表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/182

第23話 世の中、世知辛いよ

「あ~……。長官から御説明を受けていないのですかね? その……。企業所属の開拓者さんだと、事務所との取り分規約があるんですよ」


「で、でも……9:1って!」


「あ、あの~……。大神さん?」


「――川鶴さん!」


 そうだ! 地上ではこの人が待ってくれていたんだ!

 俺が一直線に換金に向かったから、話しかけて来られなかったのかもしれない。


「川鶴さん! 9:1って……。これ、シャインプロモーションだと普通の配分なんですか!?」


「い、いえ……。他の子達は、5:5で……。く、詳しくは長官と通話が繋がっておりますので、このスマホをどうぞ」


『――向琉。聞こえるか?』


 スピーカーモードになっているのか、姉御の声が耳に付けなくても良く聞こえる。


「姉御! これは一体どういう事なんですか!?」


『どういう事も何もあるか。向琉の借金62億円が返済される迄の間、開拓者活動に関連する収益の9割を事務所の取り分とする。私の執務室で、貴様がサインした契約書に記載されていた内容だ』


「ぁ……。あの時の!?」


 目覚めて直ぐ、事務所へ所属するように言って来た時の事だ!


『言っておくが、文句を言われる筋合いはないぞ? 利息が膨らまないように一括で返済してやったんだからな。本来なら日々、とんでもない額が増えていく可能性もあったんだ。或いは懲役だな』


 それを言われると弱い……。理不尽な契約だなぁとは思うけど……。

 62億円の借金に利息がついたら……。計算は出来ないけど、ヤバいぐらい膨れ上がるんだろうなって事ぐらいは分かる。


「わ、分かりましたよう……。我慢しますぅ……」


『……向琉。わざわざ私が電話をしたのは――これだけの用事だと思うか?』


 ゾワッと、背筋に冷たい何かが走った。


 いや……何!? 怖いし聞きたくないんですけど……。


「はははっ。お忙しい中、お電話ありがとうございました。それでは、そういう――」


『――配信機材のリース料、1日3万円』


 姉御の凜々しく響く声が聞こえた時――世界が凍ったように感じた。


『世界最高の技術力を誇るマルチバース社製、最新の配信機材だぞ? リース契約とは言え、それぐらいの値段はする。他ならぬ向琉自身が最高の機材を望んだんだ。――分かるな?』


 あぁ……。そうですね。

 姉御の執務室から出る時、配信機材はどうするかと聞かれて……最高の物をお願いしますとか言ったわ、俺。


 ははっ、殴りたい。――あの時の俺を、全力の神通力を込めて殴りたいっ!


『さっきの魔石売却益が8千円だったか? 一体当たりの魔石が10グラムで、千円。お前の取り分が……百円。この意味が分かるな?――現在のランクでは、リース料金を支払うだけで1日3百体はモンスターを倒さなければいけないと言う事だ』


 その意味を理解して……俺は全身がガタガタと震え出した。

 あぁ……、この師範代、やっぱり鬼畜だよ。血も涙も無いよッ!


『良い修行になるなぁ、向琉。――さぁ行ってこい。ああ、配信はしっかり視聴者にお礼を言って切れよ? この後、他の所属ダンライバーの配信があるからな。事務所内での配信時間被りは極力避ける。何はともあれ、だ。……初回配信、お疲れ。せめてもの情けだ、収益化申請はこちらで手配をしてやる。普通に申請するより、遙かに短縮されるだろう。明日には収益化が通るんじゃないか?……ではな。――もっと強くなれ、駆け抜けろ、そして人の世に認められるんだ、向琉』


 ブツッ。

 という音を最後に――ディスプレイには、『通話が終了しました』と表示されている。


 どうしよう……。震えが収まらない!

 最後の最後には、ジジイの遺言みたいな言葉も言われたけど――。


「――ぬぅぁああああああッ! 上等ですよ! 今回の4倍モンスターを倒せば黒字なんだろ!? 行ってきてやる! 食料庫で暮らしてやるよぉおおおッ!」


「お、大神さん! 落ち着いてください! またダンジョンに住むのと同義ですよ!?」


「ええ、ええ! そうですよ! 結局、俺の帰る場所はダンジョンだったんです! なんてったって地底人ですからねぇ!」


〈草〉

〈www〉

〈姉御、辛辣ぅ!〉

〈ふざけんな! 誰か大宮愛を○せ!〉

〈ヤバい、申し訳ないけど笑いが止まらんwww〉

〈こいつこれでも政府高官かよ! 詐欺師が!〉

〈いやいや、可哀想過ぎるでしょ。大神さんは被害者なのに……借金62億円背負わされるとか国で救済なりすべき。胸糞悪いわ長官酷すぎ〉

〈この債務者が不憫過ぎるぅううう!w〉


 左腕から流れる自動読み上げ機能に、今更ながら気が付いた。

 多分、ずっと流れていたんだろうけど……。換金に気が逸ったのと、衝撃で気が付かなかった。


「皆さん、アレが姉御ですよ! いえ、俺の借金62億円を肩代わりしてくれてるのは嬉しいですよ!? でも、でも……! くっそぉおおおッ! 食料庫24時間戦闘耐久配信でもやりますか!?」


〈良いぜ、このあたおかに付き合ってやらぁ!〉

〈応援してます!〉

〈収益化通ったら、直ぐにスパチャします!〉

〈お兄様、神聖。格好良い越えて神々しい〉

〈マジで不憫w 応援してるわw〉



「よっしゃあッ! じゃ、川鶴さん! そういう事なんで24時間耐久行ってきます!」


「ええ!? まま、待って下さい! オーナーも言っていたじゃないですか、他の子と配信が被らないようにですね……」


〈行かせてやれよ!〉

〈そうだぞ、今日はまだマイナス2万2千円なんだからwww〉

〈あんだけ頑張って借金増えるとかw〉

〈魔石は換金率低いから、稼ぎたいなら稀少鉱石採掘お勧めするよw〉


「24時間ですから! 出入りも寝食も自由ですよ! 俺の枠なんて、そんなもんです!」


「そんな自棄にならずにッ!……いや、あの、お気持ちは痛い程お察しすると言うか。こっちも精神的にキツいんですけども!」


〈伊縫美尊:良いから、今日は寮に帰って大人しくして。ランクが上がれば挽回できるから。そっちが切ってくれないと、トワイライトが配信出来ないよ〉


 美尊からのコメント!?

 やばい、怒ってるかも!


「――そういう事で、視聴者の皆さん。今日はご視聴ありがとうございました! また明日!」


〈変わり身が草なんよ〉

〈妹最強だから仕方ないw〉

〈トワイライトの配信邪魔してたら、俺がキレてたわ〉

〈次も楽しみにしてます!〉

〈おつ〉

〈おつ〉


「良かったらチャンネル登録して行ってください! では、またお会いしま~しょうっ!」


 結局、その日は美尊に言われた通りに帰りました。

 寮へと帰る車中。

 川鶴さんが、いつも以上に優しかったです――。


本作をお読みいただきありがとうございます┏○ペコッ


この物語に少しでもご興味を持って頂けたら……どうか!


広告の下にある☆☆☆☆☆でご評価や感想を頂けると、著者が元気になります。


また、ブックマークなどもしていただけますと読んで下さる方がいるんだと創作意欲にも繋がります。


どうか、応援とご協力お願いします┏○ペコッ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ