第99話 天敬星のしろ
【これまでのあらすじ】
濡れ衣を着せられチームBIOを追放されたレジスタンスエージェント バイオは、真実を探すため、グリと共に、Crystal Tower を登る。
最上階で、コントロールポータルにオニキスシールドがセットされ、巨大なCFが作成される。
グリは八騎士のNo2であり、八騎士の目的は八つの塔による世界を沈めるCFの作成であることが判明。
魔星のkurokirbyとふじは八騎士の目論見を阻止し、交渉する材料としてグリを拘束すため、戦いを挑むもグリの体術に苦戦。
その時、待望の援軍が到来。拳銃の照準をグリに定めた天敬星のしろが現れるのであった。
自身に銃口を向け接近するしろから視線を外さず、
「Hey.一つ教えてくれ。
3階のエレベーター前にウエポンをチェックするスキャンレーダーがあったはずだ。
あれがある限り、ここにガンは持ち込めないはずだ。
そいつはどうやって持ち込んだ?」
グリの問いかけに、額の出血を上着の左袖で抑えながらkurokirbyが応える。
「その拳銃はな、隆起前にこのCrystal Tower に持ち込まれたものだ。
3年前、ドージェに向けられた拳銃を奪って、そのまま保管していたんだ。
心当たりがあるだろう?八騎士の旦那。
そして、如何に貴様の四肢※1でも、銃弾を躱すことはできまい」
「It's Right.
インポッシブルだ」
両手を耳の横にあげ、観念したように見えるグリに、ゆっくり近づくしろ。
「気をつけろ、しろさん。
してやられた俺が言うのも何だが、そいつは毒蛇だ。
何を隠しているか分からねえ」
自身に体を向けるkurokirbyに頷きながら、グリに一歩ずつ近づくしろ。
銃口が、グリの眉間の20cmに迫ったところで、歩みをとめ、
「グリどん、やはりおはんじゃったかあ。
あの合言葉。事前の取り決めの通りじゃったあ。」
トリガーにかけた人差し指を抜き、銃把を握る中指、薬指、小指、親指を順番に開いた。
しろの手からゆっくり落下する拳銃を左手で受け止めたグリは、瞬時に回転させ右手に持ち替え、kurokirbyに発砲。
銃弾は、kurokirbyの左足小指の先端を正確に打ち抜いた。
間髪入れず、銃口をふじに向けるも、kurokirbyへの発砲と同時に通路に走ったふじへの二発は既の所で躱された。
三発目のトリガーを引く前に、通路に到達し上下に大きく揺れるふじを命中させることが出来ないと判断し、舌打ち。
「Shit!
勘のいいガイだ!」
「バット、1人は仕留めたのだから、グッドとするか。
kurokirbyよ。無理をするな。
一週間も休めば、動けるようになる。後遺症は残らん。バット、今は身動きとれん急所を打ち抜いた」
左足に力が入らず蹲り、自身としろを睨みつけるkurokirbyを一瞥し、しろに視線を向ける。
「スニーキングミッション(潜入任務)ご苦労だった、しろ。
パスワードである”世界中すべてを覆うCF”に対する
”無数に存在するポータルは、無数のリンクの存在を意味する”
もグッドだった」
動かぬ体の代わりに、視線で意志を伝えるが如く、2人を睨みつけるkurokirby。
「どういうことだ。しろさん、こいつは一体。。」
「すまん、くろかびさあ、許しとおせえ、、」
大きな両眼を血走らせたしろの姿は、遠目に血の涙を流しているように見えた。
通路に退却したふじは、しろとkurokirbyの問答を見ながら、バイオに近づき話しかけた。
「事情は分からんが、しろさんは八騎士に通じていたようさー。
kurokirbyが動けず、グリが拳銃を手にした今、グリを拘束するのは絶望的状況さー」
「他の魔星が来れば、数で押し切れるはずだ。
いくら、グリさんが強くてもな。
なぜ、誰も来ない?」
「気密扉を見るさー。
しろさんが開けっ放しにしているさー。
こちら側の気密扉が開けっ放しにしたままだと、エアロックが機能せず、屋内側の気密扉を開くことが出来ないさー。
だからよ。誰もここに来れないさー」
「それも、八騎士の作戦ということか。巧妙な。。
どうする?
いや、考えるまでもねえ。
俺が、気密扉を閉める。グリさんは俺を撃てんはずだ」
「待つさー。
確かに、グリの話から判断して、やーを殺す可能性は低いさー。
だが、あの重い扉を閉めるまで彼らが待ってくれる道理がないさー」
「外から閉めようとすれば、見つかるだろう。
だが、エアロックに入り込めば、中から閉める分には何とかなるのではないか」
※1.四肢:柔術、剣術、忍術の源流と呼ばれる古流体術。
肩甲骨、腸骨の柔軟性を高め、四足歩行時代の運動能力を獲得するための技術体系。