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第42話 相談枠編(2)姉御を訴えたら?

 姉御あねごうったえたらどうか、という……もはや相談と言うよりもアドバイスをくれるようなコメントが目に入る。


「――いやいや、あやしくても訴えないですよ。俺は姉御に地上での居場所をもらいましたから。……姉御は、昔から勘違かんちがいされやすい……いえ、違いますね。勘違いされるように仕向しむける人なんですよ。人にも厳しいですけど、自分にはもっと厳しい。人に厳しくする言動の裏には、何か思惑おもわくがあって……それは必ず、誰か大切な人の笑顔に繋がる事なんです。実は自己犠牲じこぎせいいとわない立派な人で、本当の意味での優しさを持つ人なんですよ?」


〈へぇ~……。Aランク開拓者として鬼神のような強さの姉御しか知らんわ〉

〈そもそも大宮愛は引退直前しか開拓配信してないからな。記録がほとんどない〉

〈同じ道場で修練している時の大宮愛ってどんなだったの? 大宮愛の強さの秘訣ひけつは?〉


 話が段々と――俺自身や周囲に居る人の事へと移って行く。


 しゃべって良い個人情報とそうでない事はしっかり選別せんべつしないとな~。

 俺自身の情報ならかく、人には言われたくない話もあるだろうから。


「姉御は師範代しはんだいとして、いっつも師範――ジジイと喧嘩してましたよ。……ウチのジジイが俺に残した遺言ゆいごんが『人の世に生き、人に愛されろ』だったんですけどね。姉御にはず~っと、同じ事を言ってました。だから姉御は、地域の人たちと交流を持たされてましたね~。公民館こうみんかんとかで武術ぶじゅつ護身術教室ごしんじゅつきょうしつがあるじゃないですか? あれの講師を任されて……子供の相手をする時はセロハンテープで作ったような笑顔で指導してましたね。福笑ふくわらいのお面みたいな笑顔でしたよ?」


〈草www〉

〈それは、なんてヒドいスパルダだw〉

〈姉御が子供に囲まれて困ってる様子を想像したら、ダメだこれはw〉


「姉御は修練も凄かったですよ? 夜も寝ずに、俺の寝込みに気配無く攻撃をぶち込み。朝早くから山々を往復するような鍛錬たんれんを一緒にして……。疲れ果てた俺や兄弟子のすきを狙い休まずに攻撃をぶち込み。破門同然はもんどうぜんで隠れて修行している俺に休憩時間きゅうけいじかんを使って攻撃をぶち込み。……皆と同じかそれ以上にキツい鍛錬をおのれしているのに、姉御には隙が無いからやり返せないんですよ。うちの流派がくちっぱくして教える常在戦場じょうざいせんじょう体現たいげんしたような人でした。だからこそ常にかまえてしまい、人の世で笑って生きる事とのバランスに難儀なんぎしている感じでした!」


〈ナニソレ、虐待ぎゃくたいじゃん〉

〈えぇ……厳しい。でも武術の修行ってそういうもんか?〉

〈漫画知識だけど、内弟子うちでしに人権はないって学んだ。あたおかも、そうしてあたおかになったのかw〉


 内弟子に人権はない、か。

 人権を何処どこから定義するかによるけど……。


 きるための強さと、他者を守れる為の強さを得る為に、心を鬼にしていたと思うから……。


 人権はあったんじゃないかな? 人として生きる為の行動だしね。


 まぁ霊山れいざんあるき、走り、厳しい環境で死ぬような思いをしても助けが来ない。


 むしろ追いこまれた時こそ冷静に自然と一体化して活路かつろを見出す。世界に感謝して高次元こうじげんつうずるチャンスに恵まれて良かったな!


 こんな教えが続く修行を3歳児に叩き込むのを虐待ぎゃくたいとらえるか、優しさと捉えるかは意見が割れそうだなぁ~。


 今の姉御は……配信中に態々《わざわざ》出演して俺の借金を公言こうげんしたり、電話をかけて借金を衆目しゅうもくの前であおったりと――視聴者や世論のヘイトを、全て自分に集めているように感じる。


 それは俺にとって――酷く悲しい事だ。


「ちょっと調べたんですけどね……。多分、今の姉御は――俺が自立した生活を出来るように、強引な手段を使って環境と試練を用意してくれてるんですよ」


〈昔は知らんけど、今はそんな心優しくないだろw〉

〈は? 政府の高官こうかんくせ救済きゅうさいもせず被災者を追い詰めといて?〉

〈借金62億円を被災者に背負わせといて自立も何もない〉


「ん~……。借金は、本当にあるのかすら分からないんですよね。……だって姉御から口頭で言われただけで、請求書せいきゅうしょすら渡されてないんですから。返済期限へんさいきげんどころか、月々《つきづき》の返済額へんさいがくすらも決まってないんですよ? 杜撰ずさん奇妙きみょうぎるでしょう。世間知らずの俺でも、本当に超高額の借金があるとしたらおかしい、天引きだけでは甘過あますぎる対応だと分かります。普通は決められた金額の返済がとどこおれば、金融業者きんゆうぎょうしゃに追われるでしょうからね」


債務者さいむしゃの先輩としては確かに有り得ないと思う〉

〈あたおかの配信ちょくちょく債務者が湧くなw〉


「稼ぐ金額ノルマすらないとか、あり得ない甘さです。姉御は多分……もし本当に借金があったらって、俺が必死になるようけてるんだと思うんですよね~」


〈大宮愛の事を妄信もうしんしてない? 危ないよ、その思考は〉

〈いやいや、それは好意的に解釈かいしゃくし過ぎ。やってる事は普通に詐欺同然さぎどうぜんだからな〉


「……地上に戻った後、俺はすぐにお金を得る方法と衣食住いしょくじゅうに困らない自由な環境が提供されました。保証人ほしょうにん貯蓄ちょちくもないのに、すぐに暮らせる文化的で自由な環境が用意されていたんです。――姉御が全部、用意してくれたんですよ」


〈仮にもダンジョン庁の長官なんだから、被災者の支援は当然だろ。むしろ金をしぼるのがおかしいって〉

〈普通に生活を保護される方法なんて他に一杯あったじゃん。金儲かねもうけの道具としてだまされてるだろ〉


美尊みことも寮に暮らしていることから分かるように……俺たちの保護者も居なければ、生家も道場もすでにないんですよ。……政府せいふとか行政ぎょうせいに保護されたとしても――長年ダンジョンで生活してたから検査名目けんさめいもく長期入院ちょうきにゅういんとか、施設監視しせつかんしとかされたんじゃないですかね? 多分、姉御は――難癖なんくせに近い借金と権力を使って、無理やり自分のそばに俺を置いたんです」


〈え、姉御の思いやりって事?〉

〈それは陰謀論いんぼうろんと言うか願望がんぼうに近いだろ。流石に被災者が奇跡の生還したなら手厚く保護されるはず〉

〈いやいや有り得るだろ。いきなり『はい、ご自由にどうぞ』なんて野放のばなしにして良い存在じゃないと思う〉


 姉御が俺にした処遇しょぐうに関して議論が巻き起こっているけど……。

 その中に1つ、俺と意見が一致いっちするコメントがあった。


本作をお読みいただきありがとうございます┏○ペコッ


この物語に少しでもご興味を持って頂けたら……どうか!


広告の下にある☆☆☆☆☆でご評価や感想を頂けると、著者が元気になります。


また、ブックマークなどもしていただけますと読んで下さる方がいるんだと創作意欲にも繋がります。


どうか、応援とご協力お願いします┏○ペコッ

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