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きっかけ-1

あれは1年の1学期の終わりの頃。

井上ミサキが柏木駿を特別に意識するようになったのは、あの出来事があってからだった。

 

それはなんでもない普通の一日のひとコマ。

放課後の理科準備室から始まった。









「井上、これ、理科準備室へ運んでおいてくれないか?」



 そういいながら、先生が示した指の先にはスーパーによくあるような買い物用のカゴがあった。



「ええ?何ですか?これ」



 日直の仕事が終わり、職員室にいる先生に日誌を提出したら早々と帰るつもりだった。窓の外は今にも雨が降りだしそうな気配である。

 そんなところに余計な仕事を頼まれた私の気分は、どんよりと今見たぶ厚い雲のように暗く沈んでゆく。



「これは明日の授業に使うものだ。大切なものだから落とすなよ」



 そう言われて渡されたそれは、見た目よりもズッシリとしていて重かった。

 


 先生、こんなの自分で運べばいいのに……。

 傘、持ってないのに雨降り出しそうだよ…。



 ぶつぶつ文句を言いながら階段を上がり、やっと理科準備室の前までたどり着く。

ドアに手をかけ、開けようとした。ところが、あろうことか、カギが閉まっているではないか。

 


 ああ!もう!先生ったら!!4階まで運んだのに、鍵閉まってるってどういうこっちゃ!



 ムキになり、ドアをガチャガチャやっていると、不意に後ろに気配を感じた。急に現れた人影に驚き、独り言を聞かれた恥ずかしさに恐るおそる振り向くと、そこにいたのが彼だった。




「カギ、開いてないでしょ?今開けるから」




 私がさっとドアの前を離れると、その男子は鍵穴にカギを差し込んだ。カチャリと音がしてドアが開く。



「あ…ありがとう」



 見上げた横顔に、思わずはっと息を呑む。



 うちの学校にこんなカッコイイ人、いたんだ…。




 けれど、あの頃の私はその人の名前さえ知らなかった。学年も、クラスはおろか、校内で人気ダントツの男子だということも。


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