第86話 アーティファクト移動
【これまでのあらすじ】
濡れ衣を着せられチームBIOを追放されたレジスタンスエージェント バイオは、真実を探すため、グリと共に、Crystal Tower を登る。
行方不明となった百八の魔星の頭領ドージェの捜索中、グリは2人だけであることを確認し、バイオにCrystal Tower に隠されたレアアイテム”オニキスシールド”取得を提案するが、その事をふじに聞かれる。
ふじは、自分の目的もオニキスシールドであることを告白し、グリは、自分は過去に八騎士の対抗組織に属していたが、オニキスシールド取得のため組織を抜けたことを告白する。
最上階で、コントロールポータルを警護するしろとkurokirbyの元にふじが現れ、しろと警護を交代を申し出、しろは階下に。
入れ違いでバイオと共に現れたグリはCrystal Towerに迫る危機をkurokirbyに訴え、kurokirbyはしろと協議し、2人をコントロールポータルに案内するのであった。
這々の体で、細い通路を五歩進んだバイオは、手摺を掴んだ左手に力を込めながら右手でスキャナーを取り出し確認する。
「コントロールポータルに届いたようだ。」
「ミーもだ。試しに、バースターを撃ってみたが、ノーダメージだ。」
左手から届くグリの言葉に、バイオも8バス※1を発射するも表示されるダメージは0であった。
コントロールポータルにデプロイされているMOD※2ウインドウの一つを開く。
「こいつが、オニキスシールド、防御力無限大、不滅のシールドか。
話通りだな。」
左の通路のグリの方を向き、叫ぶ。
「オニキスシールドを唯一破壊できるというオニキスストライクは、どうやって手に入れるんだ、グリさん。」
「ファーストに、二階ポータルからこのコントロールポータルにアーティファクト※3を移動する必要がある。
そのためには、コントロールポータルから二階ポータルにリンクを張るんだ。」
時に、吹き荒れる突風に掻き消されながらも、グリの叫びが周囲に響く。
「そのためには、」
バイオは、後方を振り向きふじに叫ぶ。
「そのためには、エンライテンド※4であるふじ、あんたかkurokirbyのどちらかに、リンクを張ってもらわなければならねえ。」
ふじは頷き、平地を歩くが如く自然な足取りで、バイオの真後ろまで移動する。
それを見たバイオは、半ば呆れながら、
「この高所の細い通路で、よく普通に歩けるな。」
「有事に備え、魔星はこの通路を移動する訓練を繰り返しているさー。
それより、バイオ、おいらは二階ポータルのキーを持っていないさー。
ドロップしてくれさー。」
「ああ。それはそうだろうな。
あの部屋は一度入ると、生半可な事では出られんからな。
ドロップするから、拾ってくれ。」
バイオがドロップした二階ポータルキーを素早く拾ったふじは、逡巡なくリンクを引く。
次の瞬間、コントロールポータル”Crystal Tower”が、アーティファクトの光に包まれた。
※1.8バス:ポータルを構成するレゾネーターを攻撃する武器であるバースターの中で最高の威力を持つレベル8バースターの略。
※2.MOD:ポータルを強化するアイテム。防御力をあげる「シールド」、リンク距離を延ばす「リンクアンプ」等がある。
※3.アーティファクト:史的価値のある人工物を指す言葉。イングレスにおいては、イベント時に発生しポータル間を移動させるゲームに使用される。
※4.エンライテンド:レジスタンであるバイオ、グリは、エンライテンドがキャプチャしたポータルであるコントロールポータルからリンクを張ることは出来ない。
リンクを張ることが出来るのは、エンライテンドである、ふじ、kurokirbyである。