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第三羽 未知との遭遇

良かったらぜひ読んでくだサイドチェスト!今回は力が入りすぎてちょっと長くなってしまいました(汗)

俺様はヒヨコである、決してエサではない。


そしていま、俺様は命運を賭けたトウソウの最中である、ただし闘ではなく逃のほうだが……


「ピ!!!ピヨォォォ、ゼェー、ゼェー……」


「ジュルルルゥゥ!キジャァァァ!!

(訳)飲み込んでっ!腹の中ですり潰してやるぅ!!」


いや好戦的すぎませんかぁぁ!?


『蛇』魔物として分類するほどでもない普通の蛇……だけど、ヒヨコから見たらアナコンダ級だぞアレ!!


命の危機を感じ、全速力で逃げる俺様。

前世でもう逃げませんって言ったのに、この体たらくである。


いやいや、あの時とは状況が違うし!助けを求められてないし!?逆に助けてほしいし!!?


「ピヨヨヨヨヨョーーー!」


死にものぐるいで走る、草をかき分け走り倒す、逃げ出した前世と同じ姿だろう。

ただ前と少し違うのは……

『恐怖』を感じていないと言うこと、じゃあ何で逃げているのかそれは、


『勿体無い』とそう思った。


この身体の性格なら蛇に立ち向かえるだろう、

だけどこんな所で命を賭けて死んだら……


リィズを救えなくなる。


せっかく新しい人生、いや鳥生を得たんだ、

一人ぐらいは救ってやらないと転生した意味がない。


「ピヨ!(訳)そうだよなぁ神様」


前世のようにまた視界が狭まっていたのか、気がつくと俺様は洞窟に逃げ込んでいた。



「ゼェーゼェーピヨヨウ

(訳)ハァ、ハァ、車とか飛び出してこないよな……」


そんな冗談を言えるくらいに今の俺様は死を恐れていなかった。


「キジャァジャァァ!!

(訳)やっと追い詰めたぞぉっ!」


暗がりに目が慣れる頃には、すぐ後ろに蛇が迫ってきていた。


「ピヨっ!?」


この野郎しつこいんだよ!……仕方ない、戦うしかないか!


洞窟はまだ先が続いている、たがこれ以上すすんだら戻ってこられる保証はない。


「ピヨッ!(訳)クソッ!やるしかないのかよっ!」


俺様は決死の覚悟で踵を返し、蛇を自慢の口ばしで迎え撃とうとした……次の瞬間。


ーーーービシャ


洞窟の奥からあり得ないスピードで何かが飛んできた、それは俺様の頭を掠め、容赦なく蛇の首に突き刺さる。


「……ピッ!ピョォ……

(訳)……なっ!なんだよ……」


全身に返り血を浴びてしまった、

体を震わし目についた血を払う。

その一瞬でさっきまであった蛇の体が消えていた。


「ピッ!?(訳)誰だっ!?」


気色の悪い咀嚼音が背後から聞こえる、俺様はすぐに後ろを向く。


すると、先程までそこには居なかったはずの、人のような何かが石に腰を掛け血肉を貪っていた。


今の俺様には鳥類の感覚がある、それが告げた。

コイツは他の生物とは全く違う『動くと死ぬ』と。


蛇を骨まで味わい尽くしたソレは、ゆっくりと立ち上がり複数ある眼でこちらを見据える。


身長は2メートル程か、細い身体を揺らし昆虫のような甲殻を震わせると、頭から無数の触手を伸ばす。

先ほど飛ばしたであろう触手の切先が、全てこちらに向けられていた。


「ーーーーー?ー?……ーーー、ーーー!!」


おおよそ言語とは言えない、恐ろしい雑音を口から発するソレ、普通の人間なら聞き取れない言葉を俺様は理解した。


「……コッコスの雛?何でこんな所に?……ま、どうでもいいわね、せめて楽に死なせてあげる!!」


ソレが動きだす瞬間、前世の死の痛みを思い出す。

あれは痛かったなぁ……

だからだろうか不意に言葉が出た。


「ピヨォ……(訳)楽ならいいか……」


…………何故か触手が眼前で止まった。


「ピッ?ピヨォ?」


「ー……!ーーー!?ーーーー……ーーーー!?

(訳)あ……あなた!?私の言葉……わかるの!?」


「ピヨ?ピヨヨ……ヨ

(訳)え?わかる……けど」


ーーーーーーー


「言葉が通じるなんて、何百年ぶりかしら?ふふふっ……」


先程まで殺伐としていたのが嘘のように、謎生物が外見からは想像できない乙女な声をあげる。


「ピヨォ?(訳)あのぉ?」


恐る恐る声をかけると、近所のおばさんみたいな動きで謎生物が語る


「あらあら、ごめんなさいね?会話なんて久しぶりだから…あ、自己紹介がまだだったわね?自己紹介、必要でしょ?ね?自己紹介!!」


すごくはしゃいでいる


「ふぅ……言うわよ、いい?何度も練習したから大丈夫……わ、わた、わわわ私はヴェスパーです!!……キャッ!言っちゃった……」


何なんだろうこの生き物


「さっきはごめんなさいね……いきなり殺そうとして、あ〜でも蛇から助けてあげたっぽいし、

ノーカンよね?ねぇ?ねぇ?そうでしょ?どう?どう?」


妙に言動が軽い、そしてうるさい……


「あ、そうだ!久々にお話しができて、私すごくハッピーなの!だ・か・ら?もしまだ話し相手になってくれるなら、貴方の願いなんでも叶えてあげるわよ?こう見えても私は20人くらいいる魔将の一人でその気になれば1日で人間の王国滅ぼせちゃうんだから!すごくない?ねぇ?すごい?ねぇ、ねぇ?やっぱり世界征服とか願っちゃう?あ、でも今は使徒にやられて、死にかけだから半分だけしか征服できないかも、あ、蛇に怪我とかさせられてない?私の力で治したげるわよ?どうする?おーい!?どうするー?おーーーい?」


「ピ、ピヨヨヨーーー!!

(訳)一旦だまれっーーーー!!」


俺様は喋り倒す化け物に、一喝を入れた。


「あら?ごめんなさい、久しぶりだからつい喋りすぎちゃった!」


叱られても嬉しいそうな動きをしている……

ワカメみたいでキモい。


クソッ、なんだか凄く大事なことを言っていた気がするけどヒヨコの頭じゃ、あのマシンガントークを処理できなかったぞ。

え〜と、ヴェスパーと魔将は覚えてるな……


「あ〜、ヴェスパーって言ったか?」


「イヤ〜ン、名前呼ばれた!数百年ぶり〜」


俺様は無視して話を続けた。


「殆ど聞き取れなかったからもう一度聞くぞ、

……あんたは何者で、何なんだ?」


「今度はゆっくり喋るわね?改めまして、

私は『異邦のヴェスパー』暗黒空間出身の


……『魔軍8番目の魔将よ』」


自信満々に説明するヴェスパー、また知らない単語が出てきたな……魔軍?……暗黒空間?よくわからんが

コイツ、今は敵ではなさそうだな。


「ヴェスパーとやら、俺様はまだ生まれたばかりで、この世界のことを何も知らないのだ……だから、魔将とか魔軍とか言われてもピンとこないんだぞ……」


「あら〜?しょうなの〜?赤しゃんだったんでしゅか〜?」


殴り飛ばしてやろうか……


「うわっ真っ赤な感情……冗談よ?怒らないで?」


「感情?……色々と聞きたいことは沢山あるんだが……まずなんで俺様の言葉がわかるんだ?」


「……言葉はわからないよ?心を感じてるだけ」


そう言うとヴェスパーは鋭い爪と触手を重ねる。


「私の特性は加速、貴方の想いを加速させて、言葉や気持ちを感じ取ってるってわけ。共感覚加速って言うんだけどね?」


魔法の次は特性ときたか、ん〜想いを加速とか訳がわからん。


「特性は私たち魔将しか持てない特殊な力って感じかしら、人間を効率よく狩るためのね」


「人間を狩る……」


魔軍って言ってたし、コイツ魔物なんだろうなぁ

……逃げるか?


「アラ?心配しないで?私、人間は殺さない主義だから!ねぇ?ねぇ?私からも聞いていい?なんで私の言葉がわかるの?あと貴方の名前教えてほしいなぁ?」


共感覚加速って奴で心を読まれるとしたら、下手なことは考えられないな。

転生したとかは隠した方が良さそうだけど……

えぇい、仕方ない正直に話すか


「俺様、今はヒヨコだけど前世は人間だ、この身体になった時に不自由しないように神様?かなんかが翻訳能力をくれたんだと思う……多分。

……あと名前はないぞ」


「ふんふん、なっるほっどね〜」


興味深そうに複数の目を動かすヴェスパー

小声なのだろうか、小さな音を口からカチカチとならす。


「……神のおもちゃ、ね」


「ん?なんか言ったか?」


「ううん、何も言ってない……そっか……ふ〜ん、元人間なんだ……それじゃ〜」


「ピッ!?」


まずい、人間って言ったのはミスったか!


「……ふふふっ、良かったら、このヴェスパーお姉ちゃんが、貴方の聞きたいこと教えてあげるよ?まだまだ私、話し足りないし!」


「……いいのか?俺様、元人間だけど」


「元でしょ?それに〜せっかくお喋りできる生命体を殺したりしないわよ?……で?どうするの?何でも聞いてよ!」


正直、嬉しい提案だ、生まれてから屋根裏にしかいなかったから情報がなくて困ってたからな。


魔将とか魔軍の事も聞いたいが、

この世界には魔法や特性があるみたいだし、

まずは魔法について聞いてみるか。


「それじゃ魔法のことを聞いてもいいか?俺様!使ってみたいんだ!」


「え?ん〜いいけど……」


緑魔法とか紫魔法とか色々あるみたいだし、魔法が使えるようになったら戦力も上がるぞぉ!

さっきの蛇なんか瞬殺できたりして?


よーしっ!!燃えてきたっ!!

魔法を使えるチキンに俺様はなるぞ!!


「でも、わたし能力も感じ取れるんだけど、あなた、魔法の才能ゼロよ」


儚い夢だった……


「あ、でも魔法が使いたいなら私の血を……」


急に言葉を遮りヴェスパーが洞窟の入り口に向かって威嚇をする。

瞬時に殺気を放出して俺様も毛並みが逆立った。


「……誰?」


「……ぅっ!!あぅぅぅあ!!」


そこにはボロボロになったリィズが立っていた。

震えながら擦り切れた声で必死に怒鳴っている。


すると何故かヴェスパーは殺気を収め、優しい口調に戻った。


「あの子……貴方のこと、守ろうとしてる」


「え?」


先ほどとは打って変わって、優しい雰囲気を纏うヴェスパー、するとリィズは事切れた様にその場に倒れた。


「リィズ!」


「心配しなくていいよ?私の特性の応用。眠たくなる時間まで加速させただけだから」


俺様は倒れたリィズに駆け寄った、

よく見ると、手足に切り傷がある。


外の森はいつの間にか暗くなっていて、そんな中を必死に駆け回ったんだろう。


「なんで俺様をそんなに……」


「その子、私が守らなくちゃって気持ちでいっぱいだったわよ?死にかけてた卵の貴方を魔法で孵化させちゃったんだって……」


「よく分かるな?……そうか……俺様、本当は卵の時に死んでたかもしれないんだな」


リィズは俺様を助けた、だから最後まで面倒を見ようとしたのかもしれない。


「優しい子だね」


ヴェスパーはリィズの身体を自分の膝に乗せて、頭を撫でる。


「なぁ……ヴェスパー、会ってすぐにこんな事頼むのも厚かましいが、コイツの傷、直したりできないか?俺様リィズを助けたいぞ……」


ダメ元でヴェスパーに尋ねる。


「いいよ!」


振り絞って言った割にはかるい返事が来た。


「は?いいのか?てっきり断られると思ったんだが」


「うん、全然大丈夫!そもそも話し相手になってくれたお礼に願いを一つ叶えましょ〜うってさっき言ったじゃん!あ、聴き取れなかったんだっけ、」


ヴェスパーがリィズの体に両手を添える。


「こんなに楽しかったの、数百年ぶりだよ?ちゃんと言葉が通じる人がいるって大切なんだね、本当に……


『再生加速』『物質腐敗加速』」


ヴェスパーの指先から光が溢れると、リィズの体についた傷や汚れが消えていった。


「ヴェスパー、お前いい奴だな」


「本当はね、魔将は人を助けちゃダメなんだけど、親友になれそうな貴方の頼みだからね」


「ここまでしてくれたんだ、もう親友だぞ」


「あら嬉しい!…………何これ?変な魔術だね、取り除くよ?ちょっと集中するね

『効能時間加速』」


ーーーーーーーーー


それから1時間ほど経過した、リィズは気持ちよさそうに眠っている。


「ふぅ〜疲れた……今の状態でこれは辛いかも」


「おい、大丈夫なのか?」


よく見るとさっきは目立たなかった大きな傷がヴェスパーの背中に浮かび上がる


「コレ?平気、平気!少し休めば治るって、まだ色々と喋りたいし!」


明らかに空元気だが、それよりも俺様はリィズのアザや傷が消えた事に嬉しさを覚えていた。


「それで?二人は……貴方はこれからどうするの?この子、奴隷なんでしょ?汚れも除去しちゃったけど」


確かにリィズの怪我や汚れ、かかっている魔法が消えたことでジバエに怪しまれるかもしれない。


だけど今はヴェスパーも弱っている様子だし、一旦、あのクソデブオッサンの所に戻った方がいいか。


「俺様はリィズと一緒に街を出たい、それにはヴェスパーの力が必要だ、だけど今お前弱ってるだろ?だから、街に1日だけ戻るぞ」


「そうだね、貴方の願いはリィズちゃんを助けることだから、まだ叶えてあげられてないもの」


ヴェスパーが優しい手つきでリィズを撫でると、突然、綺麗な目がぱちっと開いた。


「ん……あれ?私……え?なんで?」


「ピヨッ!(訳)喋れるようになったのか!」


どうやら舌も回復したようだ、だが喜んだのも束の間、リィズは怯えた声を上げる


「……ひっ!化け物!!」


まずい!意思疎通の方法を考えてなかったぞ

俺様があたふたしていると、ヴェスパーが触手を使って洞窟に文字を書き始めた。


『こんにちは、私はヴェスパー、貴方、文字は、読める?』


文字を見て恐る恐る、頷くリィズ


『良かった、実はね、そこの、コッコスの雛の、頼みで、貴方を、助ける、ことに、したの』


「私を?ヒヨコさんが?」


『そう、街を、一緒に、出ましょう、いい?」


「ピヨッ!(訳)リィズ!俺様に感謝しろよ!」


最初は困惑していた様子だったが、俺様の声を聞いて驚いた顔に涙が溢れた。


「え?え?……うん!……うん!いくっ!私、ヒヨコさんと……ヴェスパー?さんと……一緒に」


『ありがとう、だけど、それには、私の、体力を、戻さないと、だから、あと1日だけ、街で、我慢できる?」


「え?……でも」


不安なリィズの思いを共感覚加速で感じ取ったのか、ヴェスパーが触手で頬をくすぐる。


『大丈夫、魔法痕は、消した、好きなときに、逃げ出してきて?嘘が、バレないよう、気をつけてね、それと、入り口に、プチュの実、があるから、持って、行って』


色々な情報に戸惑いながらリィズは視線を洞窟の外に向ける。


「ほ、本当だ、あ、ありがとう、ヴェスパーさん!ヒヨコさんいこ!」


リィズは俺様をヒョイっと持ち上げて服に入れ、軽い足取りで洞窟を後にした。


「あっ待って!……行っちゃた、あ〜あ、せっかく名前、考えてあげたのになぁ」


ーーーーーー


「チッ……遅えなぁリィズの奴、シルバ様も帰っちまうし、これで果物を取ってこなかったら指切り落とすか……ってなんだ?!」


一階のカウンター席でジバエが愚痴っていると、店の入り口に見慣れない兵達が集まってきた。


「ここが予言にあった場所ですか?兵隊長」


「……そうだ、アルハイム殿からも話を伺っている」


尋常ではない様子に店をでるジバエ


「な、何ごとですかい?これは!う、うちが何か問題でも?」


「お前がジバエか……即刻、奴隷リィズの身柄を引き渡せ!」


「……兵隊長!店の横に隠れていました!」


一人の甲冑兵がリィズを羽交締めにし、兵の真ん中に連れてくる。


「いや!やめてっ!離して」


「なっ!リィズ、お前なんで喋って……」


するとさっきまでジバエに詰め寄っていた隊長らしき男がリィズを見下ろす。


「……まだ、子供ではないか……奴隷リィズ、お前を魔の力を生み出す者として、拘束する……連れて行け」


「やぁ、やだよぉ!!た、たすけてぇっ!!」


「ピッ、ピヨピヨピー

(訳)な、なんでこんな事に、リィズ」



最後まで読んでくれて、ありがとうございマッスル!面白いと思ったらリアクションしてくれると嬉しいです。

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