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第108話 作戦、成功? 涙が……

 落盤に潰されていくモンスターの群れを見ながら、俺は脳内の川鶴さんを胴上どうあげしていた。


「よし、よし! 成功! 上のダンジョンまで落ちてくる様子もなし!」


 昨日のうちに、川鶴さんと周りながら階段前広場の天井てんじょうへ慎重に亀裂きれつを入れていた成果が出た!


 策は成功です!

 今頃、立案者の川鶴さんも安全な所でガッツポーズをしてくれているかな?


〈うえええ!? 何が起きたの!?〉

〈初見さんへ説明。あたおかの歌声はモンスターを気絶させ落盤を引き起こす威力いりょくがある〉

〈↑成る程、分からん〉

〈詳しくはアーカイブを視て来なw〉

〈全滅させたか!?〉

〈いや、まだふらつきながら動いてるのが居る!〉


 落盤で全てを倒せるとは思っていない。

 あまり大規模に崩落を起こすような亀裂だと、上にある建物も持たない可能性だってある。

 だが、大部分は減らせた。


 残りは――。


「――ふっ!」


 いつものように魅せるパフォーマンスは一切なし。

 カマイタチの如く、縦横無尽じゅうおうむじんに生き残りを殲滅する。


「――よし! ここは遭遇そうぐうから3分でクリア! 次に移動!」


 時間との勝負。

 俺は急いで階段を駆け上がり「ここは終わりました」と受付や外で待機していた自衛隊員に告げ、空を翔る。


〈策ってダンジョンに罠を仕掛けてたのか!〉

〈落盤を起こしやすいようにしてたってことかwww〉

〈相変わらず、やることが『あたおか』なんよなwww〉

〈でもこんな余裕無く動くアタオカ初めて見たわ〉

〈速すぎて見えませんでしたwww〉

〈お空を駆けるVR体験とかスゲぇえええ〉

〈ダンジョンって崩壊ほうかいしても直るもんなの?〉

〈時間が経つと、なんか復元してるらしい。魔素が充填じゅうてんされるとかで〉


 スマホを見て次のポイントへと空を駆けながら、内心で質問について考える。

 今、喋れば確実に舌を噛む。


 ダンジョンはある程度時間が経つと、再生する機能があるそうだ。

 希少な鉱石なら数ヶ月から一年。

 普通の岩盤なら部分損傷で数日。

 完全損傷で数週間。


 このダンジョンたちは数週間使えなくなる可能性もあるが……。

 そこは後でゆっくり処理すれば良い。瓦礫がれき撤去てっきょでもすれば、復元も早くなるだろう。


 川鶴さんと立てた作戦のきも、それは――どんなダンジョンだろうと、階段前広場があるのは共通している事だ。


 1階層へ降りた後には、必ず大き広場がある。

 そこで事前にダンジョン5カ所の広場天井の岩盤に所々、亀裂を入れておく。

 そうして闘い、ある程度数が群がった所で歌い――崩落を引き起こす。


「川鶴さんの策、見事的中しましたよ!」


 次のダンジョンへと着いた!

 時間は――最初の遭遇から9分!

 最悪の事態――10分事まで、ギリギリだ!

 次への余裕という意味でも、1分1秒が惜しい!


「ここの担当の大神向琉です! 入ります!」


 受付の返事も待たず、ダンジョンへの扉を開き階段を降る。

 すると、もうモンスターの群れが眼前に来ていた。


「これは……タフな5回になりそうですねぇ……」


〈間に合ったぁあああ〉

〈いや、怖い。これもし間に合わなかったら終わりじゃん〉

〈こんな数があと4回出て来るの!? 絶対に民間人は避難させた方が良いだろ!〉

〈地底人が間に合わなかったらどうするんだよぉおおお!?〉

〈¥10,000

お兄様ぁあああ頑張ってください〉


「スパチャありがとうございます! ミュートお願いします!」


 急いでBGMでドローンに取り込んだ音楽をリピートで流す。

 そうして俺はまた、モンスター集団を引き寄せるまで殲滅を続ける!


〈この音楽、あたおかの殲滅イメージソングじゃないwww〉

〈トワイライトのアイドルソングをBGMに繰り広げられる光景じゃないってwww〉

〈狙ってるの? 不意を突かれて恐怖が吹っ飛ぶぐらい笑ったけどさwww〉


 あ、あれ?

 配信リンク式腕時計の操作を、ミスった?

 美尊たちトワイライトの楽曲を流しちゃったみたいだけど……。


 お、同じ事務所だし――良いよね?

 ドローンに取り込んでる音楽、増やしちゃったからなぁ……。


「喰らえならぬ、聴けぇえええ!」


 再び、モンスターの群れが集まってから――美尊たちの楽曲を歌う。

 すると――崩落で魔素へと散っただけでなく、生き残りの様子もおかしい。

 先ほどよりも、遠く離れていたモンスターが――地で泡を吹いて震えている。


「じ、自分の歌より、キーが高いせいかな?」


 ちょっと無理して裏声うらごえで歌ったから……。

 兎に角、時間が勿体ないので天心無影流の合理を極める最短の動きで仕留めていく。


「よし、クリア! ここは2分! さっきよりも短縮出来た!」


 1個1個のダンジョンで余裕を出すほど、後半が楽になる。

 俺は再び急いで地上へと駆け出す。


 そうしてここはクリアした事をギルド職員や自衛隊員へ伝えようとすると――。


「――あ、あれ!? 皆さん、どうしたんですか!?」


 必至ひっしに立ち上がろうとしては、酷く酔っ払っているか地震でもあったかのように地へと倒れ伏している。


〈それもしかして、あたおかの歌で三半規管さんはんきかんやられた?〉

〈地上にいる味方の平衡感覚へいこうかんかくまで奪うとは……〉

〈不謹慎だけどワロタwww〉


 え、これってそう言う事なの?

 裏声で無理したとは自分でも思うけど……。

 泣きそう。

 歌のレッスン、頼んでもっと増やしてもらおう。


「と、兎に角! ここのスタンピードはクリアしました! 俺は次へ向かいます!」


 藻掻もがき苦しむ人々には悪いと思いつつも、次のダンジョンを目指して宙を翔ていく。

 神通足じんつうそくのコントロールが増したのか、何時もより速く宙を駆けている気がする。


「……雨? こんな晴れているのに?」


 自衛隊の男性らしき人の声が微かに耳に入ったが――俺の足は止まらない。

 今日の空は、あおにじんで見えた――。


本作をお読みいただきありがとうございます┏○ペコッ


この物語に少しでもご興味を持って頂けたら……どうか!


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また、ブックマークなどもしていただけますと読んで下さる方がいるんだと創作意欲にも繋がります。


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