表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
双子の剣  作者: LÉO LIMA
14/30

第十四幕:一歩前へ、二歩後ろへ。一歩後ろへ、二歩前へ

双子は滝つぼの川岸に立ち、びしょ濡れのため、衣服を脱ぎ、ふんどし一丁になる。


「まずいな… このままでは着物が乾かぬ。体も冷える。病むぞ」


「へっ! お前だけだろ! 俺の体は強くて丈夫だ! こんなもんで風邪ひくわけが… ハクション!」


士武(じん)は鼻水を垂らす侍大(じお)をじっと見る。侍大(じお)は慌てて袖で拭い、言い訳する。


「…誰かが俺の悪口言ってたんだよ! お前だろ、陰でけなしてたな!?」


二人は再び枯れ葉と枝を集め、前より大きな焚き火を作る。体と衣服を乾かすため、日が暮れる前に急ぐ。士武(じん)侍大(じお)の体に残る無数の傷痕に目を留める。


「これらは… 全て命懸けの戦いの跡か?」


「あたりめーだろ! 子供が一人で食い物を手に入れると思うのか?」


士武(じん)は悲しげな表情になる。


「私… すまなかった」


「はああ!?聞きたくねえぞ!黙れ!」


「なぜだ?」


「…分かってるだろ!俺は侍の息子だ!てめえよりずっと強いんだ!同情なんか要らねえ!」


「そうだ。君の言う通りだ。私より強いし、勇敢だ。経験もある…」


侍大(じお)士武(じん)の頭を横拳で殴り、耳まで真っ赤になる。


「…また褒めやがったな!てめえ…俺の怒りを和らげようとして……そんな手に乗るか!この…バカ!アホ!ドジ!」


士武(じん)は悟った。(弟は褒められるのが苦手で、隠せないほど照れるのだな…)


悪戯心が湧き、初めて意図的にからかう。


『兄弟なら、こんなものか?』


「心配するな、侍大(じお)。君が雷光斬(らいこうざん)を習得するまで、私が先を行ってやる。それに… 字を読むのに四苦八苦してるようじゃ、雷鳴(らいめい)瞬光刃(しゅんこうは)(りゅう)の奥義を覚える前に、私が全部制覇してしまうな」


侍大(じお)は烈火のごとく怒る。


「ふざけんな!一週間で全て読んでやる!絶対に!絶対に負けねえ!この俺が!」


昼過ぎ、衣服が乾き、川魚を食べた後、二人は森を歩き続ける。刀は依然として侍大(じお)が所持したまま。


「…結局、今まで全部俺がやってんだぞ。滝の謎も解いたし、大蛇も倒した。焚き火も魚も二回も取った。『協力しろ』って試練なのに、お前は何もしてねえじゃねえか!…父上に報告したら、俺だけ褒められるんじゃねえの?」


士武(じん)は地面を見つめ、侍大(じお)の言葉に聞き耳を立てていない。侍大(じお)は無視され、さらに癇癪を起こす。


「おい!無視すんじゃねえ!」


士武(じん)は依然として考え込んだまま。侍大(じお)は業を煮やし、頭突きを食らわす。


「聞いてんだろこの野郎! 無視するな!」


「いてええ!何すんだよ!?」


「話してんだろうが!聞こえてんのか!?返事しねえとぶっ飛ばすぞ!」


「傷つけたら試練失敗だぞ?」


「股間への蹴りなら痕残らねえだろ」


士武(じん)は目を見開き、恐怖で震えながら股間を覆う。


「そ、そんな卑怯で…不名誉なことを…!?」


侍大(じお)は完全に無関心な顔で、士武(じん)の大袈裟な反応を鼻で笑いながら答える。


「…すんねえよ、アホか」


士武(じん)は森の中を歩き続ける。今度は侍大(じお)が後ろからついていく。先頭を行くのに飽き、士武(じん)に主導権を取らせようとしたのだ。侍大(じお)士武(じん)が木々を注意深く観察していることに気づく。


「何してんだ? 紋章探すの諦めて、カブトムシでも探してんのか?」


士武(じん)は驚いた顔で振り向き、急いで侍大(じお)に近づく。


「君、カブトムシ捕ったことある!?」


目を輝かせて、答えを期待して見つめる。


「ああ! 去年の夏に三匹同時に捕まえたぜ!」


侍大(じお)は得意げに鼻をこすり、自慢する。


「すごいな! 私はクワガタを捕まえたことあるよ!…でも逃がしちゃったけどね」


「マジで!? クワガタなんか見たことねえよ!」


「ほんとだよ!緑色に光るやつで、ハサミがこんくらいデカかった!」(手で大きさを表現)


二人は甲虫談義に熱中するが、侍大(じお)は突然我に返り、士武(じん)の頭を殴る。


「バカ!虫の話してる場合か!紋章探すんだろ!」


「いてっ!意味なく殴るなよ!何が問題だ!?」


「問題はお前が何もせず、虫探して話してばっかで時間潰してることだ!バカか、お前は!?」


「誰が虫なんか探してるんだよ、バカ!私は木を探してるんだよ!」


侍大(じお)は怒りを爆発させる。士武(じん)が初めて侍大(じお)の言葉に反論したからだった。

それがどれほど弱いものであっても、侍大(じお)は侮辱に対して極端に敏感なのだ。


「ば、バカって呼ぶな!この…アホ!マヌケ!スケベ!うどん頭!」


「私はうどん頭じゃない!お前こそだ!」


「はあ!?俺ら顔同じだろが!」


「じゃあお前もうどん頭ってことだな!」


「『も』って…!?」


二人は火花を散らしながら睨み合う。侍大(じお)はむくれ、士武(じん)は少し落ち着いて話し始める。


「聞け、侍大(じお)。先生が君に滝の話をしたのは『我慢』を教えるためだ。でも、あれは『勇気』の紋章とは関係なかった。だから思ったんだ…」


「先生は昨日、君が俺を殺そうとする前に言ってた。『剣術の上達には忍耐が必要だ』って」


「だから?」


「だからだよ。先生が『二人に教えた紋章』って言ってたろ? 君には『冷静さ』、私には『忍耐』の話をした。それが手がかりかもしれない」


「違うだろ。先生は紋章の場所を教えてくれたんだ。偶然の一致だ。そもそもお前、昨日滝の話なんか聞いてないじゃねえか」


「昨日は聞いてない。でも黄昇こうしょうに住んでるから、光竜の滝の存在は知ってた」


「知ってたなら最初から考えろよ!馬鹿か?」


「先生が『昨日教えた場所』ってはっきり言ったからだ。光竜の滝の話はしてない」


「じゃあそのうどん頭を働かせろ。俺の紋章は見つけた。次はお前の番だ。失敗したらぶっ殺す」


「先生の話で手がかりになりそうなのは、剣術の上達に『忍耐』が必要ってことだけだ」


「…それが木と何の関係ある?」


「先生が『月下楓(つくしめぎ)』の伝説も話してた。物事には時期があるって」


「『着く締めき』?なんだそれ、締め切りギリギリに駆け込んで間に合うっていう伝説かよ?」


「違う。『月下楓(つくしめぎ)』は木だ。大きな根が波みたいに地面から出てるカエデの木。満月の夜、葉が銀色に光る。その葉を取れば願いが叶うらしい」


「は?紋章探すの諦めて願い事でもする気か?」


「違う。先生がカエデの木の近くに紋章を隠したのかもしれない。この森で目立つからだ」


「で、『忍耐』と?」


「満月の夜に自然に落ちる葉だけが願いを叶える。無理に取るとダメだ。『待つ忍耐』が必要なんだ」


「…まさか本気で信じてんじゃねえよな」


「本当かどうかより、先生の手がかりだ。木の特徴が手がかりかもしれない」


「じゃあ最後の紋章は?先生は『二人に教えた』って言っただろ」


「もし先生が最後の紋章を別々に教えてたら…私たちで昨日の話、ぜんぶ思い出して確かめ合わないとダメになるな…」


その口ぶりに、侍大(じお)は違和感を覚える。


「…は?どういうことだ?お前が俺と話したくねえんだろ?」


「はああ!?何言ってんだ!君こそずっと無視してたじゃないか!」


「…まさか、お前…前に俺と話そうとしたことあんのか?」


「当たり前だろこのバカ!!何度も試した!でも君は話すたびに俺を罵倒するか殴るか!!罵倒して殴るか!!!」


士武(じん)は振り向き、再び月下楓(つくしめぎ)を探し始める。侍大(じお)は少し衝撃を受ける。確かに、士武(じん)が近づく度に自分はすぐ激昂していた…


ふと、ある考えが頭をよぎる。


(もし士武(じん)がずっと…兄になりたかっただけなら?)


侍大(じお)はむっと顔を顰め、その考えを振り払う。


『…だから何だ!どうでもいい!俺はあいつが大嫌いだ!この甘ったれボンボンと仲良しごっこなんて絶対にすんねえ!このクソ試練が終われば元通り敵だ!…だが、最後の紋章のためには話さなきゃいけねえのか…』


侍大(じお)士武(じん)の背中をじっと見つめる。数分観察していると、士武(じん)月下楓(つくしめぎ)を探す姿が真剣そのものに見えてくる。再び嫌な考えが浮かぶ。さっき褒められたことを思い出し、思わず頬が赤らむ。


『…考えるんじゃねえ、侍大(じお)!あいつは敵だ!全部あいつのせいなんだ!いい顔してるだけだ…油断させるためだ!』


その時――

二人から約200メートル離れた木の上に、不気味な影が現れる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

もし作品を気に入っていただけましたら、ぜひ以下の方法で応援していただけると嬉しいです:

  • ★評価をつける
  • ★ブックマークに登録する
  • ★感想やリアクションを残す

どれかひとつでも大きな励みになります!(>人<;)

FANBOXでのご支援も大歓迎です:

FANBOXはこちら

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ