第69話 初兄妹コラボ配信! 案の定……
暫しギルドへの階段前で待機をして――配信時間が来た。
配信用ドローンは今回、2台。
しかし俺の方は配信を流さない為、ライト兼荷物台のようになっている。
美尊が操作するドローンのカメラが、美尊へと向き――。
「――皆さん、こんばんは。伊縫美尊です」
〈ワン!〉
〈ワン!〉
〈ミコミコチャンネル来たぁああああああ〉
〈今日もワンちゃんたち大集合www〉
〈コラボとか許せねぇ。マジなら大宮愛を襲撃する〉
〈マジでコラボすんの?〉
〈今日も美尊ちゃんがてぇてぇ〉
〈大神向琉とのコラボとか嘘だろ? 嘘と言ってよ……〉
〈10年振りに苦難を乗り越えた兄妹が仲良くするのに反対してるヤツらどんな神経しとるの?〉
〈悪いのは全部大宮愛。美尊ちゃんは被害者〉
〈兄妹仲良し配信が視たい。楽しみ〉
〈あ? アイドルが異性とコラボするとか裏切りだろうが〉
〈兄妹を異性扱いするのは流石にキモイ〉
美尊が配信を始めるなり、とんでもない量のコメントが流れて行く。
コメント、多過ぎるでしょ……。
視聴者登録数が多い美尊のチャンネルだから?
絶賛、大炎上中だから?
それとも――もっと別の理由?
「今日は『冥府行きのダンジョン』へのリベンジをします。前回このダンジョンに挑んだ時は、悔しいトラップに引っかかったので」
〈あれが悪夢の始まり。兄貴となんか出会わなければ〉
〈人の不幸を願うガチ恋勢マジキモいな〉
〈妹様ぁあああ! お兄様を地上へ誘って下さりありがとうございます! あとは私に任せて下さい〉
〈流石に被災者が戻れないのを願うのはヤバい。美尊ちゃんのお陰で地上へ帰れた兄貴を祝えないの?〉
〈あれで十分。今回もコラボする必要はない。そもそも、それだけ離れてれば他人だろうが〉
〈血の繋がった兄妹に他人とかwww〉
ヤバい……。
凄く出演しにくいコメントがズラ~っと流れてるんですが……。
「……今日は、一緒にパーティを組んでくれる人とのコラボ配信です。――紹介します。私のお兄ちゃん、大神向琉です」
「こ、こんばんわ~!」
竦んではいかん。美尊がプレッシャーに負けずに進行しているんだからな。
お兄ちゃんとして――むしろ、いつも以上に笑顔で行かねば!
「本日はこの『ミコミコチャンネル』にお邪魔します! 精一杯頑張るので、どうぞよろしくお願いします!」
〈は? マジできた。有り得ん〉
〈ざけんなボケ。大宮愛タヒすタヒスタヒすタヒスタヒすタヒスタヒすタヒスタヒすタヒス〉
〈推しアイドルが男とコラボとかまぢむり○リカするわ〉
〈↑リスカかと思ったらマ○カでわろた〉
〈事務所に電話繋がらん。メールで苦情入れても定型文の自動返信だし。大宮愛出て来いコラ〉
〈ガチ恋勢が兄貴へ本気で嫉妬してんのマジでキモいな。彼氏出来たらどうなんだろう〉
〈↑テメェアイドルに彼氏とか舐めた事を抜かすなよ?〉
「美尊の彼氏、だと?」
ピクッと、思わずコメントに反応してしまう。
「お兄ちゃん? いないからね、そんな人?」
「お、おう……。そ、そうなのか! 良かった~。いや、良かったのか?」
〈お兄様が過保護www〉
〈良かったってどういう意味だ? まさかあわよくば自分がとか思ってんじゃねぇだろうな?〉
〈どう考えても身内として変な奴に引っかかってない安堵だろw お前らみたいなヤバいやつが妹の彼氏だったらワイだって心配だわw〉
〈コメ欄がマジで地獄。批判しか出来ないの?〉
〈↑そう言うおまえも批判してるから同類な〉
何、このコメント欄……。
怖いわ……。
人の悪意が籠もってるというか……。
直接、面と向かっては言われないような悪意のある暴言が――匿名の場というのを利用して、平気で飛び交ってる。
喧嘩なんて、見ていて気持ち良いもんじゃない。
こうなるのを察していたのに、姉御はなんでコラボ配信なんて企画したんだろうか?
「と、ところで美尊? ワンちゃんってなんなの?」
「ワンちゃんは、私のファンの人たちが考えてくれたファンネーム。伊縫だから、犬をモジってワンちゃんらしいの」
「へぇ~、可愛いね! 昔は俺も同じ伊縫性だったのになぁ……。俺のチャンネルのファンネームなんて『あたおか』なのに……」
〈草www〉
〈ぁあああああ美尊ちゃんと男が仲良くしてるの見せられるとか最悪〉
〈兄貴を異性と思うエロゲー脳が殺到してるw〉
〈大宮愛出て来い。逃げてんじゃねぇよ!〉
〈↑実際に出て来たらAランク開拓者の武力で潰されますw〉
う、う~ん……。
小粋なオープニングトークで雰囲気を和ませようとしたけど……。
コメント欄が荒れてる……。
もっと一方的に俺が叩かれると思ったけど、思った以上に2人を擁護する声も多い。
俺のチャンネルから視聴者が流れているのか、或いは炎上騒動を聞いて来た初見さんなのかな?
それにしても、炎上が止まる気配はないなぁ……。
「オープニングトークはここまでにして、早速開拓に向かいます。お兄ちゃん、行こう」
「お、オッケー」
美尊も同じように、コレでは埒が明かないと考えたのだろう。
カメラへ背を向けてダンジョン奥へ足を進める。
端から批判するスタンスで視聴している人が多いからか、ダンジョンを進みながらも美尊の左手の腕時計からは物騒な機械音声が流れ続ける。
俺たちの仲を擁護する声、そして批判する声。
姉御を批判――いや、弾劾するような声。
どちらにせよ――聞いていて気持ちの良いものじゃない。
重苦しい沈黙のまま、ダンジョンを進み――。
「あ、ケンタウロス。お兄ちゃん、やろう」
「おう!」
馬と人間が融合したようなモンスターだ。
場所的には、2人で連携するのに十分な道。
コラボ配信を始めて初のモンスターに遭遇した――。
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