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第8話 雇われ社長兼マネージャー

「……オーナー。久しぶりの再会で嬉しいのは分かりますけど、待たせすぎですよ。私、忘れられてるのかなってドアの前で泣きそうでしたよ?」


「すまんな」


 姉御は申しわけ無さそうに苦笑している。

 え、姉御……俺と話すのが嬉しかったの? やだ、可愛い所もあるじゃない。


「……おい、向琉あたる。なぜ私の後ろに隠れる?」


「姉御……初対面の人、怖いです」


 見知った人と話すのでさえやっとなのに。初対面の人は……まだ無理。リハビリが必要!


「はぁ……。ダンジョンから出て来たばかりのように気絶しないだけマシか」


「あの……。大神おおかみさん、私はしがないやとわれ社長兼マネージャーの川鶴舞香かわつるまいかと申します。そんな……私なんかを怖がらなくても良いですよ?」


「……よ、よろしくおねがいします」


 自分でも驚く程、小さい声しか出なかった。

 川鶴さんは困ったように笑い、姉御に視線を向けている。


 姉御は俺の頭に手を乗せ――。


「――そう言えば、配信機材はどうする? 向琉あたるは準備する金が無いだろう。買い取りは高価過ぎて無理だが、リースレンタルなら私の名前と事務所へのツケで即座そくざに可能だ。配信機材のしは視聴者しちょうしゃの満足度に関わるが……安物にするか?」


「え、そりゃ悪い物より良い物の方で。折角せっかく、貴重な時間を使って視聴してくれるんですからね。最高の機材で楽しんで欲しいです」


 そりゃそうでしょう。

 配信という物はよく知らないけど、音とか映像が悪かったら見ている人だって嫌な気持ちになるはず。そんなのは嫌だ。


「……そうか。他ならぬ本人がそう望んでいる。川鶴、分かったか?」


 川鶴さんは頭が痛そうに額を抑え、小さく溜息ためいきをついた。


 やっぱり最高の機材なんて高望たかのぞみだったかな? そうだよなぁ、準備だって大変だろうし。迷惑をかけて申し訳がないなぁ……。


「……分かりました。直ぐに発注しておきましょう。それでは大神さん。外に車を用意しておりますので、乗って下さい。事務所へと向かいます」


「……え? 川鶴さんと2人で、ですか?」


「……すいませんが、私が担当マネージャーですから。当社に男性スタッフはいないですし、オーナは多忙です。どうか我慢して下さい」


「あ、姉御ぉ……」


「情けない顔をするな。公務こうむを全て片付け次第、私も直ぐに向かう。……10年間、人と接していなかったとは言え、早く人間に慣れろ」


 げない正論せいろん

 正直、怖いけど……。何時いつまでも情けなく震えている訳にも行かない。


 俺は川鶴さんと立派な執務室しつむしつを出て、車へと乗り込んだ。


 そして川鶴さんが運転席へ、俺が後部座席へと乗りこみ揺られる事、5分程した時――。


「――あ、大神さん。凍結とうけつされていた銀行口座ぎんんこうこうざ保険証ほけんしょう復旧手続ふっきゅうてつづきをしておきましたよ」


「え? ほ、本当ですか!? ありがとうございます!」


 後部座席なら直接目を合わせずに済むから、円滑に話せるみたいだ。バックミラーに映る川鶴さんは、絶対に見ちゃダメ! 話せなくなるからね。


「はい。他にも直ぐに暮らせる家具付きの寮もご用意してあります。マンションの一室を借りた職員寮ですが、棟が違うだけで妹さんとも直ぐ傍です」


美尊みことと!? 何から何まで、ありがとうございます!」


 この人――良い人だ!

 間違いなく、良い人だ! それに、出来る人だ!


「他にも不自由があったら、仰ってください。出来る限りの事はします。本日残りの予定は、この後に事務所で配信をするぐらいですね」


「……え? 配信?」


「はい。SNSを中心に、美尊さんと地底人の話題が広がっているんです。この話題がホットな内に、説明枠でも良いから開くのが大切です。ますは視聴者登録数を稼がないと、チャンネルの収益化しゅうえきかも出来ません」


「チャンネル? 収益化?」


「ええ。D.connectで個人チャンネルを開設かいせつするんです。放送して再生数やスーパーチャットでお金をもらうには、最低5千人の登録者が必須なんです。配信告知はもうしてあります。今から2時間ちょっと後ですね。台本も用意しますが、基本は私が司会進行をしますから」


 ヤバい、何語を喋っているのか分からない……。

 ま、まぁ――何とかなるっしょ!


 そんな軽い気持ちで流し、車は事務所へと着いた。

 どうやら看板を見るに、オフィスビルを2階分貸し切っているようだ。


 俺は配信の為の準備スペースを設営し、スーツへと着替えさせられた。ネクタイが結べず、川鶴さんに結んでもらったんだけど……距離、近いです。緊張します。


 そうして2時間後――その時は訪れた。

本作をお読みいただきありがとうございます┏○ペコッ


この物語に少しでもご興味を持って頂けたら……どうか!


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また、ブックマークなどもしていただけますと読んで下さる方がいるんだと創作意欲にも繋がります。


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