第2話 二人の関係
赤のシェリー、緑のフィノ、二人は先程盗賊に出くわしたが特に何事も無かった様に依頼先の街へ急いでいた。
二人は貴族令嬢顔負けの端正な顔立ちながら、消息を絶った母親《育て親》を探すために都市一番の傭兵ギルド『地獄の釜』に昨日初めてパーティー登録をした。
パーティー名は『火赤・葉緑』育て親が二人に付けた愛称だった。
傭兵ギルドは傭兵個人に等級があり、その合計値がパーティの等級となる。個人の等級は傭兵ギルドの武官と模擬戦を行って判断され、高報酬の仕事を請け負うにはパーティ等級が高く無ければならない。
高報酬の依頼は当然危険だが、傭兵稼業の者はこぞって高報酬を求めた。また、最高等級のS等級パーティーに入ることは傭兵達にとって一種のステータスにもなる。
一人では最低等級のD等級傭兵も、100人揃えればS等級の傭兵パーティとして登録されるため、命知らずの傭兵らは個人の力量をさして重視しなかった。
仕事を終えギルドで報告する際に人数が減っていれば当然パーティ等級は下がるが、分け前は増えるので傭兵稼業の者はパーティメンバーの死を必ずしも悲しまなかった。
そんな殺伐とした傭兵パーティーで異質な存在が誕生した、見た目が18歳と16歳くらいの若い二人だけのパーティーだ。更に、二人の等級合計だけでS等級パーティーになってしまう事が分かったとき『地獄の釜』の長、ポットリドは手を焼いていた依頼を自ら二人に依頼する。
二人はそれがどういう事か良く分からず、断る事も知らずただ頼まれるままにパーティー登録初日に初めての依頼を受けた、依頼料が高額だった事と三分の一前払いだった事が依頼を受けた決め手だ。
「そう言えばさっきの盗賊だけど、希少アイテム持ってたか確認したの?」
盗賊を撃退してから半刻程歩くも特に変化もなく、暇になったフィノが思い出したように口を開いた。
「あんな盗賊が希少持ってる訳ないって。重い荷物は嫌だし死体に触れたくもないし」
「それって探知魔法使ってないって事?」
「まぁ…使ってないけど…フィノだって調べなかったでしょ」
「ふーん、私だけ働かせたわけだ?」
フィノはおもむろに三角帽子をペドロに被せた。
「ブルルルルル!」
「ええ!?いや、そうなるけど?……なるけど?」
小柄なフィノは腕組みしてシェリーに躙り寄り、怒気を発して下から睨みつけた。
「あー、いや、どうかなー、そういえば使ったような?あぁ、使った使いました‼」
「ふーん?」
「な、何も無かったよ~?
希少アイテム以外の金貨や宝石もあればちゃんと教えるから、だいじょーぶ」
「ふーん?」
「な、なによ」
「明らかに嘘をついたね今」
「え、えー?なんのことかなー?」
「正直に言えーーーーッ‼」
フィノはシェリーの外套の中に潜り込み、背中から抱き着く。
すかさず胸当ての間に手を滑らせ両手を操り揉みしだいていく。
「ちょ、ちょっと、やめ、や」
「…ヒヒーン!!」
揺れる赤外套と一頭の馬が遠目で確認されるのは、もうしばらく先のお話。