表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元勇者はのんびり過ごしたい~地球の路地裏で魔王拾った~  作者: 流優
回る世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

87/156

引っ越し祝い《3》


 レンカさんと共に買い物から家に戻ると、何故かリビングの空気が少しおかしかった。


 別に、険悪って訳ではないのだが……。


「……ウタ? 何かあったのか?」


「いや、別に。少し話をしただけじゃ」


 何でもない風を装ってそう言うウタであるが……様子がいつもと違うのは明白である。


 それがわからないような、浅い付き合いじゃない。


 思い出すのは……向こうの世界でのウタ。


 そんな雰囲気を、ほんの少しだけだが身に纏っている。


 珍しい。こっちの世界でその姿は、全くと言って良い程見せていなかったのに。


「くふふ、海凪 優護。凄まじい奥方であるな。ここまでの存在を見るのは、数百年ぶりであろうか」


「少し、怒られちゃいました。しっかりした奥さんをお持ちですね、海凪 優護」


 怒られた?


 ウタが、二人を怒る?


 いったい何があったらそんな状況になるんだ……?


「……キョウ、何かわかるか?」


 こそっとキョウに聞くも、彼女は首を横に振る。


「わかんねぇ。少し、席を外すよう言われてさ。……まあでも、あの感じだと、悪いことじゃねぇんだろ、多分」


「そ、そうか?」


「あぁ。多分だけどな。女の勘だ」


「女の勘か」


 三人の方を見ながら、そう言うキョウ。


 ……まあ、キョウがそう言うなら、信じるとしようか。


 そして、そんな空気を知ってか知らずか、レンカさんが買った食材をキッチンに出しながら言った。


「まあまあ、みんなお腹空いたからちょっとピリピリしちゃっただけでしょ。――うん、良いキッチンだ。お洒落なだけじゃなくて、しっかり機能性があって、ちゃんと使う人のことを考えてる。よーし、それじゃあ、私の本領発揮だね。任せて、飲食店店長として、お祝いに相応しい料理を作ってあげよー!」


「手伝うぞ、レンカ。儂の今の料理の腕、お主にしかと見せてやろう!」


「ふふふ、うん、わかった。楽しみだね」


「シロ、ツクモ、お主らも手伝え。働かざる者食うべからず、じゃ!」


「料理ですか。いいですね、任せてください。これでも腕には自信があります」


「……わ、妾もか?」


「いや? 別にやらんでも構わんぞ? てろりすと様は料理が出来ないのならば、そこでのんびりしておるがよい」


「で、出来んとは言うておらん! 普段やらんだけで!」


「あー、あたしも手伝いたいんだが……レンカさん、何かやれることありますかね」


「……凛も!」


「あるよー。今日は人がいっぱいだからね、やること盛りだくさんさ! 二人にはこれを切るの、そっちのテーブルでお願いね。――おっと華月ちゃん、君も手伝いたい? 念力で手伝える感じかな? ……わかった、じゃあ君も、切る組でお願いね! 杏ちゃん、見てあげて!」


「わ、わかりました。えっとー、じゃあ凛と華月、一緒に切んぞ。手ぇ怪我しないように――っつっても、華月は怪我のしようがないだろうけど」


 あれよあれよという間に、準備を進めて行く女性陣。


 残されるのは、俺と、我関せずといった様子の緋月のみ。


 緋月も念力が使えるので、手伝おうと思えば手伝えるだろうが、まあコイツはしっかりお猫様なのでやらんな。今もリビングのソファの、日当たりの良い場所で丸くなっている。


 お客さんに飯の準備をさせるのは、とか、俺も手伝いを、とか言いかけた俺だったが……やめる。


 ここで俺が手を出すのは、ちょっと無粋か。


 ま、こういう形での歓迎も、アリっちゃアリか。


 友人を招くなら、一緒に料理作った方が楽しいだろうしな。


「……よし、緋月。そう言えば買ったキャットタワーまだ組み立ててなかったから、それ組み立てるか。登り心地を確かめてくれ。カスタム可能な奴だから、意見も言ってくれな」


「にゃあ」


 すると、自分の興味のあることだからだろう、即座に身体を起こしてこちらに近付いてくる緋月。


 どことなく挑戦的な表情で、「しっかり登り心地を確かめるから。私の評価は厳しいよ?」と言いたげな様子である。


「……一応お前も、自分で組み立てられるとは思うんだが。念力使えるし」


「にゃあう」


 俺の言葉に、「それは飼い主の仕事でしょ。猫はそんなことしない」と答える緋月。


 いやお前……まあいいけどさ。


 苦笑を溢しながら組み立てていき――やがて完成して、緋月から「なかなか悪くない」というお言葉を頂戴していると、華月がふよふよとこちらまで漂ってくる。


「お、華月。もしかしてそっち、もう飯の準備終わりそうか?」


 俺の言葉に、我が家はこくりと頷く。


「わかった、すぐ行くよ。緋月、飯だっ――て」


 俺が言い終わるより先にピョンと昇っていたキャットタワーから飛び降り、ダイニングの方へ向かう我が愛刀。


 全く……自由な我が刀め。


 思わず笑ってしまいながら、俺はふと隣を漂う華月へと問い掛ける。


「華月。楽しいか?」


 華月は、先程よりも大きくこくりと頷き、そして両手両足を、空中で精一杯広げてみせる。


 多分、いっぱい楽しいと、そう言いたいのだろう。


 俺はその頭を撫でてやり、共にダイニングの方へと向かった。


 ウチは、人が少なくても大体毎日こんな感じだ。


 お前には、是非ともこの騒がしさに慣れてもらおうか。

 明日は……多分更新無し!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
まあお猫様の飼い主なんて飼い主という名の下僕ですからね、キャットタワー作るのも当然下僕のお仕事ですよ(猫過激派
今日は人がいっぱい…人?
ほっこり
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ