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赤いりんごは虫食いりんご 〜りんごが堕ちるのは木のすぐ下〜  作者: くびのほきょう
貴族学園

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お昼ご飯は山麓に近い低い高原での飯盒炊爨。

班ごとに火を起こし串に刺した肉や野菜を焼く、前世で言うところのバーベキューだ。


オリーブとフレイアは食材の串打ちを任されたのだが、手つきが危なっかしいとラルフと伯爵令息に取り上げられた。ペネロペは火の調整でちゃんと役立っているというのに、オリーブとフレイアは早々に手持ち無沙汰になっている。

せめて自分たちでも出来る洗い物をしようと、汚れた調理器具を持って二人で水場へきた。同情した伯爵令息がわざわざ洗い物を出してくれたことにオリーブは気づいていないふりをしているし、フレイアもだろう……。


「ちょっと来てくれない」


林間学習用の簡易服ではなく騎士服を着て帯刀している3人の令嬢が、まな板を洗っているオリーブへ声を掛けてきた。3人の中でまるでリーダーのように真ん中に立っていたのは、先ほどラルフと親しげだったデイジー・ターナーだ。


この時、オリーブはフレイアと二人で水場にいたのだ。


王太子の婚約者であるフレイアがいるということは、つまりは、必ず影から護衛騎士が見守っているということで、オリーブとフレイアの二人だけに見えても近くには複数の護衛騎士がいる。

騎士科の令嬢たちから言われるまま、オリーブは抵抗せず着いて行く。その後ろを、距離を取りつつ呼ばれなかったフレイアがこそっと付いてきているのがオリーブの位置から見えているが、3人はフレイアを気にしていないのか気づいていないのか何も言わない。


王太子の婚約者のフレイアと、フレイアに付いている護衛騎士の存在を、騎士科だというのに意識していない令嬢たち。その稚拙さに、相手をするに足らないと無視してしまおうか迷いながらもオリーブは後を着いて行った……。


連れてこられたのは、皆が飯盒炊爨をしている高原から見えない位置に入った森の中。


この令嬢たちはマールムやカイルとは関係がなさそうな上、隠れて護衛騎士がいると分かっているからこそオリーブは黙って付いてきたのだが、ラルフにバレたら簡単に人気のないところへ来たことを怒られそうだと冷や汗をかいてしまう。


「ラルフ様と幼馴染だからって調子に乗ってるんじゃないわよ」


「あなたがワガママ言ってラルフ様と同じ班になったんでしょ?」


「騎士科ではラルフ様とデイジーがお似合いだって皆で応援してるんだから、邪魔しないでちょうだい」


「ラルフ様の剣にはデイジーとラルフ様、二人の髪色の飾り紐が付いているのを知らないの?」


「子爵令嬢のあなたとラルフ様じゃ釣り合わないんだから身を引きなさいよ」


デイジーの左右に立つ二人の令嬢が口々にオリーブを罵り、デイジーは腕を組み冷たい目でオリーブを見下ろしながら笑っている。

先ほどラルフに見せていた明るく気さくな笑顔とは正反対な腹黒そうで邪悪な雰囲気に、器用に表裏を使い分けているんだなと関心してしまう。


こうして対峙してみると、デイジーは令嬢にしてはだいぶ長身だ。


背が高いために足がスラッと細長く、大きな瞳で整った顔つき。ドレスや制服と違って誤魔化しの効かない騎士服を普段の授業からよく着ている騎士科の令嬢たち。スタイルと顔立ちの差は歴然となるし、だからこそ飛び抜けてスタイルと容姿が良いデイジーは騎士科の令嬢を従えることができているのだろう。


デイジーや取り巻きの令嬢など怖くない、と言えば嘘になる。


生まれ変わっても、いくつになっても、貴族令嬢としての教育を受けても、知らない人と話すのは恐ろしいままだ。しかも3人はオリーブへ明確に悪意を向けていて帯刀までしてる。とても怖い。


オリーブはこのまま黙って何もしなくても解決することを知っている。


こっそり付いてきていたフレイアが見守ってくれているし、そのフレイアには複数の護衛騎士が付いているし、「俺のそばを離れるな」と言ってくれたラルフがオリーブとフレイアの長時間不在を気にしないはずがない。


けれど、それではダメなのだ。

女同士の諍いに誰かの助けを借りることは貴族令嬢としての矜持が許さない。


オリーブの前世、白崎真綿もとても臆病だった。なのに歌手としてスカウトされてしまった真綿は、人前で歌うことに毎回怯えていた。

でも、どんなに怖くて緊張して怯えていても、勇気を出して歌い出してしまえば緊張なんて忘れてしまうことも知っている。


「わ、わたしが、子爵令嬢でラルフと釣り合わないって言うなら、ターナーさんも子爵令嬢ですよね?」


……声を上げたなら、もう、進むしかない!


見るからに気弱で内向的なオリーブが、1対3の状況で反論してくるとは思っていなかったのだろう。3人は少しだけうろたえていたが、すぐに立て直したデイジーが得意げな顔で自らオリーブへ反論してきた。


「同じ子爵令嬢でも私は騎士科で、あなたは官吏科じゃない。ラルフの母親は騎士科の男爵令嬢だったのよ。幼馴染なのにそんなことも知らないの?」


ラルフの母は女騎士になるつもりで貴族学園の騎士科へ入学した男爵家の三女だった。ゾグラフ辺境伯子息だったラルフの父とはその騎士科で出会い、恋愛結婚したのだ。そんな前例が、騎士科の令嬢ならゾグラフ辺境伯家へ嫁げると、デイジーたちに勘違いさせてしまっている。


騎士科のデイジーが官吏科の令嬢であるオリーブに対して強気に出てくるのも、将来辺境伯夫人になれると思っているからなのだろう。考えの浅さに呆れてしまう。


ラルフの両親であるゾグラフ辺境伯夫妻の出会いは、騎士科の令嬢にとって、前世で言うところのシンデレラストーリーのような憧れの恋物語なのかもしれない。

その夫婦の息子であるラルフと同じクラスになり、しかも美しいデイジーもいるために、ゾグラフ辺境伯夫妻と同じようになると盛り上がってしまっている気がする……。


「ラルフはそのお母様から『結婚相手は釣り合いの取れる官吏科の令嬢から選ぶように』と言われているそうですよ。ラルフと仲が良いのにそんなことも知らないんですか?」


わざとデイジーの口調を真似て反論したオリーブの言葉は、3人の自信を打ち砕くには十分だったようだ。


現ゾグラフ辺境伯夫人であるラルフの母親は、デイジー含む騎士科の令嬢が嫁いでくることを歓迎していない。彼女たちがこうしてオリーブを呼び出したことを正当化する理由を、勝手に画いていた将来への展望を、根底から覆してしまう情報に衝撃を受けて黙り込んでしまった。


「あなたたちはラルフのお母様のことを馬鹿にしているのですか?騎士科出身の元男爵令嬢が、社交界で辺境伯夫人に相応しい立場を得るまでにどれだけの苦労をしてどれだけの努力が必要だったか、想像できていますか?……ラルフのお父様とお母様のことだから、きっと学園時代にその困難を予想できていたと思います。それでも一緒にいたいと決意したくらいに2人が想い合っていた。だから結ばれたんです」


社交界での繋がりは貴族学園時代から始まっている。官吏科ではなく騎士科にいたラルフの母には社交界に知り合いがいなかった。それに、元男爵令嬢に高位貴族の作法や暗黙の了解は分からない。

そんなラルフの母を助けたのはタウンハウスが隣の縁で仲良くなったオリーブの母だった。


社交界での地位を確立するまでの苦難の道のりを知っているラルフの母だからこそ、ラルフが安易に騎士科の令嬢を選ぶことがないようにと、辺境伯家に相応しい令嬢をと言っているのだ。


誰かと言い争いなど滅多にしないオリーブは、極度の緊張と興奮のせいで体が強張っている。

こんなしんどい思いをするくらいなら歌を歌っていたい。人と衝突するのはとても辛い。


……でも、彼女たちが戸惑い狼狽えているうちにとどめを刺さないと。


「ラルフのお母様のことだから、ラルフと真実愛し合っている相手なら騎士科の令嬢だとしても結婚を認めてくれると思います。……でも、ラルフとターナーさんが相思相愛だって言うなら、ただの幼馴染の私を牽制するために呼び出す必要はないですよね?」


図星だったのだろう。デイジーは悔しそうな顔をしている。


取り巻きの令嬢は”ラルフとデイジーがお似合いだから応援してる”としか言わず、二人が恋仲だとは言わなかった。

しかもラルフがデイジーを想っているという根拠は”ラルフの剣に二人の髪色の飾り紐が付いている”ことだけ。その2本の飾り紐は10歳の時にオリーブが作りラルフに上げたもので、デイジーは関係ない。


「そもそも、私にはあなたたちに従う理由がないんです。私はパレルモ伯爵の嫡出子で、母の離婚と再婚によりホワイト子爵令嬢になりました。母の実家アルバ伯爵家にも籍がありますし、両親ともに正当な伯爵家の血筋なので上位貴族へ嫁ぐことができます。そのため、周囲からは伯爵令嬢の扱いを受けています。……私の家名だけ確認して同じ子爵令嬢なら大丈夫と判断したんでしょう?これくらい官吏科の令嬢には周知の事実で、私より複雑な事情がある人のことも皆把握しています。ラルフと結婚してゾグラフ辺境伯夫人になると言うなら、せめて対峙する人の経歴や人間関係くらい知っておかないと、社交界で生き抜けませんよ?」


3人とも泣きそうになって震えているので予想は当たっていたようだと、ホッとする。


偉そうなことを言ったくせに、実はオリーブは3人の令嬢のうちデイジー・ターナーが子爵令嬢ということしか分かっていない。もう二人に関しては名前も家名も知らないのだ。

オリーブが子爵令嬢だと分かった上で暴言を吐いてきたことから、子爵令嬢だろうなとあたりをつけていただけ。


一か八か、思い切って反撃してみて良かった。


子爵位と伯爵位は爵位はひとつしか変わらないけれど、上位貴族と下位貴族の境界のためかその差はとても大きい。デイジーが辺境伯夫人なることがただの妄想に近いとも理解し、官吏科の令嬢に失礼な態度を取っているという状況の悪さについても気付いてもらえた。


本当のことを言うと、オリーブが周囲から伯爵令嬢相当の扱いを受けているのは、生まれと血筋だけではなく王太子の婚約者フレイアと仲が良いことの方が理由として大きいのだが、この令嬢たちにそこまで説明して上げる義理はないだろう。


将来女騎士となるとしても、社交界の人間関係の把握は必要な知識だと思う。彼女たちにはここで反省し、オリーブがフレイアの友人なことの方がよほど由々しき事態だったのだと気付けるまでに邁進して欲しい。


彼女たちがここで反省せずにまた何かしてくるのなら、その時は何かしら制裁を下さないといけないかもしれない。でも、現時時点では特に被害もないし、オリーブは彼女たちからの謝罪を欲していない。もう水場へ戻っても良いだろう。


「ターナーさんがラルフのことを好きでも、将来ゾグラフ辺境伯夫人になるために努力するとしても、それはターナーさんの自由だと思います。ただ、こうして人気のないところに呼び出して一方的に罵られるのは嫌です。今回は大目に見ますが、もしも次があるなら私も対応を考えますので……」


オリーブは「じゃあ」と言い踵を返すと、オリーブの後ろにあった木の陰から人影が出てきた。

腕を組み明らかに怒っているラルフだ。


オリーブは驚き「うわっ」と声を出してしまったが、3人の令嬢たちはオリーブ以上にうろたえ慌てている。


「こいつが許すと言ったから今回は俺も見なかったことにするが、次またこいつに何かしたらゾグラフ辺境伯家を敵に回すと思え」


ラルフはゾッとするほど冷ややかな目つきで3人の令嬢を睨む。こんな恐ろしい表情をしているラルフをオリーブは初めて見た。


武に重きを置く我が国の、その中でも強さで有名なゾグラフ辺境伯家の令息ラルフ。黙っていると周囲から恐れられて距離を取られてしまうため、普段は爽やかな好青年を演じている。

そんなラルフが令嬢に対してここまで威圧感を出し怒りを露わにするということは、本気で怒っているということ。


もしもラルフにこんな冷たい表情を向けられたのがオリーブだったなら、もう二度と以前のようにラルフへ親しく話しかけることなど出来ない。


「それと、この飾り紐は10歳の時にこいつから貰った、こいつの手作りだ。……二度とターナーの髪色だなんて戯れ言を言うな」


ラルフはだいぶ前半からオリーブたちのやり取りを見ていたようだ。

恐怖により呆然と立ち尽くす3人の令嬢を残し、オリーブとラルフはその場を去った。


2人で高原へと戻る途中、ずっと影から盗み見していただろうフレイアが合流してきた。


「フレイア様が出てきていたら彼女たちを処罰しない訳にはいかなかったです。最後まで隠れてもらっててよかった」


「オリーブが自分で対処したから出番が無かっただけよ。……甘い気もするけど、まぁ次はないってことなら良いかしら」


フレイアの言葉にラルフが頷いている。


「デイジー・ターナーは乙女ゲームでラルフルートの時に出てくる令嬢だから知っていたの。ゲームでは私と同じで軽い悪役。ラルフの好感度が上がると子分の令嬢を引き連れてやってきて、校舎裏に連れて行かれて、何て言ったらいいかしら、うーん、ヤキを入れてくる、で分かる?”ヤキを入れる”って貴族の人生だと他に良い言葉が見つからないわね……」


デイジーはゲームにも出てくる令嬢だったらしい。ラルフルートの悪役ということは、ゲームのラルフとデイジーは深い関係なのだろうか。

それは嫌だなと、思ってしまう。


「とにかく、そのヤキ入れの時にミニゲームを仕掛けてくるだけの役ね。デイジーがラルフに片思いしてるだけでラルフと恋仲ってこともないし、ヤキ入れの時にヒロインが怪我するとかもないし、ラルフの攻略に影響はないから特に重要なキャラではなかったわ。セリフの内容から性格はよろしくないんだろうなってわかるけどね。……さっき山道でデイジーがラルフに話しかけてきた時、オリーブに警告するか悩んだの。でも、デイジーがゲームと同じ嫌な性格とも限らないし、ゲームでのヤキ入れだって何か事情があるのかもしれないしって思って様子見してたのよ」


「性格が悪いというより、考えが浅いって感じでした。二面性の使い分けは上手でしたし、大人になって世間を知ったら上手く世渡りしそう。案外良い女騎士になるかもしれないです」


マールムに比べたらデイジーの性格の悪さなんて可愛いものだと思ってしまう。


「正直に言ってしまうと、オリーブが返り討ちにできるとは思っていなかったの。私が何とかしないとと思って様子を伺ってたけど出番がなかっただけ。……オリーブのことを侮っている訳じゃないのよ?オリーブも貴族令嬢なのに、同じ前世持ちだからって理解できていなかったみたい。ごめんなさい」


「いいえ、フレイア様が隠れて見てることが分かっていたから強気に出れたんです。ありがとうございます。私一人ではきっと無理でした」


「いや、『私一人では』って、一人だったらそもそも着いて行くなよ。フレイア様の護衛がいると分かっていたとはいえ、まだ命が狙われてるかもって状況でこんな森深くに入っていくなんて……」


結局、ラルフの説教が始まってしまった。


森の中を歩きながら、ラルフはオリーブの軽率な行動を上げつらい叱ってくる。そんな気まずい空気を破ってくれたのは相変わらずフレイアだった。


「『この飾り紐はこいつから貰った』ってセリフ、『こいつ』じゃなくて『オリーブから貰った』だったら100点満点だったのにねー」


フレイアのこの言葉で、ラルフのお小言が終了したので感謝しかない。


「ラルフも見守ってくれてありがとう。……明日から、騎士科のクラスで気まずくない?大丈夫?」


「あれはどちらかと言うと、俺の事情にお前を巻き込んだんだろ。むしろこれで騎士科の令嬢たちの変な誤解も解ける。俺の方が助かった。こちらこそ、……ありがとう」


思わず、照れて『ありがとう』と言えなかった10歳のラルフを思い出し、オリーブは笑ってしまった。


「あら、ペネロペさんがこちらに手を振ってるわ。私たちが戻るのを待っててくれてるみたい。もう食事は出来てるのかも」


「悪いことをしてしまいました。二人にも謝らないと」


森から抜ける直前でこちらへ手を振るペネロペと伯爵令息の姿が見えた。そんな二人の元へと小走りで駆け寄っていくフレイア。

続けて駆け出そうとしたオリーブの右手を掴んだのはラルフだ。


フレイアが去ってしまったため、オリーブとラルフは高原と森の境目に二人きりで立ち止まっている。


「ラルフ、どうしたの?」


「……父上には兄弟がいなかったから、母上はゾグラフ辺境伯夫人になったんだ。父上と違って俺には弟がいる。もしも、愛した女が騎士科の令嬢だったなら、弟に家督を譲って騎士か官僚になる」


それはオリーブではなくデイジーたちに言ってあげた方が良かったのではと言いかけたが、ラルフの真剣な顔つきに黙って続きを聞くことにした。


「もしも、愛した女が一人娘の嫡子だったなら、弟に家督を譲って俺が婿入りする。……って今の俺なら言えるのに、小さい頃はそこまでの考えに至れなかったんだ」


オリーブの右手を掴んでいるラルフの左手のひらが汗ばんできた。


「9歳の時、お前は俺にあっけらかんと嫡子教育を受け始めたって言ってきただろ?俺はそのせいで谷底に突き落とされたみたいに絶望したのに、お前は平然としてて、それが許せなくてお前に意地悪するようになった。……俺がお前に意地悪なまま、お前が殺されていたかもしれないと思うとゾッとする。お前に前世の記憶があって、本当に、良かった」


「……うん」


ラルフは空いてる右手でオリーブの左手を掴み、両手を繋いで見つめ合う。

激しく鼓動しているオリーブの心臓の音がラルフに聞こえないかと心配になるが、きっとラルフの心臓もオリーブと同じようにドキドキとうるさいに違いない。


「オリ「おーい!お前らそこで何してるんだー?」ーブ……」


ラルフが言いかけた言葉に被すように大声で呼びかけてきたのは、銀色の髪を揺らしながらこちらへ走ってきているサイラスだ。


「はぁ?はぁ?はぁぁ?なに?なんなの?わざとなの?」


ペネロペの元へ行ったはずのフレイアも、なぜか木の陰から出てきた。


ラルフとオリーブはサッと繋いでた手を離し、言い争いを始めてしまったサイラスとフレイアをその場に残し、言葉少なに小走りでペネロペと伯爵令息の元へと戻った。

いつまでもドキドキと高鳴りが収まらない胸のせいか、二人が焼いてくれた肉や野菜の味が分からないことが残念だった……。


そんなこんなでとてもとても濃い林間学習の二日間は終わった。


後はそれぞれの馬車や馬で王都へと帰るだけ。

オリーブたちはそのまま登城する予定だ。ホワイト子爵領から呼び出された母から話を聞き、皆でシウコアトルの対処法を考えないといけない。オリーブは行きと同じくマルティネス公爵家の馬車に乗せてもらい、フレイアと共に今後について話し合いながら王都へと帰った。


そんな王都への道すがら、マレンゴに騎乗し王都へ帰還していたはずのラルフが、マレンゴを残して消えて居なくなってしまった……。


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