第七羽 鑑定と眷属
今日は急に予定が入って焦りました!
ちょっと日付、跨いじゃったけど投稿しマッスル!
よければ最後まで見てくださいね!
「……!!……コケッ!」
「……うぐっ……うぅ……ヒヨコさん?」
俺様は気がつくと泣きじゃくるリィズに抱きしめられていた。
周りは瓦礫と残骸だらけだが、その中に一つ、自分たちの足元に妙に目を惹かれるチリの山が溜まっていた。
「……ヴェスパー」
俺様はそれが、自分の命を救ってくれた存在の成れの果てである事を感じ取った。
「……ふぇ?……ヒヨコさん?……しゃべった?」
「……コケっ?」
リィズは驚いたのか、俺様を持ち上げる。
確かに、今俺様は人の言葉を発した。
それに気がつくと同時に、頭の中で声が響く。
ーーー才能errorを更新します、【言語超越】
「なんだ!?言語……超越?ぐぅっ!!頭が……」
「……ヒヨコさん!?……大丈夫!?」
苦痛な声を上げる俺様を不安な顔付きで心配そうに撫でるリィズ。
聞こえた声を一旦無視して俺様は答える。
「……あ、おう!大丈夫だぞ?ほらっ!元気だからな!」
俺様はリィズの腕から抜け出し、飛んだり跳ねたりしてみせた。
それを見て余計に不安そうになるリィズは、また俺を抱え上げる。
「……なんで?おしゃべりできるの?」
「なんでだろうな?前まではピヨしかいえなかったんだが」
「おっきくなったから……かな?」
リィズに言われて俺様は認識した。
「俺様……身体……デカくなってる……」
しかも羽毛も黄色から白色に生え変わってないか?
それに何だか頭が重たいぞ……
「ちがうかも?……あ……ヴェスパーさん」
リィズが寂しそうに呟く。
そんな様子を見て俺様は答えた。
「ヴェスパーは最後まで元気だったぞ、やっと仲間の所に行けるって言ってた」
「……仲間……そっか……」
「俺様を助けてくれたんだぞ」
「うん、知ってるよ……」
空気が一気に重たくなる。
俺様が掛ける言葉を見つけられるずにいると、リィズが先に口を開いた。
「ヒヨコさん……みんな……死んじゃった……どうすればいいかな……わた、し……どぉ、しよう……」
また泣き始めそうになるリィズ。
周りに人の気配は一つもない、見渡す限りの残骸と所々にある赤い水溜りを見て、俺様は
『ヴェスパーやりすぎだろ!』と心の中で叫ぶ。
「とりあえず、ここから移動するぞ。
こんな所にいても何にもならん!」
「……うん」
リィズは涙を拭き、瓦礫の中を歩き始めた。
2人の間に会話はなく凄く気まずい雰囲気だ。
「あ!そうだぁ!」
俺様は思い出したかのように叫ぶ
「な、なぁに?ひよこさん?」
「そのヒヨコさんだっ!俺様、やっと喋れるようになったし自己紹介でもしないか?」
改めて考えると、俺様はリィズの名前ぐらいしか
情報を持っていなかったな。
「え?……え?……自己紹介?……」
「はぁ〜仕方ないなぁ、じゃあ俺様からだ」
戸惑っているリィズに俺様から話を始めた。
「俺様の名前はベルク!……さっきヴェスパーから貰った名前だ。気軽にベルク様って呼ぶと良いぞ!フン」
俺様は鶏胸を張り、重い空気を払拭するために冗談をかました。すると……
「……わかった……ベルク様?」
「あ?いやいや、冗談なんだけど……」
本気に捉えたのか様付けで呼ぶリィズ。
その声を聞いた途端、また頭の中に謎のアナウンスが流れた。
ーーーー眷属候補が現れました。承認しますか?
「うわぁ!びっくりしたぁ!」
「キャっ!」
俺様の頭上に突然、石板のような物が現れた。
「ど……どうしたの?ベルク様……」
「え?……なぁ、もしかしてコレみえてないか?」
俺様は手羽先で石板に触れて見せる。
「どれ?……みえないよ?」
どうやら石板は俺様にしか見えないようだ。
そこには【ヒューマン】リィズを
errorの眷属に加えますかと書かれていた。
「……errorってなんだ?……てか眷属に加えるってあれだよな……仲間にする的な奴か?」
すると石板に文字がまた浮かび上がる。
回答します。
errorは観覧権限がないときに出る表示です、
眷属に加えるとは文字通り、
その者を自分に隷属させる事、
又はその者に自分の能力を分け与える事を指します。
「すげぇ……質疑応答ができんのか」
「……どうしたの?ベルク様?……目の前に何かあるの?」
一羽で喋る俺様を見てリィズは不思議そうにしている。
「ちょっと待ってろ……なぁ?その眷属ってのになったらどうなるんだ」
俺様は石板に問う。
回答します。
errorの眷属になる場合、
レベル上限の撤廃。
才能個数上限の撤廃。
親の【魔将特性】進化によるステータス変化。
進化を可能とする種族への変化。
親の魔将特性に類似する、
特性の習得が可能となります。
「……うへぇ……面倒臭い文章……」
「なに?……待ってて大丈夫?」
石板を見て、しばらく思案した俺様は試しにリィズに聞いてみる事にした。
「なぁ、リィズ……俺様の眷属になるか?」
「……眷属?ってなに?」
不思議がるリィズに『まぁ知らないよな』と
俺様が細かく説明しようとした矢先。
「よくわからないけど……なってもいいよ?」
リィズは訳も分からずに了承してしまった。
ーーーー契約を完了しました。
「え?……って!おい!?バカ!!
まだ説明もしてないんだぞ!ストップ、ストップ!」
ーーーー【ヒューマン】リィズの眷属化を開始します。
俺様の静止も虚しく、リィズの眷属化が始まってしまう。
突然、石板から青い光の線が現れ、俺様とリィズの身体に入り込む。
「な、……なに?……これ?……あったかい……」
それは管のように繋がり俺様から赤い液体を抽出し、リィズの身体に送っていく。
「……輸血……してる?」
暫くして、リィズがうめき声を上げ始めた。
「……ぐぅ……うがぁ……い……いたい……よぅ」
「おいっ!大丈夫なのか?リィズ!!」
回答します、現在、眷属化に伴い、種族の変更を行なっています。
多少の痛みが生じるだけで、命に別状はありません。
「なら安心か……ってんなわけないだろ!止めろぉ!」
そういって石板を叩く俺様の横で、リィズはみるみる姿形を変えていく。
特に頭と尻の変化がすごく、少しずつ何かが生えてきていた。
そして数分が経った後、石板にはこう書かれていた。
ーーーーお疲れ様でした 眷属化を終了します。
【ヒューマン】リィズは無事に【デミフォックス】
に変化しました。
親は今後、無条件でステータスを観覧できます。
上昇したステータス及び、付与された特性はそちらから確認をお願いします。
それでは引き続きUTを楽しませてください。
「……やっと、終わったのか?クソっ!勝手に始めやがって……UTを楽しませる?UTって誰だよ!」
ひとしきり言いたい事を言い終えると、俺様は倒れているリィズに近寄った。
「おい!リィズ、しっかりしろ!」
俺様は口ばしでリィズをつっつく。
「……ん……」
「息は!?してるな……」
安否確認を終えると、俺様はリィズを改めて観察する。
「あ〜あ、どうすんだよ……獣っ子になっちゃったぞ……デミフォックスって書いてたっけ?」
リィズの皮膚は獣のように毛深くなり、頭にはキツネのような耳が生え、麻の服からは尻尾が突き出てていた。
「……なっちまったもんはしょうがない……か。
……ん?なんだ、これ」
俺様はリィズの横に黒い枠を発見する、そこには鑑定しますかの文字が浮かんでいた。
「さっきの石板と良い、何なんだよ……鑑定?……」
俺様が触れると、黒い枠は空中を移動してリィズの真上に止まり、表示を切り替えた。
ーー対象 リィズを鑑定します。
現在 リィズは貴方の眷属です。
無条件に全てのステータスを開示します。
種族 デミフォックス 上限レベルなし
現在のレベル4 年齢10歳 職業 奴隷
力3 速8 守3 魔9 精11 体9
才能 魔法B 指揮C 走るS 直感S 精神力A
思考傾向 温和 被虐的
親族 『レビン』生存中 『カレン』生存中
支配者 ベルク 付与された特性 魔法進化
ーーーーーーー
「なんか、ゲームのステータス画面みたいだぞ、
これ勝手に見て良いのか?
…………被虐的。
そっかリィズ、親いたんだなぁ……そりゃそうか」
リィズのステータスを眺めていると、気になる点がちらほらあった。
「魔法進化ねぇ?才能とかも見れるんだな。
親は……生存中か…………うん、探してやらないとな!
あ、でも今のリィズの姿を見たら何て言うかな……」
俺様が色々考えているうちに、リィズはパッと目を覚ました。
「あれ?ベルク様?
…………何でかな?不思議な感じ……」
自分の変化に気づいていないのか、
リィズは呆けた顔で体を起こす。
そんなリィズの頭に乗り俺様は突きをかました。
「?いたい!いたいよ?ベルク様!」
「コノッ!コノッ!お前が考えなしに返事するからだぞ!」
「……ご、ごめんなさい!」
何度か頭を優しくつついた後、俺様は言う。
「もういい、リィズ……後で鏡みても驚くなよ?
……よし!今度こそ、ここを離れるぞ!」
「え?……うん!わかった!」
そして俺様たちは、ヴェスパーが壊滅させた街から出るために、また歩みを進めるのだった。
リィズが獣っ子になっちゃいました……
今後、どうなっていくんだろう自分でもわからん。
最後まで読んでくれてありがとうございます!
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作者の励みになりそこねるな……
次回は一旦、休憩も兼ねて設定の幕間です。