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第53話 公式イメージソング!?

 俺の公式イメージソングをリリースする?

 え、それって……俺が歌うって事?


 そうだよね。俺をアイドル売りするとか言ってたし……。アイドルと言えば、うたっておどってなんかキラキラしてる存在だと思うから。


「――お断りします!」


 全力で、土下座しながら言い切った。


 限りなく強い口調で!

 土下座の姿勢は――相手が引く! ドン引く!

 これで勘弁してくれるはずだ!

 他のアイドル活動は良い。

 だが、なんとしても――俺は歌からだけは逃げる!


「え!? ど、どうして土下座するんですか!?」


「すいません! 歌だけは勘弁してください!」


「そんなに土下座して嫌がる程にですか!?……い、いえ、歌が苦手な方に無理をさせるのは、私も本意ではありません」


 おお、流石は川鶴さん。

 分かってくれたか!


「でも――今は多少は音を外していても、機械でなんとでも出来るんですよ?」


「……そ、そうなんですか?」


「はい。ライブイベントでも、音源をスピーカーで流してアイドルは口パクをするのが当然ですから。……激しいダンスを踊りながらまともに歌うなんて、普通は出来ないですからね?」


 そ、そうなのか!

 それなら……いけるのかな?


「オーナーは多分……大神さんが歌を嫌がるとさっしていたんでしょうね。大神さんが地上に上がるなり直ぐ、有名な作曲家さっきょくか超特急ちょうとっきゅうで作曲を依頼いらいしていたんですよ。それも――ボーカロイドが歌う曲で」


「ボーカロイド……。コンピューターで歌声うたごえ合成ごうせいしてくれる技術ですよね? サンプリングされた声優さんとかの声を使って……。え、つまり俺は、歌わなくて良いという事ですか!?」


 思わず、顔がゆるんでしまう。

 嫌な事から解放されると分かると、パァアアアッと心からの笑みが浮かび出るもんなんだなぁ。


「い、良い笑顔の所を申し訳ないんですが……。出来れば、歌っていただけたらなぁ~と」


「え、えぇ!?」


「安心してください。その為にこの後、作曲家の方やボイストレーナー、収録担当の方々とリモート会議をしますから。その分野に関するプロの方々と一緒に、ちゃんと話し合いましょう?」


「で、でも……。俺、本当に音痴おんちで……」


 中学校の卒業式の後――クラス会でカラオケへ行った時の惨劇さんげき脳裏のうりよみがえってくる。

 俺がマイクを持って歌い始めたら、直ぐさま皆がドリンクバーやトイレに消えて行った。

 あのカラオケルームに1人取り残されるつらさと言ったら無い……。


 ポンッと、肩に手を置かれる感触がした。

 顔を上げると――まるで聖母せいぼのような慈愛じあいを感じさせる川鶴さんのほがらかな笑みが目に映る。


「――大神さん。つらい事を話して下さり、ありがとうございます。……そういう人の為に、レッスンのプロがいるんです。ずは聞いてもらいましょう? 諦める前に、チャレンジをする勇気を持って下さい。チャレンジしてみてダメなら、私も可能な対案たいあんります。……私にも、マネージャーらしい事をやらせてください」


「川鶴さん……」


 優しすぎてヤバい。

 なんだろう、包み込まれると言うか……。

 これが母性、なのだろうか?


「私はまだ24歳と未熟みじゅくなので……。大神さんも不安に思うかもしれませんが、今日参加される方々は全員、あのオーナーが頭を下げてまで声をかけた、超一流のプロばかりです。その皆が、大神さんに成功して欲しいという方向で動いています」


「…………」


 どうしよう。

 凄く良い事を言われた気がするんだけど、動転どうてんして頭に入って来なかった。


 え?――川鶴さん、俺の1個年下なの?

 うそぉ……。

 えぇ……。

 こんなしっかりした人が、年下?

 完全に30歳前後だと思ってた……。


「こんなに冷や汗をかいて……。歌に強い苦手意識があるのは、痛い程に理解しました」


「……ありがとう、ございます」


 歌に苦手意識があるのはそうなんですけど、このあせは――年齢を勘違かんちがいしていた衝撃しょうげき事実じじつからにじてるんですわ。


 ちょっとタイム。タイム下さい!

 現実を受け止める時間をください……。


「大神さん?」


「ひゃい!」


 ヤバい、声が裏返った。


 あ、でも――川鶴さんは慈愛じあいみを浮かべてる。

 俺が歌うのに緊張して声が裏返うらがえったと、勘違いしてくれてるのかな?

 本当は実年齢の衝撃しょうげきで声が裏返うらがえったんだけど……。

 不要な事は、口にせずとも良いだろう。――好都合こうつごうだ!


「私はマネージャーとしても人間としても、まだまだ未熟みじゅくです。……でも、大神さんのサポートを全力でしたい。だから――サポートさせてください。お力になれることがあれば、なんでも言ってください。できる限りの事を、させて欲しいんです。唯でさえ、シャインプロは大神さんを追い詰めているんですから」


「川鶴さん……。ありがとう、ございます」


 なんだろう……。

 地上に上がってから出会った人の中で唯一ゆいいつ、この人と一緒に居たいと思える人に出会えた気がする。

 人間の温かさって言うのかな?

 川鶴さんが俺の為に頑張ってくれるんだったら――俺も、粉骨砕身ふんこつさいしんこたえたい。

 好意のお返しをしたい。


「大神さんは……アイドルって、なんだと考えていますか?」


「えっと……。歌って踊ってキャーキャー言われるイケメンや美女?」


 俺が知っているテレビで見たアイドルは、おおむねそんな感じだった。

 ドラマとか旅番組に出ている時は、演技力や面白さなどのキャラ立ちを売りにしてるアイドルもいたと思うけど……。


 基本的に皆、華やかでキャーキャー言われる人なイメージ。


 俺なんてアレですからね、ダンジョンで美尊みことを抱えてる時の姿――完全に人類が進化する途中状態でしたから。

 俺の知る、垢抜あかぬけてきらびやかなアイドルとは――似ても似つかない姿と言うか……。

 まぁ姉御が髪を切ってくれてからはプラチナ色の髪が綺麗だなぁ~とか、鏡を見て思ったりもするけどさ。


「間違ってはいません。アイドルは人を熱狂させて、キャーキャー言われますから。でも――1番は、偶像ぐうぞうなんです」

本作をお読みいただきありがとうございます┏○ペコッ


この物語に少しでもご興味を持って頂けたら……どうか!


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また、ブックマークなどもしていただけますと読んで下さる方がいるんだと創作意欲にも繋がります。


どうか、応援とご協力お願いします┏○ペコッ

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