第82話 見えない状況
【これまでのあらすじ】
濡れ衣を着せられチームBIOを追放されたレジスタンスエージェント バイオは、真実を探すため、グリと共に、Crystal Tower を登る。
Crystal Towerを守護する百八の魔星との激闘の末、彼らに実力を認めさせ、頭領ドージェとの面会の資格を得るが、ドージェが行方不明であることが判明し、ドージェ捜索の協力を申し出る。
捜索中、グリは2人だけであることを確認し、バイオにCrystal Tower に隠されたレアアイテム”オニキスシールド”取得を提案するが、その事をふじに聞かれる。
ふじは、自分の目的もオニキスシールドであることを告白し、グリは、自分は過去に八騎士の対抗組織に属していたが、オニキスシールド取得のため組織を抜けたことを告白する。
最上階で、コントロールポータルを警護するしろとkurokirbyの元にふじが現れ、しろと警護を交代を申し出、しろは階下に。入れ違いでバイオと共に現れたグリはCrystal Towerに迫る危機をkurokirbyに訴えるのであった。
「話せ。お前の知っていることを。
危機について。」
kurokirbyの鋭い眼光に臆することなく、グリは淡々と言葉を紡ぐ。
「日本のCrystal Towerを青に出来ないことに業を煮やした八騎士は、ポリシーを変えた。
つまり、Crystal Towerを緑から青に変えることが出来ないのであれば、Crystal Tower以外のセブンタワーズ(7つの塔)を緑にすればいいとな。」
冷静なkurokirbyが、珍しく言葉を荒げる。
「馬鹿げている。
そんなことがありえるか。」
「ホワイ、そう言い切れる。
ユーは、日本以外のシチュエーションを知っているのか?
八つの塔にセットされたオニキスシールドにはステルス機能がある。
現地でなければ見えない。
そして、現地であってもリンク、CFは見えない。
つまり、もはやワールドは八騎士のものになっているのだ。
ミーが聞いた段階では、危機は”迫っている”未来形だったが、ナウはすでに過去形だ。」
グリの両目を見据え、kurokirbyはゆっくりと尋ねた。
「グリよ。
日本以外の状況を知っているか聞いたな。
お前は、知っているのか?
事実を知っているのか!
答えろ。」
「アンダスタン。ミーの事を教えよう。
ミーはユナイテッドステイツから来たのだ。
ステイツの塔エンパイアステートが緑になった事をフェロー(仲間)から伝え聞き、ここを青にするために来たのだ。
仮想通貨の配分を確認してみろ。
前のチェックポイント※1の配分が激減しているはずだ。
これこそが、八つの塔を起点にしたワールドを覆うCFが完成したことの証左だ。」
グリの言葉に、スキャナーを確認するふじが叫ぶ。
「あきさみよー!(なんということだ!)
確かに、前チェックポイントでの獲得仮想通貨が、以前の半分になっている。」
ふじのスキャナーを覗き込んだ、kurokirbyは眼を見開くも、グリに向き直り、
「お前の言っていることが、事実だとしてだ、ここに来て何をするつもりだったんだ。」
「ミーの使命は、ここの緑を青に変えることだ。」
「どうやってだ?オニキスシールドはすべての攻撃を無効化するぞ。」
「ミーを試しているのか?
オニキスにはオニキス。オニキスシールドを唯一破壊しうるオニキスストライクを使ってだ。
ジャストナウ、オニキスストライクを生み出すアーティファクトが出来上がっているのでな。」
「やはり、知っているのか。。」
kurokirbyは、スキャナーを取り出し、慣れた手つきで呼び出しボタンを押す。
「しろさん、俺だ。」
呼び出しに即座に反応したしろに、手短に状況を伝えた。
「どう思う。
俺は、グリの言うことをすべて信じているわけじゃあねえ。
だが、全否定できる確証が無いのも確かだ。
何か、確かめる術はねえものか。」
スキャナーの向こうから、暫しの沈黙の後、短い要点が伝えられる。
「。。なるほど。
確かに。
やってみる価値はあるな。」
kurokirbyは、グリとバイオに向き直り、
「いいだろう。
お前らの望み通り、コントロールポータルに案内してやる。」
※1.チェックポイント:イングレスでは、エージェントが作成したCF(コントロールフィールド)の中のMU(マインドユニット。フィールド内の人口)の数を、レジスタンス(青)とエンライテンド(緑)の両陣営で競うが、計測されるMUは5時間ごとに設定されたチェックポイント時点で存在するCFのMUである。
加えて、この世界では、チェックポイント時点のMUを元に、仮想通貨が自動配分されるシステムが採用されている。