第80話 白星の正体、お前かぁあああ!?
「――ふふんっ。妾を貶していた愚か者共よ。これで思い知ったか?」
「……白星? 自分が有利に立てると思ったからって、急に喋り始めるなよ。今までの配信では、ず~っといじけて黙ってたのに」
〈ロリ銀狐様ぁあああ! ロリは宝!〉
〈結局ドッペルゲンガーは裏ボスって事で良いんだよな? Sランクダンジョンで生き抜いた『あたおか』が苦戦するドッペルゲンガーを瞬殺する最強の童貞剣とか〉
〈ドッペルゲンガーが致命的に『あたおか』と相性悪かったのもあるけどなw 自分と同じ強さとか、強くても苦戦必至だわ〉
〈刀を引くと金色になれるって事でおけ?w〉
〈↑パチンカスにしか伝わらんネタはやめろwww〉
〈ロリ銀狐様が御神刀の正体って事?〉
お、良い質問だ。
美尊の配信を乗っ取る形になっちゃったけど……。
美尊も気になるような目を浮かべているし、良いだろう。
実は俺も白星の正体について詳しく知らないから、教えて欲しい。
「ふふんっ。妾の正体について気になるか? 良かろう、教えてしんぜよう。先ほども申した通り、妾はかつて――人の世に災厄を呼ぶ大妖そう呼ばれし天狐である。今では幾十、幾百もの呪術者や修験者が打ったこの太刀にて――天心無影流の太祖が調伏して封じ込め、祀る事で荒神となった存在である」
うんうん、そこまでは俺も聞いた。
問題はその先よ。
「つまり、白星の正体は……ロリ狐だったの? 天狐なのに?」
「あ、あれは本来の姿ではない! 刀身だって全て解放されてなかったじゃろ!? それ故に……あの幼き姿を作り出すのみしか、妖力が練れなかったのじゃ!」
成る程ね。
不十分な力の解放によって出来たのが、あのロリ銀狐姿と言うことか。
あの姿でも、十分にとんでもない妖力を感じたんだけど……。
本来の姿になったら、どんだけヤバいんだ?
〈ハイ! 一体どんな厄災を巻き起こして封印されるに至ったんですか!?〉
おお、続けて良い質問!
「ふっ……。人は天災がある度に、神として祀る事でその荒振りを沈めようとしてきたのじゃ。妾の場合は――主に、不運じゃよ」
「……不運?」
「そうじゃ。妾を解放する条件とも合致するのじゃがな……。妾は存在するだけで多大な妖気を発し、あらゆる運気、神通力や魔素と呼ばれるものを――喰らう。妾を解放するには、妾の妖力を押さえ込める程に大量で高い純度の神通力が必須。故に生半可な神通力しか持たぬ者は、妾に触れることさえ出来ぬ。無理に触れようとすれば――吹き飛ばされ、災厄に見舞われるじゃろう」
ほうほう。
つまり俺が地上へ上がった初日、ギルドで多くの人を病院送りにしたのは、白星による厄災……祟りのようなものか?
存在するだけで人の運気や自然に存在する神通力や魔素を喰らうなら、退治されて当然だよ。
それって神通力の根本、自然の調和をぶっ壊しているんでしょ?
要は――人に仇を名す自然災害の根本的原因じゃん。
天地から栄養を吸い取り、必然以上の台風や地震、津波や水害に飢饉を呼び込む存在って……。
思った以上に、はた迷惑な存在だった。
〈鏡が一気に割れたのは、どうやったの?〉
「ふははっ! そ~んなに、妾に聞きたいか!? 良かろう良かろう、答えてやろうではないか!」
調子に乗ってるな~……。
狐姿で高笑いしてる姿が目に浮かぶようだ。
「あれはな――単に妖気を思いっ切り出しただけじゃ!」
〈ええwww〉
〈それだけであんなぶっ壊れるの!?w〉
〈なにこの妖刀怖い〉
「あの鏡も所詮は、ドッペルゲンガーとやらが魔素を加工したものであろう? 弱い魔素を加工した物なぞ、妾の妖気がドバァアアアンッと喰らい尽くしてしまうわ!」
実に愉快そうに、白星は俺の左腰の剣帯で揺れている。
ん?
待てよ……。
自分の周囲に居る人の運気を下げて、弱い魔素を加工したものなんて喰らい尽くす?
「ねぇ……。もしかして、だけどさ? モンスターのドロップアイテムが異常に落ちなかったり、美尊が今日イレギュラーに遭遇した不運とかってさ……。――白星、関与してる?」
「――えっ」
〈動き止まったwww〉
〈そう言えば! 『あたおか』の戦闘で異常にドロップアイテム落ちないのって運気吸われて喰われてた!?〉
〈食いしん坊ロリ銀狐とかご褒美過ぎるw〉
「ちっ、違うのじゃ! 今回、美尊がイレギュラーに見舞われたのは……。その、妾がコメント欄の悪意に触発され、怒気と妖気をまき散らしていたから関係あるかもしれんが! じゃが、ドロップアイテムに関しては――……ぁ」
はい、これは何か心当たりがある奴~。
言葉尻で、『あ』とか詰まったら、もう逃げられんぞ!?
「おい、白星? 嘘を吐かず、正直に言えよ? そうしないと帰り道、適当な鉱脈でピッケル代わりに使うぞ?」
俺が自慢の鞘を傷付ける事を仄めかして脅すと――左腰が濡れてきた。
汗が出てやがんな!?
「あの……。ドロップアイテムって、要は……魔石のように魔素を強固に凝縮した塊とも成れず、そのまま転がったモンスターの身体……。魔素の残骸な訳でのう? 低ランクで米カスのような魔素のアイテムならば……。封印されてても、持ち主ぐらい近距離なれば――無意識に喰らっても、おかしくないかな~なんて?」
「なんて、じゃないよぉおおおッ!? 本当に!? うわぁあああ~……。だからかぁ……」
〈ワロタwww〉
〈あたおか、不憫過ぎるwww〉
〈救世主からの急転直下展開でロリ狐様涙目w〉
思わずショックでしゃがみ込んでしまう。
通りでSランクダンジョンでも、視聴者が教えてくれた情報よりドロップ率が低いと思った!
Dランクダンジョンなんて、ゼロだよ!?
「あの……お兄ちゃん? 私も質問して良い?」
「美尊? 勿論、良いよ」
美尊は俺の大きなシャツを着て、身体を隠しながら片手を上げ――。
「もしかして、だけどね? モンスターのドロップアイテムを加工して作った私の装備も――食べた?」
「……ぁ」
そうだよぉおおおッ!
モンスターの魔素そのままに限りなく近い物質、ドロップアイテムを食べるんだろ!?
だったらそれを加工した装備も……。
だから美尊がこんな、あられもない姿に!?
「……黙秘権はあるんじゃろうか?」
「それはもう、答えてるのと同義なんだよぉおおおッ! うわぁあああッ! 美尊ゴメン、防具も槍もウチの白星が壊して……本当にゴメン! か、必ず弁償させていただきますから!」
俺はペコペコと、何度も美尊に向かって頭を下げる。
「良いよ。命には変えられないから。私はお兄ちゃんと白星さんに命を助けられた。装備は命を護る物、役目を果たしただけ」
「そうじゃぞ! 命を守れたのじゃから、多くを望むでないわ!」
「なんで白星はそんなに開き直ってるの!?」
〈マジかよwww〉
〈大草原www〉
〈とんだ溶刀でしたねw〉
〈いや、御神刀だろう。お陰様で俺たちは美尊ちゃんのお宝シーンを目に焼き付けられたんだからw〉
〈大神配信ありがとうございますwww〉
〈これは酷いwww〉
〈Cランク開拓者の中でも、美尊ちゃんの防具は抜群に性能が良かったよな? あれ全部オーダーメイドしたら千万超えるんじゃ……〉
〈これに関しては『あたおか』の債務に追加されても仕方ないと思うw〉
〈ここはポータブル基地局の範囲外っぽいから、ドローンから1個降ろして設置すればギルドから報奨金50万円ぐらい出るからさ……。返済の足しにしてw〉
「うおおおッ!? マジか! 直ぐにでも弁償したいのに、そんな大金なの!?」
「あの、お兄ちゃん? ダンジョン潜って最初に言ったけど、頂き物だから。……槍は自分でオーダーメイドしたけど」
「す、直ぐに返済できるように、お兄ちゃん開拓配信頑張ります! 本当にごめん!」
その後、俺が謝り倒し――今日の配信は終わりとした。
激闘の割りに得た物は少なく――成果物報告はなし。
唯、俺たち2人にとっては……大きな成果物を得る時間となった。
兄妹で仲良く過ごす事が、遂に認められたんだからね!
そうして地上へ戻り、泣いていたのか目を真っ赤に充血させている川鶴さんに迎えられた。
少し雑談をした後、寮へ帰る流れとなったのだが――……。
「俺は車、大丈夫です! 寄っていく所があるので!」
スマホを翳しながら、2人にそう言う。
「寄っていく所?」
「お兄ちゃん、夜遊び? 私も行く」
「違うって。遊びには、また今度行こう」
「……うん、分かった」
苦笑いを浮かべる俺を見て、何かを納得したのか――美尊と川鶴さんは、真剣な面持ちで頭を下げ、車に乗り込む。
走り去る車を見送った後、俺は――さっき、アポイントメントを取った人の場所へ向かう。
「スマホのナビによると、直線ルートは――……」
そう。
今回の黒幕の所だ。
俺は神通足で空を駆け――地上に来て目を覚ました、最初の建物へとやって来た。
1度来ただけだが、どの部屋かは覚えている。
ノックをすると――。
「――開いている」
凜とした声音で、そう返って来た。
俺は室内に入り、この部屋の主を見据えて――。
「そろそろ――種明かしの時間でしょう、姉御?」
そう尋ねる。
落ち窪んだ眼窩で炯々《けいけい》と光る瞳が、俺を捉えた――。
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