閑話:漫画の趣味が同じだと結構嬉しい
続きが書きあがらなかったので一旦閑話。すまん!
「――ユウゴ、早う次のぺーじ!」
「待て待て、早いって。つか、今俺が読んでんだから、お前はもうちょっと待ってろよ」
ソファにぐでー、と寝転がって漫画を読んでいると、その俺に上から覆いかぶさり、急かしてくるウタ。
ちょっと暑い。
「じゃんけんに負けたからお主に譲っておるだけで、儂とて読みたいんじゃ! その作品、続きが気になっておったし」
「いやじゃんけんに勝ったんだから俺に読ませろよ」
「この前そうしたら、まだ儂が読んでおらんのにお主、一人でぺらぺら感想語っておったろうが! 『とても良かった……』とか言うて!」
「むっ……わかったわかった。じゃあせめて急かすなって。俺はゆっくりじっくり読みたい派なんだ」
「……しょうがないのぉ。まあじゃんけんに負けたのは儂じゃから、それくらいは我慢してやる」
本当に気になっていた作品らしく、ちょっと不満げなウタに、俺は苦笑を溢す。
「お前、結構漫画好きだよな」
「お主がよく読んでおるからな。儂も読みたくもなるわ。お主こそ、かなり漫画好きじゃろう」
「まあな。つっても、俺だけじゃなくて日本人は結構みんな漫画好きだと思うぞ。読んだことない、って人の方が少ないだろうし」
漫画やアニメは、昔は『子供向け』っていうレッテルが張られていたように思うが、いつの頃からか、当たり前に大人も観るし読むものに変わったように思う。
それこそ有名作とかなら、みんな何らかの形で内容を把握していたりするのではなかろうか。この前テレビで、仕事の付き合いや話題作りのために流行りのアニメは追っているという話をやっていて、「あぁ、そういう時代なんだな」と思ったものである。
ちなみに俺は、アニメより漫画派だ。そして小説原作の場合は漫画より小説派だ。原作至上主義と言えるかもしれない。
なんかこう、アニメとかだと尺の都合で細かい描写を飛ばしていることが多く、心理描写が薄くなってることとかがあるんだよな。その世界観にじっくり浸って感じていたい身としては、やはり最もそこがしっかりしているのは原作だと思うのだ。
小説の情報量とかになると、それこそ膨大だから、ある程度仕方ないのはわかるんだけどな。
「漫画は、まだニホン語に不自由な身でも、何を描いてあるのかよくわかるし、何より面白いからの。小説より、今はこちらの方が興味深い」
「あれ、けどこの前、普通に小説読んでなかったか?」
「読めるは読める。が、まだ一々その言葉の意味を脳内で照合しながらの状態じゃ。すむーずに読めておるとはとても言えんの」
「あー、そらそうか。というか、普通に漫画読めてる時点ですごいもんな、お前」
話し言葉書き言葉の違いもあるし、外国語の小説なんて、とてもじゃないが読む気にならないのはわかる。多分俺も、向こうの世界の書籍は読めない。
いやそもそも俺、向こうの世界の言語で会話は出来るものの、読み書き自体かなり怪しいので、言葉通りの意味で書籍は読めないのだが。せ、戦場では必要なかったし……。
もう当たり前のように日本語を話しているコイツだが、まだ日本に来てから半年も経っていないのだ。四半期を少し超えたくらいである。
それでこれだけ日本語を理解して、漫画すら読めている時点で凄まじいと言えよう。
「漫画はまだの。きゃらの表情とその場の勢いで、ニホン語が多少怪しくとも理解出来る。無論、しかと言葉がわかっておった方が楽しいんじゃろうが、今の状態でも十分に楽しいからの。文字数少ないし」
「文字数の多い漫画は俺でも読み辛いから、それはわかるぞ。……って、話してたら内容忘れちまったわ。ちょっと、もう一回読ませてくれ」
「えー、早う次行きたいんじゃが」
「待て待て、そう焦って読んだってしょうがないだろ。というかこれ、やっぱり別々で読んだ方がお前にとっても良かったんじゃないか?」
「お主と一緒に読むの!」
「子供か」
頑なに俺の上から降りようとしないウタに再び苦笑を溢し、そのまま俺は、彼女と共に一冊の漫画を読み進めていった。
最後まで読んだ後、やいのやいのと感想を言い合うのが、ぶっちゃけメチャクチャ楽しかった。
……また、一緒に読んでもいいかもな。