第80話 警護と指揮
【これまでのあらすじ】
濡れ衣を着せられチームBIOを追放されたレジスタンスエージェント バイオは、真実を探すため、グリと共に、Crystal Tower を登る。
Crystal Towerを守護する百八の魔星との激闘の末、彼らに実力を認めさせ、頭領ドージェとの面会の資格を得るが、ドージェが行方不明であることが判明し、ドージェ捜索の協力を申し出る。
捜索中、グリは2人だけであることを確認し、バイオにCrystal Tower に隠されたレアアイテム”オニキスシールド”取得を提案するが、その事をふじに聞かれる。
ふじは、自分の目的もオニキスシールドであることを告白し、グリは、自分は過去に八騎士の対抗組織に属していたが、オニキスシールド取得のため組織を抜けたことを告白する。
かくして、3人は協力してオニキスシールドを取得すべく、最上階のコントロールポータルを目指すのであった。
頑丈そうな分厚い扉の前に、2人の男が佇み、油断の無い視線で周囲を警戒していた。
1人は、革のブーツ、革のパンツ、裸の上半身に革のジャケットを羽織り、赤いヘルメットを被っていた。
もう1人は、薩摩絣を兵児帯で締めた巨眼の大男であった。
2人は、周囲を警戒しながらも、議論を重ねていた。
「ドージェがいねえ今、奴を見つける事もだが、何が起きているのかの調査も並行で進めなければならねえ。」
ヘルメットの男、天狼星のkurokirbyが、兵児帯の男、天敬星のしろに考えをぶつける。
しろは、大きく頷く。
「然り。ドージェが消えた理由は、恐らく、おいたち魔星の中の誰かが関わっていもす。
そいを、炙り出す必要がありもす。」
kurokribyは、しろに視線を向け、
「さっきから言っているように、それを成し遂げるためには、あんたが陣頭に立って指揮をとらなければならねえ。
ここの、警護は他の奴に交代させるんだ。」
しろは、視線を変えず頭を振る。
「そいは、できもさん。
こういう事態だからこそ、ここの守りはおい自身でせんといかん。
何かあった時、コントロールポータル防御を最優先にする。そいに身命を賭す。
それが、おいたちがドージェと決めた事じゃあ。
違うかあ、黒崎さあ。」
「その呼び方、あの時以来だな。白田さん。」
魔星となる前の名で呼ばれたkurokirbyは、溜息をつき、ヘルメットを脱ぎながら、
「なら、俺も、天狼星のkurokirbyでなく、あんたの友 黒崎として話さねばならんな。
ここの守りは俺に任せてくれ。
あんたが居なくても、やすやすとここを突破される俺じゃねえ。
こんな言い方、姑息であんたは嫌うかもしれねえが、俺は頼りにならないかい。」
kurokirbyの悲壮な言葉に、不動だったしろの視線は、彼の方に向いた。
「黒崎さあ。
じゃどん。」
その時、2人のいる部屋に通じる廊下の奥から声が聞こえた。
「おいらも、kurokirbyと同じ意見さー。」
「ふじどん。。」
声と共に現れた、ふじに対して、しろは眼を見開いた。
「ここの守りは、おいらが交代するさー。
しろさん。やー(あなた)は、指揮を取って、ドージェの捜索と真相の究明にあたるべきさー。」
鋭い視線を、しろに向けたkurokirbyがふじの言葉を引き継ぐ。
「ふじの言う通りだ。
事態を打開出来るのはあんたしかいねえ。」
しろは、頼もし気に2人を交互に見つめ、大きく頷く。
「わかりもしたあ。
くろかびさあ、ふじどん、ここはおはんらに任せもす。
おいは、一刻も早く事態を収束し、戻ってきもす。」
言いながら、巨漢に似合わなぬ素早さで、ふじが来た方角に走り去っていった。