緊急依頼。チートプレイヤーってさ、何が楽しいんだろうね!?
初のクエストらしきクエストです。
「そういえば、自分に次ぐ二人目のプレイヤーが現れたらしい。おかしなことに」
『フリネジア』で、武具を購入し、無くなったポーション類を買い、一息ついた時に聖夜が言った。
「なんで、それがおかしなことなんですか?」
「だって、自分はまだNO1の伝説級宝を持っている。NO1はこの世界に一つしか存在してはならないんだ」
「そうか、だから聖夜を倒していないにもかかわらずクリアするプレイヤーがいるのはおかしいんだな」
「チートですね?」
「恐らくそうだろう。我々真のプレイヤーは、チートプレイヤーを探し出して―――」
―――――殺さなければならない
そういった。
俺としても、全く意義は無いので、同意。
ピコン
と、メールを受信する。
差出人:Treasure online運営
件名:緊急ミッションのお知らせ
本文:このゲームを、データを不正に改造してクリアした『キリバ』というプレイヤーを、探し出してこのメールに同封されている『封印石』というアイテムを使ってこのゲームから追い出してください。この『封印石』は使用したプレイヤーのアカウントを永久に停止するものです。一般のプレイヤーには使えないようになっていますので、ご安心ください。なお、各ジョブ最強アクセサリを成功報酬とします。パーティで倒した場合、洩れなく全員にはらいますので、仲間割れ等起こさないようにお願いします。
最後に、注意ですが、『キリバ』は全ジョブを好きなように扱える全職業プレイヤーです。他にも、判明していない何かを使ってくる可能性があります。実力の無いプレイヤーは、逆に倒されないように注意してください。
PS、何故運営側で強制排除しないのかって? 面白いからだよ。皆で協力して、必ず『キリバ』を追い出してくれ。
とりあえず、聖夜は殴った。
難儀な親の責任は子の責任でもあるだろう。
「そうだ、『キリバ』を狩ろう」
「そんな簡単に言われましても……。もちろん狩りますが」
「『キリバ』狩りじゃァァァァァァア!!!!」
あちこちから、同じような声が聞こえる。
みな、志を同じくしたゲーマーなのだ。
なんというかこう、普段敵である人と同じ目標に向かえるときは、胸にグッと来るモノがある。
ああ、ゲームって素晴らしい。
「ああ、『最高速のロリコン』聖夜さまがいらっしゃるぞ!」
☆☆☆
「只今より、『キリバ』討伐作戦を実施する」
『フリネジア』で、とあるプレイヤーホームを間借りし、キリバ討伐軍は結成された。
俺とリラは、聖夜の友人と言うことで、俺が作戦参謀、リラが将軍、そして、聖夜が総司令官になった。
俺が聖夜の下と言うのが気に食わないが、聖夜が強いのは事実なので、仕方の無い事である。
「作戦を説明する前に、まず千里眼を使えるプレイヤーはこの中にいるか?」
聖夜が言う作戦は、聖夜捻出、聖夜発案なので、作戦参謀の俺、はっきりいっていらない子。
余談だが、このプレイヤーホームはかなり広い。ざっと見た感じ50人ほどがここにいるが、全然狭く感じない。
誰も手を挙げないのを見て、聖夜が首を振り、口を開く。
「では、自分が使う事にしよう」
……何でもアリだな、聖夜。ああ、どんどん聖夜が無敵になっていく…。
特殊スキル千里眼とは、自分がいる町の外に視たい対象がいる場合、居場所が明確に分かる。ただ、欠点は、いくつかあり、移動中には使えないのと、自分の近くは視ることができない(これが自分がいる町の外に視たい対象がいる場合、と言った理由である)。
また、使用中は少し無防備になる為、町でしか使えない。
フィールドで使えば、モンスターからの袋叩きに会う。
……聖夜なら全然大丈夫なんだろうなー。
それと、『キリバ』は、運営側が設定をいじり、自分の意思でログアウトすることが出来ないので、絶対にこのゲーム内にいる。
「さて、ひとまず千里眼は置いておくとして、だ。誰か、この街にプレイヤー出入り禁止の結界を張れるものはいるか?」
一人、手が上がる。
「ほう、君は?」
「私はシャルロッテ。ジョブは巫女。基本回復系能力ばっかりだが、邪を払う延長線上で、結界も使える。結界をどうするんだ?」
巫女なんて職業、初期目録にあっただろうか。上級職か?
挙手した女は、見た目、小学生の、巫女服の少女(っぽいアバター。実年齢はこのプレイヤーだけって訳じゃないが、分からない。リラかって本当は80歳かも知れないのだ)だった。
……聖夜が変なコトしなければいいなー。
と、精々他人事ぐらいのレベルで、心配していたが、聖夜は一瞥しただけで、妙なアクションは起こさなかった。
流石の聖夜も、この非常事態(?)に、変なことをする気は無いのだろう。
「それでは、作戦を説明しようか――――
――――まず、自分がここで千里眼を使う。もしこの町の外の、フィールドにいれば、自分がここにいる全員を転移させる。後は自由に狩ってくれ。その場合は、シャルロッテ、君の出番は無い。――――
――――次に、この町以外の別のフィールドにいた場合、自分は先にシャルロッテと先行し、その街に結界をかける。後はその町がフィールドのリアルな鬼ごっこ開始だ。――――
――――また、どこにも反応が無い場合、『キリバ』はこの町にいる。そのときも、先と同じように、リアルな鬼ごっこだ。――――
「特殊スキル『千里眼』発動!」
両手を軽く広げ、眼を瞑る聖夜が淡く光り、その足元に同色の魔方陣が現れる。
そして、眼を開いた。
速いな。無茶苦茶速い。
この世界そのものを走査するのだから、時間がかかって当然なのだ。
にもかかわらず、速い。
無茶苦茶、速い。
本当に強さの底が見えないお人である。
「『キリバ』は、この街にいる。シャルロッテ、結界を張れ」
「破邪系能力『結界』発動!」
シャルロッテを始点に、光の波のようなものが一瞬通り過ぎた。
アレが結界か。
「ふむ、では、自分が無防備なシャルロッテを見……『キリバ』から守ろう。万が一『キリバ』が結界をとく為にシャルロッテをPKしに来たら困る。『キリバ』はこの街にいる。さぁ、プレイヤー諸君! 『キリバ』を、探して倒せ、サーチ、アーンド、デーストローイ!」
シャルロッテを見……なんだろうか。
見つめる? 見守る?
ああ、見守るかもしれない。
ていうか、シャルロッテはジョブ最高アクセサリは欲しくないのだろうか。
職業も上級職っぽいし、もう持っているのかもしれない。
俺? 凄く欲しい。
五万円と同じくらい欲しい。
いやー、貧乏学生なんでさァ。
バイトするのは姉ちゃんが許してくんねーし。
まあ、そんなことより、リラと共に、建物から出る。
パーティ全員に報酬はあるようだから、別にリラはライバルでもなんでもないので、もちろん共闘。
聖夜も不本意ながらパーティなので、成功報酬は行くだろう。
俺は、リラと虱潰しに建物を回る。
このゲームでは、プレイヤーカードを交換している者のネームしか表示されないのだ。
例えば、今出てきた建物を見れば、聖夜の文字は見て取れるが、シャルロッテの文字は見て取れない。
……もし聖夜に変なことをされたときのために、プレイヤーカードを交換しておくべきだっただろうか。
まあ、もういちど戻るのもリラに悪いので、おとなしく『キリバ』を探す事にし、町を特に当てもなく徘徊。
うろうろしてて『キリバ』が見つかれば良いが、そんな事はないだろう。
でも、この町は広いようでいて、結構狭い。
結界も張ってあるから『キリバ』は出られない。
ならば、怪しい奴がいれば片っ端から狩っていけば、そのうち『キリバ』に当たるだろ。
と、他のプレイヤーも同じ事を考えているらしく、街がどんどんデモ運動みたいになっていく。
巻き込まれたくないなー、とか、脳の片隅で考えていたら、妙案を思いついた。
ゾンビを顕現させて街を走査させればいいのだ。
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次会投稿予定は未定ですが、一週間以内にはあげたいと思います。




