第85話 決死行! 高度2,000m、幅50cmの通路
【これまでのあらすじ】
濡れ衣を着せられチームBIOを追放されたレジスタンスエージェント バイオは、真実を探すため、グリと共に、Crystal Tower を登る。
行方不明となった百八の魔星の頭領ドージェの捜索中、グリは2人だけであることを確認し、バイオにCrystal Tower に隠されたレアアイテム”オニキスシールド”取得を提案するが、その事をふじに聞かれる。
ふじは、自分の目的もオニキスシールドであることを告白し、グリは、自分は過去に八騎士の対抗組織に属していたが、オニキスシールド取得のため組織を抜けたことを告白する。
最上階で、コントロールポータルを警護するしろとkurokirbyの元にふじが現れ、しろと警護を交代を申し出、しろは階下に。
入れ違いでバイオと共に現れたグリはCrystal Towerに迫る危機をkurokirbyに訴え、kurokirbyはしろと協議し、2人をコントロールポータルに案内するのであった。
コントロールポータルに繋がる通路のうち左に位置する方に向かうバイオ。
だが、通路の手前で足が止まり、後ろを振り向き、戸惑い呟く。
「安全帯のロープの長さが足りねえ、通路に届かねえ。」
気密扉の左の壁沿いに据え付けられた手摺の前に立つkurokirbyが、手摺に接続されたロープ付きフックを掴み、後方より声をかける。
「通路を進むには、安全帯のロープをこいつと付け替える必要がある。
今のロープはエアロックから繋がっているからな。
そいつを繋いだままだと、気密扉が閉じることが出来ず、エアロックが機能しない。
そうすると、、」
「アイシー。
こちら側の気密扉がオープンしたままだと、エアロックが機能せず、屋内側の気密扉をオープン出来ない。
つまり、ミーたち以外の人間が、ここに来ることができないのだな。」
安全帯につけたロープ付きフックを、kurokirbyのいる手摺についたロープ付きフックと付け替えながら、グリがkurokirbyの言葉を引き継ぐ。
自らも、ロープ付きフックを付け替え、kurokirbyが、
「そういうことだ。」
それを見たバイオが2人のいる手摺に向かうと、扉を挟んで2人と反対の位置に佇むふじが声をかける。
「バイオ、やー(あなた)はこっちさー。
おいらと一緒にこっちの手摺のロープと付け替えるさー。」
「?」
ふじの言葉に戸惑うバイオ。
「通路は見ての通り、狭く長いさー。
細長い物体が強度を保つには、柔構造にする必要があるさー。」
「つまり?」
「つまり、通路は相当に揺れる。4人が同じ通路を通ると、まとめに歩けんほどにな。
そこで、4人で通る場合は、左側通路と右側通路を2人ずつ通ることで、バランスを取るんだ。
左側通路を通るときは、俺たちのいる手摺にロープを繋ぎ、右側通路を通るときは、ふじのいる手摺にロープを繋ぐんだ。」
kurokirbyが引継ぎ説明した。
ふじとkurokirbyの説明を理解したバイオは、頷き、ふじのいる手摺に近づき、自らの安全帯に接続しているロープ付きフックを外し、手摺のロープ付きフックを接続する。
kurokirbyは、外した4人分のロープ付きフックをエアロック内部に投げ入れ、腰を入れ気密扉を閉じ、ハンドルを回して施錠した。
「これで、ようやく進めるってわけだ。」
安全帯に接続したロープの強度を確かめつつ、通路に歩みを進めるバイオ。
床に接続された通路は、ふじの言う通り狭く幅50cmほどで1人が通るのが精一杯の幅しか無いが、両端に手摺がある。
手摺を両手で掴み、下を見て竦む右足を、無理やり前に突き出し通路に第一歩を踏み出した。
その瞬間、僅かではあるが通路がたわみ、股間が涼しく感じる。
慎重に左足を踏み出すと、一歩目より大きなたわみを感じ、大きく息を吐き出す。
三歩目を踏み出した瞬間、突風に煽られ、思わず手摺を掴む両腕に力が入る。
四歩目を踏み出しながら、『こいつは先が思いやられるな』と独り言つ。
左を見ると、グリも真剣な表情で通路を進んでいた。