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第98話 親孝行したいと育った時には、親はいない

「うん。お父さんとお母さんが居なくなって、まだ幼い私は避難所で途方に暮れてた。そこを助けてくれて、色々と選択肢をくれたの。目の前でモンスターにやられちゃったお母さんやお父さんと違って……お兄ちゃんは、まだ生きている可能性がある。だから私は愛さんに、開拓者になりたいって言ったの」


「そっか。姉御、なんて言ってた?」


「最初は、凄く反対された。命の危険が高いから、普通の仕事に就いて欲しいって。でも毎日、粘り続けてたら……許してくれたの。開拓者としての資質は得ちゃってたから、開拓学園に入るのは決定事項だったし。そうなれば、勝手にでも開拓者にはなれちゃうからね」


 なるほどなぁ……。

 姉御も、宗家の血を引く美尊が開拓者になるのには……思う所があるんだろうな。

 唯でさえ伊縫家から1人を大神家へ引き入れたんだし、俺が美尊には平穏に暮らして欲しいという願いを持っていた事も知ってる。


「1番の決め手は、私も一緒にお兄ちゃんを探したいって言ったのだと思う」


「成る程……。妹が探したいって言ってたら、姉御も邪魔は出来ないよなぁ」


 その頃、俺は地下でサバイバルをしていた訳だけど。

 俺は生き残り、地下で弱肉強食の日々を繰り広げていた。

 食物連鎖の上に立つまでは、死ぬかもしれないと引っ切りなしに感じていたしなぁ。

 地上で何が起きたのかを聞けるのは嬉しい。


「母さんと父さんの墓参りにも、行かないとなぁ」


「うん。きっと喜ぶと思う」


 両親、かぁ……。

 きっと喜ぶだろう。

 亡くなった今なら、きっと――。


「――生前の母さんと父さんはさ、俺に対して笑わないようにしてたんだよ。接するのも最低限にして、親子と思わせないようにしてたんだと思う」


「……そうなの? 私はまだ、当時小さかったから……。お兄ちゃんと会える日に、お母さんやお父さんがどんな表情をしてたのか、よく覚えてない」


「美尊は無邪気に喜んでくれてたのを、俺は覚えてるよ。……母さんと父さんは、ホッとした顔をしてた。決して笑顔は見せないようにしてるのが、バレバレだったよ」


 当時を思い出して、苦笑してしまう

 今思えばだけど……俺が親元を恋しく思って、寂しくないようにと努めてくれたんだろなぁ。


「そうなんだ……。お母さんとお父さんの事、嫌い?」


「嫌いな訳がないよ。……でも、昔から淡泊に接するのを徹底してくれたからだろうね。……実の両親だという実感は、薄いかな」


「そうなんだ……」


 俺にとっての親にして、家族は――やはり過ごした時間と密度からしても、天心無影流道場に居た人たちだという気持ちが大きい。

 美尊に関しては、両親のように距離を遠ざけて接して来た訳じゃないから……家族としての愛情も深くなっているけどね。

 でも、今にして思えば――。


「――母さんや父さんも、辛かったんだろうな」


「きっと、そうだと思う。養子入りして、自分の元を離れて行くのは決定的でも……お腹が膨らんで行くのを見て、この世に生まれてから大きくなって行くのを見ていたんだから」


 そうだよな。

 俺が物心が付く前にも、色々と葛藤があったんだろう。

 子供として愛しているからこそ、俺と距離を取る。

 その決断は、並々ならぬ辛さだっただろう。


「……我が子とは親子として接さない。その辛さを受け止める決断をするのも、きっと1つの……愛だったんだろうな」


 高校生の頃の俺には分からなかった。

 でも、今は少し大人になったのかな?


 両親の行動にも――深い愛を感じる。


 俺が別れがたい情を抱かないように、自らの情も懐に仕舞う。

 それは、想像が付かないぐらいに辛いんだろう。


「うん……。今度、2人でお墓参り行こ? そうしたら、きっと素直に喜んでくれる」


「ああ、そうしよう」


 暗く湿っぽい話になってしまったけど、一段落した。

 美尊とちゃんと、今は家族として過ごせている。

 その姿を見せたい。

 その時が楽しみだなぁと思いながら、お茶を飲んでいると――。


「――失礼。大神向琉さんと、伊縫美尊さんですかな?」


 スーツ姿に、髪の毛をオールバックにした男性が声をかけてきた。

 隣には、一目で高価そうだと分かる派手な私服姿をした女性。

 夫婦だろうか?


「そ、そうですが……。どちら様でしょうか?」


 俺がそう尋ねると、男性は名刺を一枚取りだし、机の上に置いた。


「初めまして。私は――旭プロダクション代表取締役社長、旭柊馬あさひしゅうまと申します」


「同じく、副社長の旭鹿奈あさひかなです」


 軽く頭を下げ、2人は自己紹介した。

 旭柊馬さんは、続け様に――。


「――本日は、お2人をスカウトに参りました」


 ニヤリと笑いながら、そう言い放った――。

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