第151話 あ、トワイライト握手会の警備!
せ、背筋がゾクゾクとする!
会場の歓声が怖い!
ドクドクと心臓が跳ね、今更ながらに――人の視線が怖かったと泣きそうになる。
「お、大神さん。お疲れ様でした」
「か、川鶴さぁん!? こんなの、聴いてなかったですよ!?」
「す、すいません! 本当にアドリブで……。でも、イケると私も思ったんですよ! アンコールで何をするかは、2パターンぐらい事前に考えてあったんですけど……。タレントの面々も楽しそうだから、急遽アレをしたいって!」
「そ、そこを理性的に、計画通りに導くのが社長では!?」
「ご、ご尤も過ぎて、言い返す言葉がありません!」
川鶴さんがペコペコと頭を下げている。
いや……。
その、ね?
唐突な事態に驚いただけなので!
そんな謝ってくれとかじゃないですから!
「シャインプロのハロウィンフェスティバルなのに、お兄ちゃん除け者なのはおかしい。私がそう言ったの」
「美尊さん!? そ、それは……。俺、まだ入所から間もないし!? 歌が、アレだから……」
「お兄さん先生。事務所に入って間もなくても、私たちは仲間だと思ってるんですよ?」
「そうっすよ、お兄様! 水くさい事を言わないでください!」
「す、涼風さんに深紅さんまで……」
結果的に上手くいったから良かった。
なんかシャインプロ全員が出て来て歌ったから、如何にもアンコールに応えた特別バージョンです~感も演出出来たしね!
川鶴さんも多少、熱気に浮かされているのか頬を上気させ――。
「――それに、大神さんの人間離れしたパフォーマンスで会場は沸きましたよ! 空中で炎を纏い、水と戯れる派手かつ巧みなダンス! これは他の演出では決して出来ません! 大反響確実です!」
その言葉に他の所属タレントも頷いている。
うん、まぁ……。
みんなが良いなら、良いかな?
それより――。
「――あの、俺が姉御から受けていた依頼……。トワイライトの触れあいイベントの警護は、どうすれば?」
俺が指摘すると――川鶴さんは目を見開いた。
慌てて左手の腕時計を確認すると――顔をムンクの叫びのように歪める。
やっぱり……頭から抜け落ちていたのね。
「――み、皆さん! 早く移動しましょう! 大神さんは剥がし役と混ざり、会場で臨機応変に警備をお願いします!」
「は、はい! 変装もしておきますね!」
「あ、そうだった!? 変装もお願いします! 大神さんに触られたくて、わざと握手を長引かせる人が出るかもしれませんからね!」
なにそれ。
そんな人が出るの?
流石にそれは考えすぎだと思うけど……。
取り敢えず、次の変装はガッツリ行こう。
少し老けた印象にメイクもして、ウィッグだけじゃなく身体にもタオルとか巻いちゃって……。
小太りの中年警備員を装うとしようか。
やるからには全力!
汗を拭い、メイクを直してから触れあいイベント会場――俺が握手会を行った場所へ向かうトワイライトの後ろを付いて行く。
前には川鶴さんや他のスタッフもおり、なんだか多数のSPを連れたスターのようだ。
そうして会場に着いた時には――時刻は15時55分。
16時からのイベント開始に、本当にギリギリ間に合ったぐらいだった。
スタッフに交じり3人へお茶を渡して行く。
変装した俺の姿に3人――美尊を除く2人でさえ一瞬、気が付かなかったようだ。
ふっふっふ。
短時間でやったにしては、クオリティが高い変装でしょう?
これも姉御から課された数々の習い事の成果って奴ですよ。
メイクも身だしなみの1つと言われましたからね!
「会場前、既に握手券が当たった6千人が並んでいます! 皆さん、準備は良いですか?」
入場口の様子を見てきたスタッフが触れあいブースに入るなり言う。
俺の時とは少々違い、室内には待機列が3カ所ある。
美尊、涼風さん、深紅さん。
それぞれのレーンに、列整備のスタッフが待ち受けている。
トワイライトの面々は、準備は大丈夫とばかりに笑みを浮かべて頷き――。
「――それではトワイライト握手イベント、開場です!」
本日最後の仕事の時が、いよいよやって来た――。
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