閑話:耳
一旦箸休め的閑話。
感想ありがとう!! 全部しっかり読んでます!!
――ある日のこと。
今日は、リンが遊びに来ていた。
特に何をする訳でもなく、俺はベッドに腰掛け、リンは俺の足元でベッドに寄りかかるように腰掛け、二人でテレビを見る。もう彼女も大分我が家に慣れてくれたので、こうして自由気ままに過ごしている。
この子も、ウタと同じく今のことをよく知らないので、テレビとかには興味津々だ。
特に、教育テレビが大ウケだ。実はウタも好きである。偉大なり、教育テレビ。
現在見ているのもその類のもので、子供向けのわかりやすい科学実験みたいなものをやっており、ぶっちゃけ俺も見ていて面白い。
なんか、大人になってからこういうのを改めて見ると、普通にわかりやすくて、ためになるんだよな。
むしろ、子供の頃よりも今の方が、すんなり説明が頭に入って、理解出来ているかもしれない。一か月後には忘れているかもしれないが。
リンも、齧り付くようにジッとテレビを見ており、ご機嫌そうにその尻尾がゆらゆらと左右に揺れ、俺の足をくすぐっている。ちょっとくすぐったい。
驚いた時や、感動した時には、彼女の大きな耳も感情に合わせてよく動き、見ているだけで全然飽きない。
どちらかと言うと物静かな子であるが、感情の豊かさは普通の子供と変わらないのだろう。
「…………」
何となく俺は、目の前にある彼女の左耳を、ひょいとつまむ。良い毛並みの、最高の触り心地であるそれを、くしくしと擦るように撫で、それからぺたんと倒す。
次に、右耳を同じようにくしくしと撫で、そしてぺたんと倒す。
最後に、同時に手を離すと、ピコンと元気良く立つ両耳。
うん。
楽しい。
「……?」
「何でもない。リンの毛並みは綺麗だなぁって思って」
下からこちらを見上げてくる、不思議そうな顔をするリンを、笑ってそう褒める。
「……んふふ。自慢の毛」
ちょっと得意げな様子で、こちらを見上げながら胸を張るリン。可愛い。
「はは、あぁ。最高の毛並みだ。モフモフでサラサラで、俺はリンのこの毛並み以上に触り心地の良いものを、他に知らんな。ウタの髪も、触り心地は良かったが」
「……んふー」
今度はわかりやすいドヤ顔になり、尻尾をぶんぶん振るリン。可愛い。
「……お兄ちゃんと、お姉ちゃんなら、いつでも触っていい」
「お、嬉しいね。それならリンは代わりに、俺の髪を触ってもいいぜ?」
と、冗談のつもりで言ったのだが、リンは何だか楽しそうに、いそいそと俺の膝の上に乗る。
「……よしよし」
そして、その小さな両手で、一生懸命に俺の頭を撫で始めた。
幼女に頭を撫でられる。
控えめに言って最高である。
「……いつも、お兄ちゃん達といると、とっても楽しくて、心地良いから。お兄ちゃんも、これで、心地良い?」
「あぁ、もう最高だ。ありがとな、リン」
お返しにわしゃわしゃと彼女の頭を撫でてやると、リンは嬉しそうににへっと笑い、そのまま俺の膝にポフンと座って、再びテレビを見始めた。
地球上で一番可愛いのは、多分この子だろう。




