第32話 2回目配信!え、深夜枠?(4)異常事態
「――はっはぁあああッ! そこッ! 隙だらけッ! 甘いッ!」
戦闘による昂揚で冷静さを欠いてはいけない。
多人数相手に大ぶりは厳禁。
ジジイに道場へ入れてもらえなかったから、書物と住んでたダンジョンでの実戦による偏った知識だけどね。
小さな動きで相手の急所を狙い――ピッケルの力が集約する部位に神通力か魔力を込めて、突き込む!
〈ピッケルはそうやって使うもんじゃねぇwww〉
〈岩掘れよなんでモンスター掘ってんだよw〉
〈ピッケル無駄にならなくて良かったなw〉
〈やっちゃえバーサーカーwww〉
〈おお神配信、始まったぁああああああ〉
〈このスプラッタは深夜枠で正解w〉
なんかコメント欄から突っ込みが聞こえるけど……違うんだよ!
別にバーサークしているとかじゃない。
この動きも天心無影流の武技にはあるんだって! 本当に!
「皆さん、勘違いされてるようですけど、天心無影流は武器を選びません! ピッケルを己が身体の一体化させて最善の動きをしているんです! 遠心力を利用したりもするからバーサークに見えるだけです! 本当なんですよ、信じてください! 決してご乱心じゃありませんからぁあああッ!」
〈言い訳に必死だw〉
〈きんもちぃいいいいいッ!〉
〈地底人目線のVR慣れて来たぁあああ最高に爽快だぜぇええええ〉
〈そうですね、これは死のダンス。阿鼻叫喚の歌、地下アイドル(笑)活動ですよねw〉
〈モンスターを上司か鬼嫁と思ってVR視聴すると最高〉
〈奇遇だな、私はクズ旦那とモンスターを重ねてる〉
あぁ……。信じてもらえない。悲しいなぁ。
昨日は戦闘をダンスにするの、良いアイディアだと思ったんだけど……。
ちょっと他のアイドル活動とは様変わりしているからか、小馬鹿にされてるニュアンスだぁ……。
ま、まぁ俺は開拓者配信を頑張るし? 兎に角、ドロップアイテム量産を狙ってモンスター殲滅周回コースだ!
武の舞をエンタメ要素として昇華させる方法は、また考えよう!
「――よっし、殲滅完了ですッ! ドロップアイテムは……無い! まぁ、たかが数十体じゃ確率的にそうですよね! 次は高ドロップ率と噂のボス、ミノタウロスに行きます!」
〈ボス逃げてぇえええ超逃げてええええwww〉
〈1個もアイテムドロップ無し!? やばw〉
〈運が悪すぎだろw〉
〈休憩無しでボスとか、他の真面目にやってる冒険者が泣くぞw〉
〈コイツ、堅実な積み重ねがキャッチコピーのシャインプロ所属じゃなかった?w〉
〈よっぽど旭プロっぽいよなw〉
なんの話か分からないけど、コメント欄が盛り上がっているようで良かった!
よし、何往復でも周回してやろうじゃないかッ!
待ってろ、高換金率アイテム!
俺が今、ドロップさせに行くからな――。
「――……あの、もう既に5周ですよ……。ミノタウロスもモンスターの群れも5回殲滅したんですけどね? 多分、モンスターは150匹ぐらい倒したと思うんですよ。なのに――まだドロップアイテムが1つも出ないって……。俺のやり方が悪いんでしょうか? 誰か助けて……。視聴者さんの中に、有識者様はいらっしゃいませんか?」
5匹目のミノタウロスを討伐し終えたのに何もドロップがなかった事で……俺は視聴者に助けを求めた。
なんで?
確率1パーセントだとしてもさ……ドロップが0は、おかしいじゃん?
しかもボスモンスターは高ドロップ率じゃなかったの?
正直、泣きそうです……。打ちひしがれてますよ、俺。
〈あり得んレベルの確率だろw〉
〈マジ普通ではあり得んレベルに運が悪いw〉
〈10パーセントは落ちるとかコメなかった? パチスロの継続率より信憑性がない情報だったなw〉
〈これは真剣に倒し方が悪いとか?〉
〈素手だと出ない説?〉
〈いや、前に身体強化魔法で殴ってアイテムドロップさせてるの視たから、それは無い〉
〈ってか、配信時間大丈夫? そろそろ日付け変わるよ? 予定だと24時までになってたけど〉
あ、そうだ。
夢中になり過ぎて時間を忘れてた……。
ヤバい、このままじゃ今日は3万円プラスピッケル代のマイナスだよ!?
でも決められた配信予定は守らないと、川鶴さんに迷惑をかけちゃうしなぁ……。
「そ、そうですね。今日の配信は終わらないと事務所に迷惑をかけてしまいますから。戻りますか。……収益化ってのも、まだ申請が通ってないんですかね?」
〈通ってないな〉
〈スパチャできんもん〉
〈遅れてんのか?〉
〈姉御しっかり!〉
〈合成疑惑で精査されとる説〉
〈あり得るw〉
どうやら収益化申請も通っていないらしい。
仕方ない。明日巻き返す術を探そう……。
川鶴さんが頭を捻り考えてくれた配信予定は崩さないようにしないとな。シャインプロでこの後に配信する人が居たら、甚大な迷惑をかけてしまう。
俺は24時へ間に合うようダンジョン出入り口への階段がある広場へとダッシュで戻る。
「はい、それでは今日の戦果コーナーですが……」
ドローンに積まれていた収納箱を取り、蓋を開き――。
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