
聖夜の元にいる偽者のシャルロッテ(キリバか?)――以下キリバ――が怪しくなる。
シャルロッテ――黄髪の男(以下シャルロッテ)――とプレイヤーカードを交換。フレンド登録をする。
まだ俺はこのアバターがキリバかもしれないと言う可能性を捨ててはいないので、このシャルロッテを伴い、(ついでにカミーユもついてきた)一路、聖夜が待機しているさっきのプレイヤーホームに急いだ。
到着したが。
プレイヤールームには、誰もいなかった。
……まさか、聖夜に限ってそんな。
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