閑話:鯉の世話
リアル事情により一旦閑話。
バーベキューより少し前の時系列。
鯉を飼うことになった。
というのも、庭に池が出来上がる予定なのだが、かなり立派なので、これで何もいないと逆に寂しいということになり、建築士さんから「鯉、買いませんか?」と提案されたのだ。
それで、一緒に話を聞いていたリンが目を輝かせていたので、それならと飼うことにしたのである。
買ったのは三匹。
とても立派な鯉で、三匹とも非常に良い色合いをしており、ぶっちゃけ普通に買ったら結構するんじゃないかと思う。
例に漏れず、ツテでかなり安く買うことが出来たので、実際の値段がどれくらいかは知らないのだ。
なんか、鯉って突き詰めると結構ヤバい世界っぽいからな。普通に買ったら普通だが、上を見ると相当な値段になったはずだ。
これもシロちゃん関連のツテでの購入だし、かなり高い鯉だったんじゃないかと予想出来るくらいには、良い色をしているのである。
……ま、まあ、知らないことにして、普通に可愛がることにしよう。
そうして、庭の完成より少し先に我が家にやって来た鯉を、リンと一緒に眺める。
新しい場所でも特に不満げな様子も無く、元気良く泳ぐ鯉達を見て、同じく元気良くブンブンと尻尾を振っているご機嫌なリン。可愛い。
感情がわかりやすい子だ。
「……んふふ、元気いっぱい。とっても良いこと」
「そうだなぁ。コイツらも、これから家族になる訳だし、元気で過ごしてほしいもんだ。……ん、名前でも付けてやるかな」
鯉ってすごい長生きみたいだからな。確か、しっかり世話すれば三十年は生きるんだったか?
かなり特殊な環境である我が家で三十年も生きたら、ぶっちゃけその途中で何か別のものに変貌しそうな気がしなくもないが、まあとにかく、もう飼うことにしたのだ。
しっかり世話してやんないとな。
「……実は、凛と華月でもう名前付けた。それでもいい?」
「お、そうなのか? それなら勿論それでいいぜ。是非とも教えてくれ」
「……ん! まずね、あの綺麗な赤が、モミジ」
「おぉ、良いな。白の身体に赤が映えて、確かに紅葉みたいな色してるもんな」
鮮やかで美しい、秋模様のような赤をしているのが、恐らくモミジだろう。
良い名前だ。
「……で、あの金色の子が、コガネ」
「ピッタリな名前だな。凛々しいし目を引くし」
鮮やかなのだが、決して下品ではなく、非常に上品な金色をしているのが、コガネだな。
金運が上がりそうだ。
「……最後。あの黒のぶちが入ってるのが、ポン太」
「ポン太?」
「……ポン太」
「……そうか。良い名前だな!」
消去法で、白を基調に、黒のぶち模様と少しの赤が入ってるのが、ポン太か。
二人が付けたのなら、良い名前だな!
「……んふふ。あの子、良い色だけど、ちょっとマヌケなところがあって、それが可愛いの」
あぁ、なるほど、ポンコツのポンなのか。
そうか、黒ぶちは間抜けなのか。
……そう言われると、なんか可愛く見えてきたな、アイツ。
「……何だかウタみたいだな!」
「……そう?」
「あぁ。その間抜けさにどことなく愛嬌が感じられて、いい感じだ。ポン太、気に入った!」
「そうか。つまり儂は間抜けと」
「そりゃ勿論、ウタは間抜けだし、見ていて飽きないポンコツさがあるから、アイツは実質鯉――うわ出た!」
「いや今お主わかって言っておったろ」
いつの間にか後ろに、ウタが立っていた。
「うん、まあ、気配は感じてたんで」
「そうか。お主を池の一部と化して、鯉どもの餌にしてやろう」
「いいや、そうはならんな! 何故なら俺は、今から逃げるからだ!」
「あっ、こら待て!」
「待てと言われて待つ奴が――おまっ、どんだけ本気で追い掛けてきてんだ!?」
「とりゃあっ!」
「ぐわっ、おい危ねぇって!?」
「お主なら受け止めるくれるじゃろ?」
「……受け止めるけど」
「かか。――それはそれとして食らえ! 百式くすぐりあたっく!」
「何が百式――うはははっ!」
そんな俺達のやり取りを横目に、リンは鯉達を眺め、ニコッと笑う。
「……この家は、いっつもこんな感じ。とっても、楽しいところ。だから、君達もいっぱい、楽しくなってね」
返事かどうかはわからない。
だが鯉達は、ちゃぽんと水面を跳ねさせたのだった。




