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第3話 急報

 赤のシェリー、緑のフィノが1つの赤外套(ポンチョ)になってから半刻程経った頃。


「…ハァ…ハァ、今日はこのくらいにしといてあげる」


 フィノがシェリーの赤外套(ポンチョ)から汗だくで抜け出してきた。

 シェリーを攻める事にいつしか夢中になってしまい緑外套(ポンチョ)は脱げ落ち、剣帯を通した短パンが緑の鞘に入った長細剣(サーベル)ごと転がっている事に気付く。


 自然と外れたのかシェリーが外したのか良く分からないほど意識が朦朧もうろうとしたフィノは、外套(ポンチョ)の下に着用していたはずのブラウスまで脱げていた事に呆然とする。

 

 長い街道で周囲に誰も見えないとはいえ、フィノは色白の肌に薄い布地の下着がピタッと張り付いた姿で晴天のもとさらけ出されている。

 細身のラインになまめかしい未成熟な胸の隆起りゅうきを見つめ、シェリーはにやけた。


「えぇ〜!まだ良いとこなのに!」


「うるさい色ボケ女め」


「フィノから襲ってきたはずなんだけどなぁ」


「う…、同性まで魅了するとは!色欲の魔女め!」


「そうやってすぐ私のせいにする〜。

 もう、手を出すんなら最後までちゃんと責任取ってよね」


「う…………………ぅ…………、ゴメン」


「はいはい、それじゃ今夜のお楽しみね」


「あ、あぁ」


 フィノは期待とも絶望とも言えないなんとも微妙な顔で笑う。


「ふふ、それじゃ早く依頼を終わらせに行こっか」


 そう言うとシェリーは外套(ポンチョ)の左右のすそから手の平サイズの刺突剣(スティレット)を同時に引き抜いた。


「精霊さん、精霊さん、見てたなら分かるよね―――」


 シェリーは刺突剣(スティレット)をバラバラに動かし宙に魔法陣を描いていく。

 魔法陣は魔力が無ければ見えず、魔力の無いフィノはシェリーの毎回違う詠唱と滅茶苦茶な剣捌きに怪我をしないかといつもハラハラさせられる。


「――はい、よろしく。きりちゃん」


 突如とつじょ二人の全身を霧がおおうとベタつく肌を濡らし、水滴が足元に絶え間無く落ちる。


「――はい、次は旋風つむじちゃん」


 霧が消え二人を中心に心地よい旋風が渦巻く。


 二人の薄い衣服は直ぐに乾き、魔法付与された逸品であるシェリー着用中の外套(ポンチョ)は濡れる事もなく綺麗なままだった。


「はい、おしまい」


 シェリーはサッと同時に刺突剣(スティレット)をしまう。


「ほんと魔法って便利よね、髪も乾くまでやってもらえたら更に良いんだけど」


 フィノは脱ぎ散らかした衣服を拾い上げ、軽く土埃つちぼこりを払いながら着用していく。


「あんまり精霊さんを酷使こくししたら嫌われるから、贅沢ぜいたく言わない。それに街につく頃には乾いてるよ」


「街ねぇ、着くまでに陥落かんらくしてないでしょうね」


陥落かんらくしてたらフィノの責任ね」


「ムムム…」


「…ヒヒーン!!」


 前方から影が近づいてくる事をべドロが報せる。目的地の話題を始めた途端の事なので、二人は顔を見合わせ苦笑いした。


「はいはい、ペドロ。帽子ありがと」


 フィノはペドロから帽子を受け取り影への準備を整えた。


 影が近づくにつれ影の正体が明らかになってくる。おそらくあれは目的地からの伝令だ。


「もしや!!!

 そこにいるのは『火赤・葉緑ファイアレッド・リーフグリーン』の方々か!!!?」


 馬を走らせつつ呼びかけるその姿、やはり伝令だ。


「そうだ!!」


 シェリーは先程までのゆるんでいた雰囲気を微塵みじんも感じさせずに凛々《りり》しく応答する。


 伝令は馬足を緩め掛け声を発しながら二人の近くに止まった。


「火急のことゆえ馬上より失礼致す!

 貴公らは斥候の者か?

 本隊との距離を教えて貰えると助かる!」


「私達は二人だけのパーティーだ」


「な、なんだと」


 途端に男の顔面が蒼白になった。




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