第26話 side トワイライト(2)
「よし! いつも通りにやるよ!」
比較的広くて連携も取りやすい場所だ。
前衛の深紅が突っ込み、シールドで攻撃を受けながら片手剣で削る。
私は隙を突いて槍で攻撃し、涼風は敵の嫌がる魔法と弓でサポート。
それがいつも通りの基本戦術。
「はぁ!」
深紅が堅実に敵の攻撃を受け、少しずつ削って行く。
ラミアは蛇の胴体に人の身体という、大型が多めなモンスターの中では狙いにくいサイズだ。
槍使いの私としては、ラミアの動きが鈍らない限りは深紅に引きつけられて出来た隙を見て――。
「――はっ!」
突き技に限る。
胴体に深々《ふかぶか》と槍が刺さったラミアだけど――そこに急所である魔石は無いのか、なおも暴れまわる。
狭い場所が多いダンジョン内で薙ぎ払いは使える広さが限られている。
もっと広い空間なら技の幅も広がる槍だけど、ここは突き技を選択すべき場所だ。大したダメージにならなかった様だけど、強引に引き抜いて何度でも突き技を放つ。
でも――。
「しゃがんで!」
「了解!」
私のかけ声に深紅は身を低くし、ラミアは――急に横から薙ぎ払われる私の槍に吹き飛ばされる。そのまま顔が壁にその身が埋まるぐらい。
勢いを付けて薙ぎ払う事が出来たのは、深紅がラミアを洞窟の端に誘導してくれたお陰だ。
リーダーとして深紅は、パーティ全体の力が高まる効率の良い立ち回りをしてくれる。
「美尊、ナイス連携!」
「ありがと」
こうして上手く連携を取れる辺り、私たちは良いパーティだと思う。
顔部分が壁に埋もれたラミアは――長い蛇の尾を振り回している。動きが読めない分、さっきより厄介だ。
考えなしの苦し紛れの行動かと思ったけど――的確に天井や側壁の岩を砕いている。
「距離を取るよ!」
「うん」
バッと後ろに飛び退く。
高ランクで知性のあるモンスターは、こういう所が侮れない。
〈落盤から逃れた〉
〈気持ちの良い連携〉
〈深紅ちゃん身体は小っこいのに可愛い〉
〈美尊ちゃん冷静!〉
そのまま距離を詰めて戦い続けていたら、私たちは落ちてくる岩でダメージを負っていただろう。
でも――。
「――グラビティ!」
魔力を練っていた涼風が、重力魔法を発動してくれた。
対象の感じる重力を上げ、動きを鈍らせる闇魔法。
涼風が本来得意とする魔法ではないけれど、瓦礫にその長い胴体が埋もれている今の状態なら、効力の高い魔法でなくても良い。
私たちのサポートに使うなら、効果が多少弱くても十分。
ラミアの動きが鈍り、落盤も止まった。
「攻め時ッ!」
深紅の合図に従い、一気呵成に私たちは攻撃を開始する。
私は槍でラミアの胴体を貫き――そのまま岩盤に突き刺さった。
ラミアは目釘を刺されたウナギのように身動きが取れなくなり、逃れようと暴れている。
暴れるラミアに逃れられてはいけない!
歯を食いしばり、背一杯の膂力で抑え着け――。
「そこっ!」
深紅がラミアの脳天を剣で貫く。
頭部を貫かれたラミアは奇声をあげ――霧散。魔石へと姿を変えた。
ふぅと一安心。
深紅が魔石を拾い上げようとして――。
「――危ない!」
「え?」
私はバッと深紅へ覆い被さった。
途端、背中を切り裂かれる痛みが走る。
「は、ハーピー!? くっ、戦いを忍び視て、隙を覗ってたのね!」
鳥の体に人の顔。鋭い鉤爪にダンジョン内を高速で飛び回る翼。
極めて頭脳的で、強かなモンスターだ。
個体の戦闘力は弱いけど、狡猾さで怖れられている存在。
力押しでハーピーを倒そうとして……気が付いたら群れに囲まれ全滅したパーティの配信も観た経験がある。
〈美尊ちゃん!?〉
〈血ぃいいいいいい〉
〈弓攻撃!〉
〈空を飛ぶハーピーは厄介!〉
〈早く治癒魔法ぉおおおおおおお〉
〈素早いハーピーの前で魔力を練られてたまるかよぉおおおおおお〉
「不味い、ハーピーは群れで行動する生態がある……。きっとまだ他にもいるわ! 注意!」
深紅の指示に、私たちは急いで警戒態勢を取る。
背中は痛むけど、立てない様な深手ではない。
ソロで戦う場合のセオリーでは、狭い道まで撤退し、その飛行能力や群れの優位性を低くする事。
でも――今はパーティ戦だ。
「そこ!」
高速で飛来するハーピーの動きを見切り、深紅がシールドで防いだ。
鉤爪と盾が衝突し、甲高い音が鳴り響く。
「ふっ!」
私は懐から即効性の麻痺毒を塗った針型手裏剣を投じる。
ハーピーの胴に突き刺さると、即座にその動きが鈍った。
その僅か後――トンッと、ハーピーの首へ吸いこまれるように矢が突き立つ。
味方へ当たらないよう涼風が得意な風魔法で操作しながら射放った矢だ。
「止めッ!」
深紅が踏み込み――ハーピーの首を切り裂く。
大ぶりせず、そのまま次の構えに入れる技を選択するのは流石だ。
そのままハーピーは魔石へと姿を変える。
〈ナイスぅううう〉
〈格好良い!〉
〈まだ居るんだろ!? 何処だ!?〉
〈うおおおおおおおおおおお〉
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