我が家で遊ぶ《2》
「うにゃあっ!? ふ、二人同時に来るのはずるいぞ!?」
「甘い甘いウタちゃん! 勝負とは非情なもの、隙を見せた者から狩られるんだよ!」
「そうですよね、レンカさん! 勝負は非常なもの! 今だ、くたばれ――何っ!?」
「店長にくたばれとはなかなか言うね! でもいいよ、許したげる! 何故なら勝つのは私だからさ!」
「今は別に店長じゃないでしょ!」
「そうだった!」
あの後、いつものスーパーに向かい、本当に酒をたんまり買って戻ってきた俺達は、当初の予定通りゲームを開始した。大乱闘でスマッシュなゲームだ。
酒が入っているので、全員微妙にテンションが高い。
ちなみに、俺とウタは家であんまり酒を飲まない。
肉体強度の関係で、飲んでもそんなに酔えないからな。マジでジュースとそんなに変わらないので、それなら普通に炭酸ジュースを買うのが俺達だ。
ただ、今日はがっつりワインやウイスキーを買ってきて飲んでいるので、多少酔いを感じている。
「ふふーん、私の勝ちだね。二人とも、なんかすごい反応良いけど、コンボ精度がそれじゃあまだまだださ」
「いや、何すか今の差し込み精度。プロじゃないっすか」
「まあ私、持ちキャラだとVIP行ってるから。それくらいは出来ないと」
超ガチ勢じゃん。
「ぐ、ぐぬぬ……よし、儂はきゃらを変えるぞ! このデカい亀みたいなのは、一発が強くて良かったんじゃが、その分やはり鈍重じゃな! もっとすばしっこく動き回れるのを選ぼう!」
「俺、知ってる。そのままコイツ、ステージ外にぶっ飛んで自滅するんだ」
「せ、せんわ! 今度こそ、儂の魔王としての真の実力を見せる時!」
「それじゃあ、勇者としてお前が実力を発揮するのは阻止しよう」
「……ね、粘着する男は嫌われるぞ!」
「安心しな、俺がこんなに粘着するのはお前だけ、さ」
「最悪なんじゃがこの男!?」
愕然とするウタである。
「こ、この、すとーかー勇者!」
「いつまで経っても操作が下手な不器用魔王」
「あーっ! い、言うてはならぬことをっ! もう許さん勇者、今ここで、邪悪なるお主を必ず討ち滅ぼしてくれるわ!」
「お前いつもそれ言うけど、それで実際に滅ぼされたことないんだが」
「今日こそは本当じゃ!」
そうかい。
「君達はとりあえず、『勇者』と『魔王』って言葉に思い入れがあるんだねぇ。使ってるキャラ、どっちも魔王みたいな奴なのに」
レンカさんは、多分ハンデのつもりなんだろう。色々キャラを変えているが、基本的には飛び道具系キャラが好きなようだ。
飛び道具で間合いを制し、相手が対応に苦慮している内に詰めてコンボを叩き込む戦い方を得意としている。お気に入りは、どこかの惑星で化け物駆除を仕事にしている、戦闘スーツの女性キャラのようだ。
俺は重量キャラが好みだ。レンカさんが言っていた通り、コンボが下手なので、技を擦りまくってダメージを稼ぐタイプではなく、一発でズドンと行けるキャラをよく使う。コンボがあっても二つか三つくらいの操作で完結するキャラだ。
お気に入りは、「どりゃあッ!」と野太い声で大剣を振り回す、どこかの男魔王様である。武器も一緒だし、これ大体お前だなとウタに言ったら、ぶん殴られた。
目は良いつもりなので、上手く技を差し込めれば大ダメージを叩き出せるのだが、そもそもレンカさん相手にしている時は、牽制の飛び道具でなかなか距離が詰められないため、攻撃のチャンス自体が少ない。
しかも、やってる内に人読みまでしてくるので、さらに勝てなくなってくるのだ。
……こういうゲームをやっている時に、「このキャラより俺の方が強いし上手く戦える」と、微妙にもどかしく感じるようになってしまったのは内緒である。だって俺の方が強いし……。
ウタも、「ちまちましておるのは性に合わん」とか言って、重量キャラを好むのは俺と同じなのだが、コイツはそもそもコントローラー捌き自体が下手だ。
流石にもう操作自体には慣れていい頃だと思うのだが……期待を裏切らない奴である。
「ぬうっ、また負けた!?」
「おう、予想通り速さを制御出来ずに、自分から場外にすっ飛んで行ったな?」
「……そ、そこをレンカに攻撃されたじゃろう! 別に自滅した訳ではないわ!」
「そりゃあ、ステージ外のキャラいたらメテオ狙いに行くでしょ。ウタちゃん綺麗に食らってくれるし」
「それから逃げようと、焦ってガチャガチャやってジャンプも暴発しますしね、コイツ」
なまじ目が良いだけに、何とか逃げようと反応するのだが、如何せん操作が下手なので勝手に復帰をミスって落ちていく訳だ。
コイツも多分、「自分が戦えればもっと強いのに」と思っていることだろう。
「ええい、うるさいうるさいっ! 儂なら、豆鉄砲みたいなのを打つことしか出来ん人間とか、なんか魔王らしいけど儂よりも絶対弱い日焼け男とか、こんな細っこい鳥とか、全員けちょんけちょんなのにーっ!」
けちょんけちょんね。
あと細っこい鳥は、お前が使ってるキャラだからな。
がーっ、と両の拳を突き上げた後、ウタはやけ酒のようにウイスキーのコーラ割りを一気飲みする。
「お前一気はやめとけ、一気は」
「この程度、儂らがどれだけ飲んでもジュースと変わらんじゃろうが!」
まあそれはそうなんだが、言ってお前、肌がうっすらと赤くなってきてるぞ。
元が白いために、変化が物凄くわかりやすい。
「……それにしてもウタちゃん、その見た目でお酒飲めるの、なかなか反則だね」
「いやあなたがそれ言います?」
「? 私は普通でしょ。お酒飲んでても。背は低いけどさ」
いえ、ジャンルとしては一緒です。
……まあ、胸部装甲だけは比べるべくもない訳だが。
ウタも、別に貧乳って訳じゃないんだがな。
その……まあ、何だ。直接見たこともある訳だから、小ぶりでもちゃんと女性らしい膨らみがあることは、よく知っている。
が、レンカさんを相手にしたらな。何なら、縮む前のウタよりもデカい。
「おいユウゴ、視線が不埒じゃぞ」
おっと、流石元魔王様。気配察知能力が凄まじい。
「優護君、今チラッと私とウタちゃんのおっぱい見たのは、私も気付いたからね?」
……いや、俺がわかりやすかっただけのようだ。
「……そんなことしてませんよ? 俺はこれでも紳士で通ってるんで。女性の胸を不躾に見るなんて、そんなことをする訳ないじゃないですか」
「紳士(笑)。ユウゴ、ニホン語は正しく使うべきじゃぞ?」
「胸が凹んだ奴が何か言ってるな」
「へ、凹んではおらんわ! ……ぐぬぬ、しかし、確かにレンカがいると、ちと分が悪いの。えーっと、何じゃったっけ。レンカを表す言葉……」
「ロリ巨乳」
「そう、それ」
「優護君、何だかんだ言っても、やっぱり男の子だね?」
いつもの調子で、思わず普通に答えてしまった俺は、レンカさんのジト目でハッと我に返る。
「お、おのれ、ウタ! 謀ったな……!?」
「いや、今のを儂のせいにされても困るが」
「なるほど、優護君はウタちゃんと一緒にいると、油断しちゃうんだねぇ。とりあえず、バイト君がこちらをどう思ってるかは、店長忘れないようにしておきます」
「…………」
何も言えなくなってしまった俺は、誤魔化すようにウイスキーを呷ったのだった。




