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双子の剣  作者: LÉO LIMA


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第二十九幕:戸鎖(とくさり)一族との対決

蛇が侍大(じお)の首に巻き付き、今にも噛みつこうとしていた――


だがその瞬間、蛇の身体が突如として蒼緑色の炎に包まれ、地面へと落ちた。


「なっ……なにこれ……?一体何が――」


「ふふん。忍者だけが変身して人を油断させると思ったら、大間違いだよ」


亜茂明日(あもあす)の背後に、いつの間にか一つの影が立っていた。それは――狐の妖怪、キツネだった!橘子(きつこ)、本来の姿である妖狐が現れる。


そしてそのまま、亜茂明日(あもあす)の背後から腹部に爪を突き立てる――


「がはっ……!」


彼女は口から血を吐き、目を見開く。蔵人(くらひと)(じゅん)が目を見張る。


「よ、妖怪……!?あれ、キツネかよ……!」


「くっ、こんなときに……しかも妖狐だと……!」


橘子(きつこ)は手を引き抜き、そのまま亜茂明日(あもあす)の頭を掴んで投げ飛ばした。


亜茂明日(あもあす)の身体は木に叩きつけられ、地面に崩れ落ち、動かなくなった。


その後、橘子(きつこ)は手を掲げ、伸びた爪で手裏剣の鎖を一気に斬り裂いた。鎖が砕け散り、侍大(じお)は解放される。


侍大(じお)はどこか落ち着いた様子(きつこ)で橘子を見つめていた。まるで、彼女がそこに現れることを知っていたかのように。


「……あんた、全然驚いてないじゃん、ジ……んー、今はジンか?」


侍大(じお)は小声で答えた。ほとんど聞き取れないほどの声で。


「……ああ。今は『士武(じん)』で頼む。最初から気づいてた。

あの茶碗が勝手に壊れた時……昔、お前が裏町で助けてくれた時と同じ感じがした。

それに、あの変な抱きつき方。あれで確信した。……お前だって」


「へへっ。あたしなりに頑張って気取られないようにしたんだけどねぇ~。ま、アンタはあたしのことよく知ってるから、無理だったか」


「でも……お前、なんでここに?なんで鈴のフリなんかしてたんだよ?」


「んー?今日の朝、アンタのとこに遊びに行こうとしたんだけど、ちょうどアンタと兄が入れ替わり遊びしてるの見てさ。あたしも混ざりたくなっちゃったの」


「それで、旅に出る予定だった女中の一人をちょっと借りて、自分の古い部屋に縛っといて

――あたしが変身して代わりに来たってわけ!」


「で、どうせなら旅の途中で驚かせる仕掛けでもしようかって思って待ってたの。

でもね、あのもう一人の女中――動きが怪しすぎてさ。

ずっと様子見てた。それで、水に毒を入れたのを見てさ、こっそりその茶碗だけ壊したんだよね~」


「ちょっと待て、じゃあ他の連中は飲ませたのかよ?」


「うん、だって? 別に助ける義理もねえし。知らねえ奴らだぞ」


侍大(じお)は呆れて模宏(のりひろ)の方を振り返った。


『マジかよ……あの仮面野郎、マジで毒食らってやがったのか……ま、いっか。あいつはどうでもいいし。死んでも構わねーな』


その瞬間――模宏の姿が掻き消える。


幽歩(ゆうほ)!》


模宏(のりひろ)は一瞬で、侍大(じお)橘子(きつこ)の隣に現れた。


「――なるほど。士武(じん)様は、妖怪の協力者でもあるんですね?」


その言葉に、侍大(じお)の背中に冷たい汗が流れた。もし模宏(のりひろ)が、様子(きつこ)――あの妖怪の正体に気づいたら。もしあの関わりが露見したら……。父や、領地の侍たちに追われ、彼女はきっと――。


恐怖と焦燥が、侍大(じお)の胸を締め付けた。


「なっ……!?そ、そんなわけないだろ!!!妖怪と!?俺が!?

ふ、ふざけんな!こ、このキツネ?し、知らねーし!!なんで俺を助けてるのか知らねーし!!

キツネってのはな、ほんっとに気まぐれなんだよなー!!」


模宏(のりひろ)侍大(じお)の言葉に疑いの眼差しを向ける。だが、橘子(きつこ)が即座に口を挟む。


「ったく、人間ってほんと自意識過剰ね。あたしみたいな妖狐を、まるで使い魔みたいに扱えると思ってんの?

たまたま通りかかって、あんたたちの面白そ~な騒ぎが始まってたから、つい見物してただけ。

だってほら、まるで漫画みたいでさ」


「マ、『マンガ』……?なんだそれは……?」


「あー、たぶん『万が一』って言いたかったんだろ。要するに、この状況じゃ俺たちが勝てるのは『万に一つ』ってことだ。……ま、実際そうだよな。

……それより、あんた毒食らったんじゃねーの?あの顔破けババアが、お前ら三人に毒盛ったって言ってたけど」


「……ああ、それか。確かに、さっき急に咳き込んで、変な粘液みたいなの吐いた時に少し怪しいと思った。でも――毒なんか効かないから」


「……はあああああ!?お前の体どうなってんだよ……!」


模宏(のりひろ)は一瞥をくれて、何も答えずに地面に落ちていた南人(なんと)の刀を拾い上げる。


「ともかく、今はこの場を離れるのが先だ。馬を確保して、明界街道(めいかいかいどう)まで戻るぞ。次に奴らが仕掛けてきた時は、もう妖怪の援護なんか望めないからな」


その前に、凪一(なぎいち)が鋼鉄球を構えた。一方、蔵人(くらひと)は両手に持った鎖を高速で回し始めた。まるで空に現れたヘリのプロペラのように。


「想定外の事態だ、凪一(なぎいち)兄さん。今すぐ全力で攻撃し、模宏(のりひろ)とあの妖狐を仕留めるべきだ。

どうやら模宏(のりひろ)には蛇島(へびじま)の毒が効かなかったらしい。そんなことがあり得るとは……」


「……了解だ。模宏(のりひろ)は今ここで仕留める。妖狐は俺がやる。そうすれば――あとは『早光(はやみつ)の跡継ぎ』一人だ。」


橘子(きつこ)が小声で侍大(じお)の耳元にささやく。


「ねえ、ジオ。あたし、どうすればいい?何か手伝う?三人とも一瞬で殺っちゃってもいいよ?」


侍大(じお)は、それに対し、ほとんど聞こえないほどの声で返す。だが橘子(きつこ)の妖怪の聴覚にはしっかり届いていた。


「俺はもう助けられたくなんかない。今の俺は、侍としてここにいる。

橘子(きつこ)……自分で証明したいんだ。親父みたいに強くなれるって。

でも、これ以上は――俺自身の力でやらなきゃいけない。ここまでで、十分だ。ありがとう」


「ふーん……。じゃあ、あたし退屈になっちゃうじゃん」


侍大(じお)は俯いて考えた後、視線を横に動かす。(じゅん)がマントの中から何かを取り出しているのが見えた。


「……そうだな。じゃあさ、あのチビ相手してくれよ。あいつ、ウザいし動きが読めねぇし。

まだ武器があるか知らねーけど、どっちにしろ脅威ってより邪魔って感じだな。

一人一人相手がいれば、俺も気が散らねぇし、お前も暇潰せるだろ?」


橘子(きつこ)は口元にニヤリと笑みを浮かべ――


その瞬間、葉が舞い上がる旋風の中に姿を消した。


次の瞬間。


凪一(なぎいち)がチャクラムを橘子(きつこ)の首に向かって投げ放っていたが、既に橘子の姿は消えていた。


あまりの速さに模宏(のりひろ)すら反応できなかった。チャクラムは真っ二つに割られた駕籠に深く突き刺さった。


「おい、仮面野郎。忍者が二人いる。ハゲの方、最後までやるか?それとももう一人の相手する?チビは今は放っとけ」


「……妖狐は、まだ助けてくれるのか?」


「知らねーよ。もしかしたら。だが、いなくてもいい。どうせ俺たちだけでやるつもりで戦う。

それに、どっちかは生かしておいた方がいいだろ。

祈跡(きせき)先生が拷問して、誰が俺を狙ってたのか吐かせるんだよ」


「……ふむ。少なくとも、戦略的には間違っていませんね、士武(じん)様」


「じゃあさ、賭けしようぜ。どっちが先に自分の相手を倒せるかって勝負だ。勝った方は、負けた方の敵を生かして尋問に回すこと」


「いいでしょう。ただし、士武(じん)様に勝ち目はありませんが」


「……は?なんでだよ?」


模宏(のりひろ)の姿がふっと消える。すでに侍大(じお)は気づいていた。奴は完全な無音で姿を消す。


模宏(のりひろ)は、凪一(なぎいち)のチャクラムが駕籠に突き刺さっている鎖の上に現れた。


そのまま鎖を駆け抜け、凪一(なぎいち)へと突進する。凪一(なぎいち)は鋼鉄球を投げつけて迎撃。


模宏(のりひろ)は跳躍してそれを回避するが、その間に投げられた鎖が他の鎖に絡まる。直後、凪一(なぎいち)は鎖を強く引き、張力が生まれた鋼鉄球は振り子のような動きで空中の模宏(のりひろ)を追ってきた。


模宏(のりひろ)は空中で鋼鉄球を踏みつけ、それを利用して別方向へ飛び退く。その反動の重さに驚く。模宏(のりひろ)凪一(なぎいち)の背後に距離を取って着地する。


『あいつ……強くて技量も高い。たぶん上士(じょうし)位だな。きっとこの任務で、祈跡(きせき)殿と戦う想定だったんだろう』


模宏(のりひろ)は刀を水平に構える。


『だとすれば、こいつを倒せば……俺が上士(じょうし)と同格、あるいはそれ以上だと証明できる』


その頃――


蔵人(くらひと)は両手の鎖を高速回転させていた。その音は空気を裂き、直接触れていない地面まで刻み込んでいた。


『くっそ……あんなの、人も馬も真っ二つにできるだろ……音だけで耳痛ぇし。やっぱ忍者のが侍よりやべーわ』


(じゅん)は鎖手裏剣の切断された部分を素早く繋ぎ合わせ、即席の修復を終えると、背後の侍大(じお)に向けて構えを取った。


『あのガキ……どこかの部位を絶対に切り落としてやる……!』


だが、その瞬間、橘子(きつこ)が背後に現れ、(じゅん)の頭を掴んで空中へ投げた。


「うわっ、な、なんだよぉ!?」


橘子(きつこ)は地面に仰向けに寝転び、両手を枕にし、両足を天に向けて突き出す。落下してきた(じゅん)を足で受け止め、そのまま軸にして盾を高速回転させ始めた。まるでサーカスの曲芸のように。


「うええええええええ!?クソ妖狐ぉぉぉぉ!!」


「ひゃはははっ!あんた、吐くまでどれだけ耐えられるか見ものだね!」


『よし……あのチビはもう終わったな。あいつ、橘子(きつこ)に地獄見せられて、逃げ場なくなって死にたくなるぞ、マジで……』


その時、侍大(じお)が油断していた隙をつき、蔵人(くらひと)が鎖を投げつけてきた。その速さは音よりも早く、音は遅れて耳に届いた。


侍大(じお)は全力で回避したが、鎖は彼の頬をかすっただけで切り裂いた。


「て、てめぇ……!!」


侍大(じお)は怒りに任せて蔵人(くらひと)疾歩(しっぽう)で跳びかかる。


だが、蔵人(くらひと)はもう片方の鎖を前に出し、盾のように回転させていた。


『くっそ……!あれに触れたら細切れにされる……!でも斬り込まなきゃ――くそ、もう止まれねぇっ!!』


侍大(じお)は回転する鎖に刀を叩きつけた。激しい衝突の火花が散り、重圧で手が痺れる。それでもなんとか疾歩(しっぽう)の勢いを止めることに成功した。


着地する前に、蔵人(くらひと)は素早く手を動かし、回転する鎖を侍大(じお)の刀に絡みつけた。


一瞬で刀に巻きついた鎖を引き寄せ、蔵人(くらひと)は刀を引っ張るが、侍大(じお)は全力でそれに抗い、離すまいと踏ん張った。


『やっぱりやりやがったな……くそ!俺、なんであの時疾歩(しっぽう)を使っちまったんだよ……!』


蔵人(くらひと)はもう一方の鎖を後方から引き戻し、それが侍大(じお)の背後を狙って迫る。

気づいた侍大(じお)はやむなく刀を手放して後方へ跳び、次の瞬間、鋭い鎖が刀の鍔を直撃し、粉々に砕いた。


『くそっ……あっという間に丸腰じゃねぇか……!どうすんだよ、これ……!?』

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