第76話 ふじの目的
【これまでのあらすじ】
濡れ衣を着せられチームBIOを追放されたレジスタンスエージェント バイオは、真実を探すため、グリと共に、Crystal Tower を登る。
Crystal Towerを守護する百八の魔星との激闘の末、彼らに実力を認めさせ、頭領との面会の資格を得る。
頭領との面会が済めば、チームBIOのリーダーとバイオと同じ名を持つスペードオブエースと会う事を約束させるが、頭領が行方不明であることが判明し、頭領捜索の協力を申し出る。
捜索中、グリは2人だけであることを確認し、バイオにCrystal Tower に隠されたレアアイテム取得を提案する。
だが、その提案を隠れて聞いていたふじが突然2人の前に姿を現すのであった。
強張った表情で、凝視するバイオに対して、ふじが薄笑いを浮かべ、
「オニキスシールドとアンチウィルスのことが聞こえたさー、
盗み聞きする気は無かったんだが、悪いさー。」
未だ、ふじの真意を計りかねるグリが緊張の面持ちで尋ねる。
「ミーたちのことを、通報して、アレスト(逮捕)するのか。」
「まさかや、そんなつもりは、ないさー。
ただ、話の続きを聞きたいさー。
2階から1階へのリンクがオニキスシールド取得にどう関係するさー。」
バイオは、言葉を選びながら、ふじの意図を読もうとする、
「なぜ、そんなことを知りたがる?
あんた達の使命が、何かは知らんが、それとは関係しないことじゃあないのか。」
薄笑いを消さないふじは、
「だからよ、確かに魔星の使命は、八騎士と呼ばれる勢力からCrystal Towerを守ることさー。
だが、おいらの目的は、最初から今まで一貫してオニキスシールドさー。
グリ。やー(あなた)がおいらに裏切りの相があると言ったのは、間違っていないさー。
魔星の使命に共感し、仲間になるふりをし、ずっと機会を伺っていたのさー。
そして、遂に、この時が、オニキスの取得方法を知る者と話をする機会が訪れたのさー。」
「アイシー。
いいだろう。ユーのそのコメントがファクトであろうとライであろうと、聞かれた以上、是非も無い。
ユーにも話そう。」
グリは、バイオとふじ、順番に目を配り、頷きながら、
「あるアクシデントで偶然知ったことだ。
ヒアであるCrystal Towerでは、条件を満たすと地上1階ポータルにアーティファクト※1が生じる。」
「条件とは何だ?」
「Um.一つは時間。もう一つはキャプチャ回数。それぞれの正確な数字は分からん。
だが、ミーたちがヒアに来た時、1階ポータルを確認したんだ。
ザッツタイム、ミーは見た、光り輝くアーティファクトを。」
グリの言葉を聞き、頭に稲妻が走ったバイオ、
「はっ、待ってくれ!グリさん。
あんたが、あの時2階から1階へのリンクを張るように指示したのは、1階のアーティファクトを2階に移動するためなのか!」
グリは人差し指を天に突きあげ、
「ザッツライト!
その通りだ、バイオ。
発生したアーティファクトは、最上階のポータル”Crystal Tower”まで、ムーヴさせることによりはじめてレアアイテム発生のコンディションが整うのだ。
一階のあのカオスのポータルからスムーズに移動させるために、まず2階にムーブさせる必要があった。
そして、ユーがリンクを張った後、緑の”Crystal Tower”とリンクを張るためミーは2階ポータルをジャービスで反転させていたのだ。」
グリの話に、ふじは右手親指と人差し指で形作ったピストルで顎を挟みながら、
「あきさみよー(なんということだ)。
なるほどさー。
オニキスを手に入れるためには、そんな段取りが必要だったさー。
おいらも、色々試したんだが、そいつは知らないと分からない。手に入らないはずさー。
しかし、グリよ、やー(あなた)はなんで、そんなことを知っているさー。
偶然知ったというが、どこでさー。」
ふじの問いかけに、グリは両目を閉じ、
「オーライ。
ここまで、来たんだ。ユーたちには、言わねばならんKa。
ふじ、さっきユーは、魔星のミッションは、八騎士からCrystal Towerをディフェンスすること、と言ったな。」
「そうさー。」
「実は、ミーも、八騎士から世界を救うというミッションを帯びていた。
レアアイテムをゲットするタイムとメソッドを知ったのも同じソウルを持つ、フェロー(仲間)からだ。
・・・バット、ミーもふじ、ユーと同じように本来のミッションを放棄し、自分の信念に従いレアアイテムゲットを目指してヒアに来たんだ。」
※1.アーティファクト:史的価値のある人工物を指す言葉。イングレスにおいては、イベント時に発生しポータル間を移動させるゲームに使用される。