第5話 姉御ぉおおお!?(2)
「そんな事が言いたい訳ではない!……10年前、未曾有の災害が世界で起きた。それがダンジョンの出現だ。私は今、努力してこの日本をダンジョンの災害から守りダンジョンと共に発展していく組織の長官をしている。同時に世界へ向けてダンジョン内は未知ではない、夢と発展への希望が詰まったフロンティアである。私はそう世界へ発信するべくダンジョン配信者やアイドル、イベント運営を手がける事務所のオーナーになった」
「……すいません、概要は分かったんですけど……。今度は簡潔過ぎて分かりませんでした」
「あ!?」
「す、すいません!」
兄弟子、誰か……。誰かいないんですか!? 姉御から守って下さい!
これならダンジョンの中で巨大なモンスターと戦ってる方が怖くないよ!
「……いや、すまん。私が端折り過ぎたか。仕方がないな」
「本当に、アホの世間知らずで……すいません」
「良い、私も少々、こうよ……動揺しているのだ。……発端は、向琉も知っているだろう。世界を襲う地揺れ。それと同時に、各地で地下深くへと通じて行くダンジョンが誕生した。異形のモンスターもな」
「…………」
「異界と繋がる言われるダンジョンの出現は、多くの家屋、人を地中へと飲み込んだ。銃火器すらまともに通じないモンスター。私たちのように、古くから異形の物と戦って来た者を中心に戦い……気が付けば、モンスターは地上からダンジョンへと帰って行った。まるで所定の人命を狩ったのかのように、世界で一斉に、アッサリとな」
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
「なんだ?」
今、聞き捨てならない言葉が聞こえたぞ!?
当たり前のようにサラッと語ってたけど!
「私たちのようにって……。まさか、天心無影流の事ですか?」
「……は? 師範は、それすら貴様に教えてやらなかったのか?」
「実質、破門されてましたからね、俺は」
「……それも優しさ、か」
「え?」
指を組みながら、姉御はフッと儚げな笑みを浮かべた。
なんだろう……。優しさ? 俺としては、疎外感ばっかりだったんだけど……。
「なんでもない。……その通りだ。あくまで誰に知られる事もなく魑魅魍魎を退治、調伏する……それが私たちの在り方だった。時代と共に表から忘れられ、金にもならないボランティアのような役割だったがな」
「確かに、みんな金に困ってましたもんね。水道水で腹を満たしたり……」
「……それは否定が出来んな。その反動で私は今、金を得る為に必死な訳だから」
「……すいません、話の腰を折りました」
「ああ。兎に角、人々が災害で打ちひしがれ、魔力や神通力という超常的な概念を認めざるを得なくなったのが10年前。それら魔力などはウイルスのように散らばり、世界各地で覚醒者と呼ばれるモンスターと対峙する力を持つ者を生み出した。概ね、50人に1人ぐらいの割合だな」
「意外に多いですね」
「ああ。世界には約1億5千万人の覚醒者――今では開拓者と呼ばれる者がいる。ダンジョンを開拓する者という意味だな」
「成る程?」
「新たな力を得た人類は、3年の歳月でダンジョン生物や発掘される鉱物や金属、モンスターの素材を調査した。そしてそれらが未発見にして産業転用可能な資源、高度で利便性の高いエネルギー資源だと判明したんだ」
「ほうほう?」
「それから7年をかけて技術転用し、新たなエネルギー源採取地、エンタメコンテンツにまで仕立て上げた。今は軍事利用や更なるダンジョン開拓にばかり技術が発展しているが、安定した採取と研究開発で、生活レベルに恩恵が及ぶのは時間の問題とされている」
「はぁはぁ?」
「かくして、ダンジョンというのは国策としての新エネルギー確保や軍事力拡大、果てはエンタメコンテンツとして支援を受けることになる。人類がいかに外交で安全を確保しようとしても、ダンジョンが繋がっていたとされる異界は待ってはくれない。前回を上回る未曾有の災害が来れば、老若男女関係なく滅びの危機に晒されるのだ。そんなフロンティアに潜る者たちのことを――人々は開拓者と呼ぶようになる」
「それで?」
「……それで?」
「あ、いや……すいません!」
「貴様、途中から聞いて居なかったな!?」
「だって姉御、話が長いし! でも要点は聞いてたし、疑問にも思いました!」
本当に姉御、話が長くて硬いんだもん!
全然頭に入って来ないし……聞き流してましたよ、そりゃあね!
誰でもそうでしょう!?
もしこの話を文章化したら、みんな流し読みで内容とかすっ飛ばしますよ!
「ほう、何が疑問だ、言って見ろ! ちゃんと聞いていたなら、言えるだろう!?」
「あの、その……。開拓者の管理とか、どうしてんだろうなぁ~、兵器より強いとかヤバくないかなぁとか! なんでそんな、人から怖れられそうな物がエンターテインメントになるのかなぁとか!」
「ほう……。良い眼の付け所だな。私の話を聞き流していた事は、不問にしてやろう」
「ありがとうございます!」
あっぶねぇえええ!
姉御を本気で怒らせたら……。
ヤバい。昔しごかれて、魂に刻み込まれた恐怖が蘇ってくる……。
本作をお読みいただきありがとうございます┏○ペコッ
この物語に少しでもご興味を持って頂けたら……どうか!
広告の下にある☆☆☆☆☆でご評価や感想を頂けると、著者が元気になります。
また、ブックマークなどもしていただけますと読んで下さる方がいるんだと創作意欲にも繋がります。
どうか、応援とご協力お願いします┏○ペコッ