第176話 指導戦闘かいs……指導?
いやいや、俺が嵌めてあげるの?
深紅さんの左手薬指に、指輪を?
「あ~ね? 確かに、いくらウチでも折角の左手薬指への指輪を自分で嵌めるってのは――」
「――はい、深紅。私が嵌めてあげる」
有無を言わさず、美尊が指輪を押し込んだ。
深紅さんの左手薬指の根元には、魔力の籠もった指輪が神秘的な輝きを放っている。
無事に深紅さんの魔力とも適合したようだ。
良かった、勘違いして炎上する所だったよ……。
〈百合尊いwww〉
〈今の美尊ちゃん、格好良かったwww〉
〈少女漫画かよ……。良いぞ、もっとやれw〉
「――ぁあァ゛ア゛゛゛」
「す、涼風さん!? 顔を覆って、どうしました!? まさか、アクセサリーで魔力暴走とかアレルギー反応が!?」
「……暴走、過剰摂取によるアレルギーなのは、そうなのかもしれません。でも――凄く、良い……」
天を仰ぎ腕を脱力させ――ホロリと涙を流している。
そ、そこまでアクセサリーを気に入ってくれるとは……。
頑張って知床まで素材を取りに行って、良かった!
俺としても、既に報われた気分だ!
「さて、エリンさんはネタ武器とか行ってるけど……。新武器とアクセサリーの効能を確かめながら、出発しよう!」
「「「はい!」」」
流石に、いざ開拓を始めるとなると皆の空気が変わる。
パッと真面目な雰囲気に切り替わり――隊列を組んでダンジョンの奥を目指し進んで行く。
配信用に稼働しているドローンは一台だが、一緒にもう一台ライトを灯しながら飛行をしている。
これは荷物運搬もあるが……俺とのコラボが終わった後、少しだけ休憩をしてから深紅さん管理の下にトワイライトの定期配信も行う為に持って来たそうだ。
習った事を復習したいと言うのもあるんだろうけど、ほぼ連続で潜るなんて……本当に熱心だな。
「――ラミアが一体! やるよ! 他からの奇襲にも注意して!」
一般的な学校の廊下ぐらいの道幅に、女性の上半身にヘビの胴体を持つモンスターが立ち塞がる。
ラミアは初めて見たけど、トワイライトはどう戦うかな?
取り敢えず俺は、1番後ろで見ていよう。
そう思っていると地を這い向かってくるラミアを――深紅さんのシールドが正面から受け止めた。
それだけなら、なんの捻りも無いが――。
「――ライト!」
後衛の涼風さんが光魔法を放つ。
それは辺りを明るくすると共に、魔素の塊であるモンスターへ若干のダメージを与える魔法。
本来なら死霊系モンスターに有効とされる魔法だ。
しかしラミアを抑えていた深紅さんとは別方向に――美尊が駆ける。
それはライトで照らされたお陰で、岩陰に隠れていた姿が顕わになったハーピーだった。
壁を駆け、一体のハーピーへ槍を叩き付けて地に落としつつ――美尊は隊列へと戻って来た。
「確認おっけー。居たのは合計3体。正面に落とした1体、右奥の天井にあと2体、まだ張り付いてる」
「「了解」」
成る程。
深紅さんが前衛で敵モンスターを引きつけている間に、光魔法で確保した視界で奇襲を防ぐ為の斥候役を美尊がしたのか。
良い動きだなぁ。
学校での立ち会いと違い、どれだけの敵が潜んでいるか分からないダンジョンの中で抜群の連携。
一朝一夕では、こう上手くは連携が取れないだろう。
「ウチと美尊でラミアを攻撃! その間、ハーピーの牽制任せた!」
深紅さんの指示によって、トワイライトは動き出す。
深紅さんがシールドに魔力を込めると――シールドから燃え盛った炎で、ラミアの爪や指が燃える。
そうして怯んだ隙に――。
「――ふっ!」
美尊がラミアの死角から、氷属性を纏った槍を突く。
槍の一撃では絶命に至らなかったラミアも、氷の魔力により動きが極めて鈍っている。
その隙に、深紅さんが片手剣を一閃。
ラミアの首が落ち――魔石へと姿を変える。
「うん、素晴らしい! 魔法と組み合わせた戦い方もバッチリ!」
鮮やかな戦いぶりに、思わず興奮してしまう。
そして涼風さんはと言えば――。
「――ぁ、あの……。ハーピー、全滅させちゃったんだけど……」
「え? 涼風、牽制じゃなかったっけ?」
「ウチら気が付かなかったけど、大きな魔法でも使ったの?」
「け、牽制のつもりだったんだよ!? でも弓を番えたら勝手に魔力を吸って……そしたら、思った以上の威力とコントロールが効いたの!」
涼風さんは悪気は無かったと言う風に両手を振っている。
作戦とは違う行動をしてしまったから、戸惑っているんだろう。
「ネタ武器とか言われてましたけど……使い心地は如何ですか?」
俺は1番近い涼風さんに、そう尋ねる。
「そ、それはもう……凄いです。初めてとは思えない、手に吸い付く感じ。弦の硬さも丁度良いですし……。ただ、あの……。さっきも言ったように、矢を番えると魔力が吸いこまれているような……」
「あ、それは魔力を込めるアシストだそうですよ。練習次第ですが特に風魔法を込めやすくなっているので3本同時に矢を射る事も出来て、それぞれ別々の軌道で的へ飛ばす事すら出来るそうですよ?」
「何ですか、そのトンデモ性能。弓を舐めてるんですか?」
恐ろしい程の真顔で言われた。
うん、真面目に弓を練習していたらそう思うよね……。
エリンはん、なんちゅうもんを作ってくれたんだって。
有り触れた武具素材にユニコーンの一本角を少し加え、加減を知らない変態の手により――魔法武器にまで昇華されてしまったんだわさ……。
本作をお読みいただきありがとうございます┏○ペコッ
この物語に少しでもご興味を持って頂けたら……どうか!
広告の下にある☆☆☆☆☆でご評価や感想を頂けると、著者が元気になります。
また、ブックマークなどもしていただけますと読んで下さる方がいるんだと創作意欲にも繋がります。
どうか、応援とご協力お願いします┏○ペコッ




