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双子の剣  作者: LÉO LIMA
9/30

第九幕:恥じらいの滴

「じゃあ...アタシ、ジオの隣に住めるの?」


橘子(きつこ)がいきなり侍大(じお)の部屋から現れ、彼の腕にしがみつく。


「努力はするが、期待しすぎるな」


祈跡(きせき)先生、せめて...風呂に入って、まともな着物を着せることは?」


浴室では、士武(じん)が湯船に浸かりながら先ほどの出来事を反芻していた。


『あの時の感覚は何だったんだ?心臓が高鳴って...まるで激しい運動をした後のようだ。あの娘が...可愛いからってだけで?』


士武(じん)はまだ頬を赤らめたまま、湯に沈む。


『まさか...病気だったりしないよな。こんな時に』


突然、扉が開く音と共に誰かが入ってくる気配が。


雷士(らいと)か?」


入ってきた人物を見て士武(じん)は仰天する。そこにいたのは橘子(きつこ)だった。彼女は完全に裸で士武(じん)の前に立っている。士武(じん)は真っ赤になり、驚きの声を上げる。


「どうしたの?お湯が熱すぎる?」


橘子(きつこ)は湯船に入り、士武(じん)に近づく。士武(じん)は慌てて後退り、どうすればいいか分からない様子だ。


「あら、程よく温かいわ。お湯に浸かったの初めてかも。あなた暑がりなの?」


橘子(きつこ)はほとんど密着するほど士武(じん)に近寄る。体のどこも隠そうとしない。


士武(じん)はつい橘子(きつこ)の全身を見てしまうが、すぐに目をそらす。二人の接近で、士武(じん)は目を泳がせ、滝のような汗をかき、真っ赤になっていく。


「ほら、本当に暑がりなんだ。もう真っ赤で汗だくじゃない」


橘子(きつこ)恋雨(こさめ)がよくするように、顔を士武(じん)のすぐ近くまで寄せる。


「でもジオとそっくりなんてすごいわ。匂いが違わなかったら区別つかないかも。全部同じに見える」


橘子(きつこ)は下を向く。


「ここだけ違うみたい。何か...変わってる」


士武(じん)は羞恥心の限界に達し、下半身をタオルで隠しながら浴室から全力で逃げ出す。橘子(きつこ)は悪戯っぽく笑い、舌を出す。


「ジオの兄ちゃん、面白いね。ここに住むの楽しいかも、ヒヒヒ」


しばらくして、橘子(きつこ)はオレンジ色の女物の着物を着て浴室を出る。侍大(じお)が出口で彼女を見かける。


「まともな服を着ると、意外と似合うじゃねえか」


「そう?あんまり好きじゃない。色だけはいいけど。動きにくいわ。これじゃ走れない」


「で、何で走る必要があるんだ?」


「別に、別に」


橘子(きつこ)は目をそらし、舌を出す。


「あ、そうだ。風呂で兄ちゃんに会ったよ。変なやつ、アタシを見るなり逃げ出したわ」


侍大(じお)はまるで冒涜を聞いたかのように驚愕する。


「てめえ、あのバカと一緒に風呂に入ったのかーーーーっ!?」


「いいえ、先に出てっちゃったもん」


「ま...まさか、あいつにお前の...裸を...?」


「当たり前でしょ?着物着て入浴すると思う?」


侍大(じお)は怒りに任せて士武(じん)の部屋へ走り、戸を勢いよく開ける。


「じぃぃぃぃぃぃぃぃん!!!このやろーーーっ!!!」


しかし、部屋で目にした光景に侍大(じお)は凍りつく。士武(じん)の悲鳴だけが部屋に響き渡る。侍大(じお)が反応する間もなく、枕が猛烈な勢いで飛んできて頭を直撃し、その衝撃で床に転がされる。同時に戸が勢いよく閉まる。侍大(じお)は呆然とした表情で立ち上がる。


「あいつ...俺の兄は...変態だ!最低な野郎だ!」


居間では、雷士(らいと)が「恥」の字を練習中、足音を聞いて振り向く。


士武(じん)兄さ...きゃあああっ!!」


面(めんぐ)を被った士武(じん)を見て驚く雷士(らいと)。恐る恐る尋ねる。


「兄さん...どうしてそんな...?」


士武(じん)は陰鬱で死にたげな声で答える。


「私は...切腹したい」


「ええええええっ!?」


雷士(らいと)は慌てて士武(じん)に抱きつく。


「やめてください兄さん!僕、もっと兄さんに優しくしますから!お願いです、切腹なんてしないでえええっ!!」


侍大(じお)の部屋では、彼が橘子(きつこ)の肩を掴みながら怒りに満ちて話している。


「いいか、橘子(きつこ)。二度とあのバカと関わるんじゃねえ!絶対にな!」


「どうしたの、ジオ?」


「あの野郎...弱いくせに運だけで俺を苦しい人生に追いやった上に、変態だ!最低!卑猥なやつだ!お前にとって危険な存在なんだ!近づくな!もし変なことをしてきたら、すぐに俺に言え!ぶった切ってやるから!」


「何を切るの?」


「とにかくここにいろ。勉強の休憩に様子を見に来ただけだ。(来て正解だった)でも戻らないと、祈跡(きせき)先生が待ってる。俺が許可するまで部屋から出るな、わかったか?お前をここに住まわせる方法を考えるから、我慢しろ。約束だぞ?」


橘子(きつこ)は無造作に床に寝転がる。


「はいはい~。ストレスたまってるわね。この屋敷に来てから変わったよ」


侍大(じお)はまだイライラしながら部屋を出る。戸が閉まるやいなや、橘子(きつこ)は悪戯っぽく舌を出して笑う。


「ジオ、小さい時から知ってるくせに。『するな』って言われたら逆にやりたくなるのがアタシだって、よく知ってるでしょ?」


一方、士武(じん)は屋敷の空き部屋で面を被ったまま座禅を組んでいる。瞑想を試みるも、ここ30分間の出来事で頭の中は大混乱だ。


『一体私に何が起きている?この奇妙な感覚は何だ?この...卑猥な欲望。妖怪か幽霊の呪いだろうか?理解できない。今までこんなことなかったのに』


橘子(きつこ)の顔が接近した様子、庭で上に乗られたこと、風呂での裸姿――それらのイメージが士武(じん)の意思に反して頭に浮かび続ける。


士武(じん)は首を振り、そんな考えを振り払おうとするが、心臓は激しく鼓動していた。


『もっと修行せねば...座禅...座禅を組めば、この罪深い欲望も消えるはずだ』


突然、障子が開く音に士武(じん)はびくっとする。そこには橘子(きつこ)が立っていた。士武(じん)は追い詰められたように縮こまる。


「こんにちは、ジオの兄ちゃん」


橘子(きつこ)は障子を閉め、ゆっくりと士武(じん)に近づく。士武(じん)は恐怖と羞恥で壁に張り付くように立ち、橘子(きつこ)の接近を避けようとする。橘子(きつこ)は悪戯っぽい笑みを浮かべている。


「なんでアタシを怖がるの?アタシって怖い?」


「いや!そうじゃ...それは...」


士武(じん)橘子(きつこ)を見続けることができず、背を向けてしゃがみ込み、顔を手で覆う。


「ジオが言ってたわ。あなたが変態だって。本当?」


士武(じん)は喉を詰まらせたような声を出す。すぐに跪いて頭を下げ、震える声で懇願するように話し始める。


「お...お願いです...侍大(じお)が何を言ったか知りませんが...思ってるようなことじゃ...誓います...私も...自分で分からないんです...まるで妖怪か幽霊に憑かれたようで...」


橘子(きつこ)士武(じん)の言葉に興味深げに首を傾げる。


「妖怪?」


しゃがみ込むと、犬のように士武(じん)の髪や首筋の匂いを嗅ぎ始める。


「ううん、何か憑いてる感じはしないわ」


士武(じん)橘子(きつこ)の行動にパニックになり、必死で距離を取ろうとする。しかし焦りすぎて、頭を橘子(きつこ)の顎にぶつけてしまう。橘子(きつこ)はよろめいて転倒する。


士武(じん)は助け起こそうとするが、緊張で足が絡まり、逆に橘子(きつこ)の上に覆いかぶさってしまう。その瞬間、障子が開き、侍大(じお)が立っていた。


「言ったはずだ...言うことを聞かないなら...(きつ)...()...?」


侍大(じお)の目の前には、士武(じん)橘子(きつこ)の上に覆いかぶさっている光景が広がっていた。侍大(じお)の体を炎のようなオーラが包み込み、目は真っ赤に染まる。


「てめえ...ぶっ殺す!!」

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