第56話 俺流、死霊系ダンジョンの攻略法!
やっぱり格好良い曲には――相応しいお披露目の場があると思う。
モンスターの群れと戦うというのは何度もやっているから……。
今回は――より緊迫感のある状況を作る!
唯の開拓者なら、進んでリスクを犯すのは変だけど……。
俺は――『アイドル開拓配信者』だから。
エンターテイメントを盛り上げる為に、歌唱力という華がないなら――自分で盛り上げる舞台を作り上げて、身体を張らなきゃ!
ダンジョンで、俺だからこそ出来る、俺なりの披露をしてみせる!
「Dランクダンジョンとモンスターも違うでしょうが……。既にモンスターの群れとは食料庫で何度も戦ってます。それでも皆が盛り上がるような枷を自分に課した配信を目指します! どうぞ、その瞬間を楽しみにしてください!」
〈いや普通にやってくれ! あたおかは不憫被害者なんだから!w〉
〈プロ意識は買うけど命を大切にしろ! 他の開拓者が真似するだろ!〉
〈あたおかならやれるって期待してる!w〉
〈頑張れよ! 無理そうなら批判怖れずに止めろ!?〉
〈批判されるべきは無理な制作をした大宮愛を中心とするシャインプロだから〉
〈でも確かに、アーカイブ視てれば何度も数十体のモンスターと戦ってるしな〉
〈異常に慣れた故か……w〉
コメント欄も賛否両論だけど……。
自分でやると決めたからには――貫く!
「え~それでは進んで行きます。とある協力者からの情報によると、このダンジョンは全3階層。出るモンスターは死霊系や悪魔系の下位モンスターが中心だそうですね」
〈ちゃんとダンジョンの下調べしたのか! 成長してるwww〉
〈協力者ナイス!〉
〈無料でダンジョンの情報を提供するとか神か?w〉
配信で頻繁に流れるダンジョンの情報は、ネットを丁寧に探せば手に入るらしいけど……。
開拓学園の教本には、無数にある個々のダンジョンに関しての詳細情報までは載ってない。
ダンジョンの詳細な構造や出現モンスター、攻略のポイントなどの情報はギルドで有料販売されている。
まだ配信が無かった頃にギルドから開拓者へ依頼を出して集めた情報を纏めた物で、それが運営資金の足しになっているらしいけど……。
俺には、死霊系モンスターより強烈な呪いを発っするような絵を描く――協力者がいる。
その協力者……姉御の名前は出さないけど。
姉御の名前は、出すだけでコメント欄が荒れるから……。
飯テロ配信でも分かったけど……。
姉御は分かりやすい悪役――役なのかマジなのかは分からないけど、悪人として世間に嫌われている。
そのお陰で被害者として世間に早く受け入れられた俺としては、凄く複雑な気持ちだけどね……。
炎上している時は、何をしても火に油だと言う。
多分、ここで姉御が情報をくれたとニコやかに言っても『それぐらい当然』とか荒れるんじゃないかな。
俺が姉御の件に言及する事で、更に燃え盛って俺のコンテンツが炎上マーケティングとして議論を呼ぶ事を――姉御は見越していたのかな?
だとしたら……悔しいなぁ。うん、悔しい……。
兎に角、今は――美尊との仲同様、無闇矢鱈に『姉御』という燃料を投下しない方が良い。
今日のメインは、イメージソングのお披露目なんだから。
〈お? あたおかも緊張した表情〉
〈流石にランクが上がったから警戒してるのか?〉
〈死霊系って光属性の魔法が無いとランクもっと上って言われるからな。光属性魔法を使えれば弱いだけで〉
〈飯テロで光る石を使ってたから、あたおかも光属性使えるだろw〉
前に回り込んだドローンが写す俺の表情を視て、緊張していると勘違いしてる人がいるけど……。
違います。
これはム~ッと思い悩んでいる表情です。
「お? 発見しました!」
片手剣と盾を持つ白骨のモンスター、スケルトンだ。
「素晴らしき情報提供者様によると……このダンジョンに出てくるモンスターは、このスケルトン。そして魔法を得意とするキョンシーや、ワイトと呼ばれる死霊モンスターが主だそうですね」
〈スケルトンだ! 初めて見た!〉
〈配信としても死霊系はグロくて人気ないからなwww〉
〈うわ、骨リアル……。グロ〉
姉御がくれたレポートに書いてあったけど――。
「――死霊系モンスターには光属性の魔法が有効。物理は無効で、他属性の魔法は微弱な効果です」
〈あたおかぁあああ! 剣来てる来てるぅううううううう!〉
〈どうせもう死んでるんだろ? いや死霊だからじゃなく魔石を抜き取ったって意味でw〉
〈最初の再現か!〉
いやいや、魔石はまだモンスターから抜き取ってない。
動きを見極める勉強として、ギリギリまで剣を引きつけ――肌を滑らせるように最小の動きで避ける。
「……よし、イケるな」
ランクが上がって警戒していたけど……。
途中で剣の軌道を変えるような技もない、単調な攻撃のようだ。
〈おぃいいい! 生きてるじゃねぇか!〉
〈あたおか、物理攻撃無効化されてるんじゃね!?〉
〈そうだった! 地底人は武術家じゃん! 俺開拓者だから授業で習ったけど、死霊系って物理無効だぞ!?〉
〈マジかよ!? もっと早く情報出せよ!〉
〈あたおか光属性の魔法で戦え!〉
スケルトンの動きは単純と分かった。
このレベルのモンスターばかりなら――まだまだ余裕がある!
「今日、光属性魔法は――使いません。あれは苔を生やしたり視界を確保してくれるだけで十分です」
〈いやいや違うってぇええええええええ!w〉
〈使えよ、正しく使えよぉおおおおおおおおおおおお!www〉
〈体勢を整えてまた来るぞ!〉
斬撃を躱されたスケルトンが、剣を突きだしてくる。
その鋒を躱し、俺は――。
「――死霊系に最も有効なのは、神通力です」
神通力を込めた掌底で、スケルトンの身体を巡る魔素ごと叩き割る――。
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