第17話 初開拓配信!(3)
その後、同じくオーガと5~6回戦闘をしてから、更に階段を降りて――2階層の奥深くへとやってきた。
「う~ん……。難しい。ダメージを与えすぎると魔石まで壊してしまうし……。受け稽古と思ってやっているけど、こっちが攻めると終わっちゃう……」
〈なんて贅沢な悩みw〉
〈真剣に悩んでるお兄様、格好良い。プラチナ色が神々しい〉
〈最初無謀と思ったけど、なんでDランクにいるの?〉
〈モンスターをイジメないでw〉
〈というか、武器使わないの? ここまでゆっくり説明でも格闘術しか使ってないけど〉
〈って言うか、地底人がここまで強くなった秘密が知りたい。ダンジョンでの生活とか〉
「お! それ良いですね! 質問に答えながら開拓していきましょう!」
〈コメントを拾ってくれる配信者の鑑〉
〈リアルタイムのを拾ってるってことは合成じゃないのか?〉
〈まぁそりゃ疑うヤツも出るよなw こんなFランク開拓者、信じられるか〉
「えっと……。なんでしたっけ? 俺の10年間のダンジョン生活でしたっけ? そうですねぇ。最初は真っ暗で怖くて、死ぬかと思ったんですけど……。この白星って刀が居てくれたから、孤独で発狂せずに済みましたよ」
「ふん、やっと妾を紹介か。もっと敬え、目立たせろ!」
なんで声出してるの?
美尊と再会した時に知った衝撃の事実。
白星、脳内への念話だけでなく、声を出して会話が出来たという……。早く言えよ。配信の時に限って喋るという事は、目立ちたいんだろうなぁ。そんなにチヤホヤされたいのか、刀の分際で。
〈か、刀が喋った!?〉
〈嘘、マジで!?〉
〈いやいや、インテリジェンスウエポンとか、伝説の類いだろ!?〉
「ふふっ。驚いておるな。そうだ、妾は伝説に謳われし存在よ!」
調子に乗ってるな~。
まぁ視聴者さんも楽しそうだから良いけどさ。
〈うさんくせぇ……。音声の合成か?〉
〈だよな、そんな伝説級の武具が過疎流派に転がってるはずがない〉
「な、なんじゃと!? 妾は本物じゃ!」
白星がプンプンと怒っている。
刀身が熱を帯びて、腰が熱いんですけど……。
〈じゃあリアルタイムの質問に答えて見てよ〉
「質問? 良いじゃろう! 吠え面をかかせてやろうぞ!」
〈じゃあ、3+9×4は?〉
「さ、算術じゃと!? えぇ……。えっと、その……48!」
〈www〉
〈天の声さん、間違えてますよw〉
〈誰が刀役で声を当ててるか知らんけど、可愛いw〉
〈美尊ちゃんを助けた時にも聞こえたよな? まさか本当にインテリジェンスウエポン?〉
〈簡単な計算も出来ないインテリジェンスウエポンがあってたまるかw〉
〈地底人が裏声使ってんだろw〉
「……向琉。妾はもう、ダメかもしれん」
「落ちこむなよ。どう考えても白星が悪いんだろ?」
単純な計算を間違えた上、俺の裏声疑惑まで掛かってしまった。天心無影流の御神刀は、シクシクと泣いているようだ。
「ま、まぁ……。取り敢えず最初は、結界の張ってある道場から出られないぐらいだったんですけど……。なんとか家に残ってる保存食が腐りきる前に、白星に指導してもらって……。暗闇でも視界が確保出来るようになったり、ちょっとは強くなりましてね。道場の結界近くに寄ってきたモンスターをチョコチョコと殴ってダメージを与えて、倒して食べて。徐々《じょじょ》に捕食が出来るモンスターを増やすって生活をしてきましたね」
〈はぁ~……。嘘だとしてもスゲぇ話だ〉
〈というか結界に籠もって殴るとか卑怯w〉
〈でもSランクダンジョンだろ? そうでもしないと死んでただろ〉
〈そもそも最初から殴ってて草 原始人かよw〉
〈刀は使わなかったの?〉
最初は道場にあった長柄武器とか使ったんだけど、モンスターの皮に負けて壊れたんだよなぁ……。白星は――。
「この刀、白星は――実は、鞘から抜けないんです」
〈は?〉
〈抜けない? 封印されてるって事?〉
〈選ばれし者にしか抜けない聖剣かw〉
「ふん! その通り! 妾を鞘から解き放てるのは、選ばれし者のみじゃ! はっはっは!」
途端にふんぞり返り、誇らしげに白星は哄笑する。
「まぁその通りでして……。実戦では一度も、白星を使えた事がないんですよ。念話で話し相手にはなってくれていたんですけど……。それだけですね」
〈なるほど、つまり実戦経験無しで鞘からも抜けない刀……〉
〈つまり、童貞剣?〉
〈童貞剣www〉
〈インテリジェンスウエポン様に失礼だろ! せめて童帝剣ぐらいしてやれw〉
〈www〉
「ききき、貴様等ぁあああッ! 妾は童貞じゃない! そもそも、この可憐な声を聞いて分からんのか!? 妾は女子じゃぁあああッ!」
煽られてプンプンだな。剣帯を壊さんばかりの勢いで暴れている。
〈つまり処女剣か〉
〈そう聞くと価値が高く感じてきたw〉
「あぁあああッ! なんなのじゃぁあああッ! もう嫌じゃぁあああッ! 妾、黙るぅうううッ!」
あ~あ……。ついにワンワンと泣き出したよ。なんかズボンが湿って来たんだけど……。刀が涙を流して泣くとか、器用な真似をするなぁ……。
〈泣いたwww〉
〈このエンタメはレベル高いよ、大神さんw〉
〈10年の孤独を紛らわす為に、刀で腹話術を覚えたのか……。泣けるなw〉
〈ダンジョン庁:大神向琉。天心無影流宗家伝来の家宝、御神刀を貶めるな〉
〈ふぁッ!? 本物!?〉
〈これ絶対に書いてるの姉御だろw〉
〈公務中に良いのか? あ、もう定時過ぎかw〉
「あ、姉御ぉおおおッ!? す、すいません!」
姉御が配信を見ている!?
や、やばい! 上手くやらないと、締められる!
「さ、さ~て! ここの階層も飽きましたね! ちゃちゃっと進みましょう!」
ダッと駆け、俺は次の階層へと進んだ――。
本作をお読みいただきありがとうございます┏○ペコッ
この物語に少しでもご興味を持って頂けたら……どうか!
広告の下にある☆☆☆☆☆でご評価や感想を頂けると、著者が元気になります。
また、ブックマークなどもしていただけますと読んで下さる方がいるんだと創作意欲にも繋がります。
どうか、応援とご協力お願いします┏○ペコッ




